《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》40……自分の気持ちに素直になる。

ティフィは執務用の機に戻ることなく、ソファでじっと自分の掌を見つめていた。

昔から近衛やメイドたちに手れを勧められ、しかし自分でほとんどこなせる……というよりも、人近くになったら、近くに侍はべるようになったのは、自分のでティフィを籠絡しようと考える中流以下の貴族の娘や、自分の娘や姉妹をお近くにとおもねる貴族……気持ちが悪く、近づいてくるなと牽制し、従兄弟や叔父たちに相談した。

そして、近衛たちが代わりに來るようになり、結婚していたり、婚約者のいるメイドたちが固めてくれるようになった。

なんて……分からないんだけどなぁ……それに、一緒になるのは、王妃として最適かどうか……だよね……」

呟く。

実際、自分がをする……想像がいかない。

自分の父リスティルのように壊れるのだろうか?

いや、変われるのだろうか?

シェールドの先代國王のように変態になるのか……ちなみにティフィの周りにはまともな夫婦、伯父のミューゼリック夫妻などがいるのだが、変わり者夫婦が強烈で、頭の片隅にもまともな夫婦が殘っていなかったりする。

「それに、結婚したとしても一番に跡取り……後継者問題でめるんだろうし……」

これはシェールドの國王アルドリーには児ばかり、現在3人王がいるが、末王は養である。

しかし、第一王がさほど強くなく、第二王は自分の能力を上手く制できない。第三王はまだくカイの末っ子に降嫁が決まっている。

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その為、第一王に雙子の弟の第一王子を婿に迎え、次の王位継承権は安泰となった。

「まぁ……わたしが結婚しなくてもラディエル……って、父上がダメって言うか……」

先日の騒な発言で、もし何かあった時には弟を後継者と言う呑気なセリフは言えなくなった。

それに……。

ってそんなにいいものなのか……良く分からない……」

正直なセリフである。

昔から父の嫡子として目を使う貴族も多かった。

そう言う貴族程、裏では輸など、父が許していない犯罪を犯していたり、あくどいことを考えていたりする。

その為に警戒していたのだが、デビュタントなどの夏のイベントも忙しいのと妹や従姉妹とのダンス位で他の相手とダンスも遠慮した。

特にデュアンの元姉妹だった罪人たちのデビュタントは、驕慢で鼻持ちならない者ばかりだったので、踴ることなく疲労の濃いデュアンと下がり、休憩を取っていた。

「見合い……って言っても、來る訳ないし……近隣の國は遠縁だったりするし……」

シェールドの王族が、こちらに降嫁することは滅多にない。

デュアンの婚約者ヒナの降嫁ですら、世界中でめた程である。

特に、ヒナの母方の祖父母がグランディアの皇上こうじょう夫妻であり、しかも王太子ではなく、王族とは言えデュアンの元に嫁ぐと言うことで……。

しかし叔父には悪いが、シェールドには癖のある人間が多い。

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幾らある程度策略をしていても、ほぼシェールドとルーズリアの半々生活だろうと思われる。

