《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》42……お嫁さんに下さい!
セリは部屋を出ると、外に控えていた近衛に國王リスティルの元に挨拶に伺いたいと伝える。
その後ろを慌てて出て來た父親のカイが、
「セリ。ちょっと待って。父さん、この間冗談で言っちゃったんだけど、本當じゃないよね?まだ向こうに帰って、家族で話し合ってすらないでしょう?」
「大兄も次兄、三兄もできちゃった婚じゃん。話し合う前にもうするしかない狀態だったでしょ?」
息子の返答に黙る。
ついでに、長男次男の結婚を早くしろ〜!と後押ししまくっていたのは妻であり、ようやく長男が結婚すると決まった時には、
「ようやくか!この馬鹿息子!カイに顔だけ似てからに!もっと早く作っとけ!5、6人、孫を!」
と甥になる國王の前で息子に叱りつけ、カイは遠い目をした。
普通に、
「何でできちゃった婚なの?酷すぎる……」
と嘆くかと思っていたのだが、
「遅いわ〜馬鹿者が!私の方がコウヤよりも早く結婚したのに!コウヤの方が先に孫がいるじゃないか!この、愚か者!私に早く孫を抱かせろ!」
と扇だけでなく、お盆で息子を毆りつけていた姿を、甥であるコウヤこと國王アルドリーは顔を引きつらせて、
「その辺でやめてあげようよ?綾ちゃん」
「まだ足りん!私は早く優しいおばあさまになりたかったのに!お前は幾つだぁぁ!馬鹿息子!とっとと孫作れ!」
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「あ、綾ちゃん、本當に孫がしかったんだね……」
「あぁ、孫息子よりも、孫娘がしいんだ!あ、馬鹿に似た顔よりも、可い嫁に似てしい!暑苦しくて増えすぎたら困る。繁、増するぞ!」
とキラキラした目で言っていた妻である。
暑苦しくて困る最大の原因である自分は?
と顔を引きつらせたのだが、すぐに、
「カイは良いんだ!私の大切なおしくて格好いい旦那さんだ。いらんのはセリ以外の上の4人の息子ども!可くないしうざい、腹黒に馬鹿が多い!全部婿養子に出すぞ?いるか?コウヤ」
と真顔で宣った。
カイが慌てて、それを止めると、
「チッ!この隙に、セリ以外を追い出したかったのに……カイとセリとシリルがいれば十分なのだ。私は。嫁と孫は帰って良いが、息子は出り止にしようか……」
と舌打ちした。
本當に……特に派手な貌に育った長男と、腹黒メガネの次男、三男は努力をしない不真面目で、四男はたらし……六男のシリルはカイに似ているが、が弱いのとおっとりとした格で、綾は可がっている為、上がいらないといつも口にする。
そして、最近は……セリに聞いたのだが、
「四兄がいつそうなるか、母さん賭けてるんだよ、月姉と」
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「そ、そうって……」
「できちゃった婚か、何人もの相手との間に子供作っちゃったとか……それで婚約者の姉さんともめて半殺しになるかどうか」
「……ふ、普通の賭けにしてしい……」
カイは嘆いたのはつい先日である。
セリが言った月姉とは……長男の嫁で、妻の綾の姪の月歩つきほである。
ちなみに、髪のと瞳のが同じ黒いなので、セリはいつも兄弟と間違われる。
ながら騎士としての地位にあるが、あまりのぶりに、男たちに小さい頃から襲われ、拐され……男嫌いになった。
小さい頃から従兄弟を徹底的にいじめ……いや、容赦無く教育してきた……のだが、長男はその月歩が好きで、押しまくり、でき婚した。
カイの子供達は、6男はカイの親友の娘とい頃に婚約し、20歳で結婚したが、それ以外はある意味問題児……しかし、年の離れたやんちゃな末っ子は兎も角、セリには浮いた噂1つなかった。