「……良く分からないとしか、言えないんだよなぁ……」

呟く。

をした記憶は……はっきり言ってない。

や家族のは持っている自信はあるが、特別ななどは個人に持ったこともない。

それに、に溺れる自分が想像できなかったのである。

「うーん……」

今思うのは、父に言われたチェナベリーの苗をラルディーン公爵家にプランター植えにしなければと言うことと、薬師の試験のこと……王位はまだ猶予を貰っているのだ。

父は兎も角、通常の王族の婚姻は、見合いに婚約期間が約二年で結婚である。

自分の同年代はすでに結婚している為に、それよりも年下……の相手を探すべきである。

しかし、あまり気持ちが起きなかった。

だが、そうも言っていられない。

王妃を決めなくてはならないのである。

「でも、相手を決めたところで……自分には良く解らないし……」

ちなみに話題がない。

ドレスについては可いね?が一杯である。

語彙が足りない自信と自覚はある。

そして、口下手の自信もある。

親に嘆かれた。

仕方ないだろう。

自分には、タラシ文句の1つもないのだ。

それに誰に言うのだ?相手もいないのに……。

「手が止まってますよ。殿下」

「……クレス先輩……どうしてここに?」

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「えっ?デュアン先輩の謹慎中に、人手が足りないとロビンソン副隊長にスカウトされました。一応自分の経歴書を提出したら、即ここに配屬されたんですよ〜。騒ぎもある程度落ち著いたのもあるし、知ってますか?殿下。地下の牢獄には優秀な看守がいたのに、先日の朝、見回ったら、地下の牢獄が見る影もなく破壊され、元パルスレット公爵以下、デビュタントをめちゃくちゃにした中でも特に重い罪を負っていた者が、全て切り捨てられていたそうです」

「……!……音は、気がつかなかったと?」

「看守が気がついたのは、風が流れていたとか」

アレッザール子爵クレスールはニヤッと笑う。

「リティには口が裂けても言いませんが、元ラミー子爵夫婦もをバラバラにされ息絶えてました。牢獄の鉄は一閃で切り裂かれていましたよ。1つの骸は雷が落ちたらしく焼け焦げ、パルスレット公爵だった骸は、滅多刺し……他の骸は一瞬で生き絶える殺し方ですが、パルスレット公爵は長い間……一種の拷問をけた跡のようだったとか」

「……父上はしない」

「そりゃそうでしょう。それに、重罪人の檻を一閃で切り裂く刀剣なんて、そうそう持ってませんよ。私の記憶では、4人です」

クレスールは答える。

裝は苦手だったが、一時期諜報活をしていたこともある。

その為ローズ様とも距離が近いのである。

「……お越しになられたのか……」

「そして、を一応確認すると、2人人數が足りませんでした。1人は元近衛カーク・ルーベント。そして、この後宮のメイドのエオリア・サーライヴです」

「……もしかして、カークの実家の辺境伯が?」

「可能はあるね」

クレスの後ろから姿を見せたのは従兄弟のクシュナ。

「あの家は元々亡き夫人が1人娘で、先代が婿にった。だが先代はすでに別のとの間に長男を儲けていて、夫人との間に次男、三男と儲けたが、筋からすると正統な後継者である次男を婿に追い出し、三男を兄を支える為と近衛に追い出したらしい。夫人の死も不審だ。カークは病が悪化してから帰ることを許されたが、次男は許されなかったらしい。次男は『私は婿にり、家族もおります。ですので継承権は放棄しますが、正統な後継者は、母のを引いた弟のカークです。どうか母の死について、そして父と兄が何かをしでかさないか不安です。どうか母と領民の為、弟の命を』と助命嘆願書が屆けられたよ。陛下もカークはお気にりだったしね」

「どこに行ったんでしょう……」

「そりゃ、領地でしょ」

クシュナは前髪をかきあげる。

クシュナは面倒くさがりで、髪はほったらかしである。

定期的に妻のエスティが手れを頼み、切っている。

「あぁ、それと、牢獄で死んでいた罪人、1人だけ雷で打たれていたのは、最初エオリアかと思っていたけれど、私の友人のセントバーグ侯爵の元妻だったよ。綺麗に消し炭……」

「どうして分かったんですか?」

「と言うか、牢獄の何処に誰をれるか、名札があるでしょ?それに罪が重い者程奧に厳重に戒められる。そして、行方不明の2人の牢獄のり口が壊されたのではなく、その橫の鉄の柱をぐにゃっと曲げて綺麗に広げられていて、2人を戒めていた手枷も引きちぎって捨ててあったんだ。切り捨てるだけなら兎も角、そっちを破壊する人は1人でしょ。陛下が後は、あの方々にお任せするっておっしゃられていたよ」

「……私は何も出來ないな……クシュナ兄上やクレス先輩のように騎士にはなったけれど……何の役にも立っていない……悔しい」

「それはどうかな?」

クシュナは、従兄弟の頭をでる。

「お前が、ここにいて普通に王子として王宮の奧で暮らしていたら、皆、お前を陛下に瓜二つの王太子と言うだけで、全くお前個人を見ることはなかったと思うよ。お前が時間があれば、領地や溫室、庭園の手れをして、見學や遊びに來た家族づれに花の名前を教えたり、説明することで、國の皆は次の王は植に詳しくて、地域にあった農作を選んでくれると考えてくれる。貴族はただの趣味と思っている節はあるけれど、この地域は農畜産業が主だ。もし、何かあったらお前に直接相談したい、デュアンにもそういってくるだろうね。それに、庶民的な王子としても、お前は私の地域でも知られているんだよ」

「庶民的……?何処がでしょう?」

「……前に、お前が夏の日差しを遮るカーテンがわりになる食の苗を無料で配っただろう?喜んでいたぞ」

「あれは、本當に試して貰うだけで……」

ボソボソと告げる。

一応、グランディアのマクワウリという植で、ほんのり甘いのが特徴である。

後は、ヘチマと言い、長く育てて種をとると、繊維はを洗うこともあり、もしくは前もって収穫して漬や、皮をむいて炒めとして食べるのだとか。

そして、不思議なひょうたんという、面白い形の植も選んで種を育てて配った。

面白がって持って帰った家族づれは、面白い植を育てて楽しんだらしい。

特にひょうたんは、種を取り乾燥させ防水処理をして、水筒がわりに使っている子供もいるらしい。

最初に貰った家族は、殿下に貰ったと種を知人に配り、ちょっとしたブームになっているらしい。

「水筒……グランディアではお酒をれていたらしいけど……」

「俺の息子も育てて作ってました。で、娘たちが自分用に落書きしてましたよ」

「……自分がそんな風に影響があるとは思ってませんでした」

「と言うか、お前は自分の価値を理解できないんだな……」

「と言うか、先輩。ティフィに、聞いてもいいですか?」

クレスールは問いかける。

「はい。私の子供の名前は?」

「えっとノエル……?で、ノエラ、ノエリア」

「何で、未來形過去形みたいに言ってるんですか!ベルとリラです!それに、クシュナ先輩のお子さんの名前は!ついでに何人いる!」

「えっと〜……7人?長男が……確か二年後……名前何だっただろう……」

「クシュナ先輩!ティフィの記憶力は、自分の趣味以外はこの程度です!」

クシュナはグリグリとこめかみを抑える。

「うち、7人も子供いないんだけどね……ついでに、どうして記憶にない訳?それに結婚適齢期で見合いを申し込まれている家は?」

「そんなのあるんですか?知りませんでした。どの家でしょう?幾つの人ですか?名前とか記憶にないなぁ……」

2人は頭を抱える。

趣味と仕事以外おろそかにして來た弊害である。

「で、ティフィの記憶にあるの子の名前って?」

「えっと〜母上に妹たちに、エスティマ、アリア叔母上にリティ」

「他には、気になる人はいないんですか?」

「……毎年、デビュタントに頭がクラクラするほどキッツイ化粧と香水で、顔と名前覚える気力も起きません。あ、又、いい香水なのに、つけすぎてる人が來た……位ですか?酷い時は薔薇に百合に、金木犀……死にます」

2人は遠い目をした……殘念すぎる。

全く、何年もデビュタントだのパーティに出ているのに、香水の匂いでしか思い出せない殘念王子……ダメダメである。

「……もう、ミューゼリックさまとデュアン先輩の鉄拳食らってでも、リティを嫁にしませんか?」

クレスールはため息をつきつつ関係は役に立たない王太子を無視し、その従兄に提案する。

「リティは、ラルディーン公爵の1人娘で、近くに嫁に出すんだと公爵はおっしゃってますし、その上、父に聞いたのですが、グランディアのドラゴンが名付け親とか。あちらの國王もリティを可がっていらっしゃると聞いていますし、そんな存在を格下の家に嫁がせられないでしょう」

「それに、それでなくてもあの。前回のように拐されたり、変態もいるかもしれないし、それならティフィ、婚約者になって頑張れ!」

「変態って誰ですか?」

「ロリコンとかしかせない変態がいるんだよ。ローズ様のや、ルー先輩もロリコン……あだぁぁぁ!」

いつの間にか室にいたローズ様が、鉄扇でクシュナを毆り飛ばす。

「私は変態ではなくてよ!失禮だわ」

「先輩。鉄扇で叩くと、お馬鹿さんになりますよ?」

「グハァ!カイ先輩のニコニコ悪気のなさそうな嫌味が!」

「あぁ、馬鹿は嫌だわ……でも、クレスールは兎も角、クシュナは馬鹿ね。ラルディーン公爵閣下はある程度覚悟はされていると思うわ。可がっている娘を嫁がせる先を悩む……それは親の役目。近くにいてしい。そう思っても、自分の分はラルディーン公爵……リティを守ると言うよりも、リティの後ろしか見ていないでしょうね。リティ本人を大事にしてしいと思うのが親心よ。カイは息子ばかりで、綾ちゃんは『むさ苦しい!暑苦しい!可い嫁を連れてこんかぁぁ!』だったわよね?」

「まぁ、7人とも息子とは思いませんでした」

苦笑する。

「綾に似てくれたらと思ったら、5番目の子だけ顔と瞳と髪のが同じで、他は皆金髪で……」

「そうそう。小柄で顔。他の兄弟よりも瞬発力があって持続力に知識量も富。あれは本當に諜報部隊のエースだな」

「滅多に帰ってこないんですよ。綾が泣きますから時々返して下さいよ」

「そうだなぁ」

「それにあの子だけ、まだ婚約も結婚もしてないんですよ。人もいないし……」

嘆く父親。

「本當に妻に似て可い子なのに……婿に出してもいいので、誰か嫁を……」

「じゃぁ、こっちに婿に來るってことで、ラルディーン公爵に頼めば?」

「あっ!それもいいですね。デュアンとも仲がいい子だし……」

「ローズ様、カイ先輩。リティは従姉妹です。幾らカイ先輩の息子でもあげませんよ」

「あら、ただの従兄弟が何か言ってるわね」

おほほ……

ローズ様は笑う。

「カイがうちの陛下を通して、リスティル陛下にお願いすれば、見合い話は整うものよ?殘念ねぇ?」

「と言うか、7人も息子がいると、長男、次男が自分で何とか嫁を貰ったのと、六番目が、友人のリオンの娘と馴染でようやく婚約……三男はできちゃった婚で、4男は誰に似たのかの子を落としまくって、婚約者放置……5男の……まだ24なんだけど、本當に良い子なのに……」

「まぁ、正義が強くて弱い者を守って、いじめっ子を叩きのめす。最近にはいない良い子よねぇ」

「でしょう?先輩。親バカですが、セリは騎士になるのに、一番させてよかったと思っていますよ」

「まぁねぇ……貴方の長男はし貴方に似てて、次男は冷徹冷靜冷酷。三男は上の2人に比べて弱いのよね、神面でも騎士に向いてないわ。5男のセリディアスは小柄だけれど、騎士らしいのよね……そうね。セリ。四男はタラシのくせにのほほんで、六男はが弱いから學者になるんでしょ?末っ子はやんちゃ。そうね、こっちに婿に出しちゃいなさい!」

ローズ様の命令に、カイはニコニコと笑い、クレスは、

王陛下のご命令に背くことは死を見るんだ」

と呟き、ティフィは、

「自分の王位継承権とか婚約とか……どうなってるんだろう……」

と呟いたのだった。

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