仕事も面白かったが、脳桃の筋族……ちなみにセリがしかった長と格を持っているが、余りにも頭脳を使わないアホアホ兄たち……特に、惚気ると言うよりも追い詰めて泣かせて喜ぶ悪だが……しかし、最後に毆り飛ばされ頰を赤くしている腹黒メガネの次兄の、昔の鬼教ぶりはどこに行った?である。
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まぁ、三兄はおっとりした可い嫁で、バカ兄がうまく矯正されているようだが、四兄は、毎回數人の彼と浮気騒で、母方の祖母に半殺しの目に遭っているが未だに懲りていないし、母は母で賭けをしている。
そういう家で育ったセリはその中で至極真っ當な青年として育ち、
「俺はちゃーんと宣言して、2年間姫様を見守って、幸せにしてあげたいんだ」
「……うーん……でも、許されると思う?それにねぇ?」
「知ってるよ。姫様、王太子殿下のティフィリエル殿下の々の婚約者候補なんでしょ?でも……嫌なんだ。何となく、ムカムカするし……他の人と笑ってたりしたら、絶対嫌だ。俺が笑わせてあげるんだ。側に居たいんだ」
「……」
最初は小さくて可いと思った。
でも、自分のコンプレックスの容姿を……珍しい黒髪を『つやつやしていて、ライトの明かりが反したら冠みたい』と表現してくれた。
ダンスのレッスンも本當に頑張っていて、上手くできたと褒めると、頰を赤くして本當に嬉しそうに笑う。
が小さいせいか、聲が小さいのだが、でも可らしくじっと自分を見つめる。
普通に見るのではない、背の低い自分を見上げるのである。
それだけでもキュンとする。
その時、に溫もりが生まれ、自分の頰も熱くなっているのだ。
どうしよう……。
普段ならなんでもソツなくこなす自分が、次に何を言ったら良いのか、笑ってくれるか、悩む。
こんなことは初めてなのである。
「だって……向こうにも可いの子いると思うよ?でも、姫様は姫様で、他の誰とも違うんだもん!」
カイには男ばかりで、実際娘がしかったのだが……しかも最初は妻も喜んでいたが4人目までカイにそっくりな男児が生まれた時に、
「呪われているのだろうか?」
と妻に嘆かれた。
それに、余りにも自分にそっくりで妻に似ていない息子たちを見て、自分も心頷きたくなった。
自分が端正とは思っていないのだが、金髪青い目のそっくりのちょこまか走り回る子供たちを見て、
「の子じゃなくても良いので、妻に似た子供がしいなぁ……」
と思ったところ、生まれたのがセリである。
小柄だが俊敏で、賢く、親馬鹿だと解っているが、頑固で言い出したら聞かないけれど、でも可い。
頭をでると一時期嫌がられたが、最近は諦めたらしい。
それに、騎士として背が低いのがコンプレックスと本人は言うが、父のカイに言わせれば長の他の子供たちは、自分のを十分生かした戦いをしている訳ではない。
逆に、小柄なセリの方が、その俊敏さとが小さいぶん力をつけ戦いを覚え、兄たちを抜き、騎士団長となった。
努力と天の才能である。
その為、叔父のカズール伯爵シエラシールはセリがお気にりで、いつも稽古をつけている。
叔父お気にりのセリがこんなことを言い出したと伝わったら、叔父はキレるだろうか……。
かなり心配である。
「ねぇ?セリ。言ってなかったんだけど、シエラ叔父上が……」
「あぁ、養子の話?斷ったよ。だって僕は、シエラ叔父さんやフィア兄さんみたいになれないもん」
「でも、本當に叔父上が殘念がってね?」
「嫌だよ。僕は。それにきっと、あれだけミューゼリック様やデュアン先輩が可がっているんだから、姫様はシェールドに住めないでしょ?だから僕がこっちに住む!」
「それはダメだよ。お前はグランディアのを濃く引いているから……」
普段は溫厚だが、言わなければいけないことははっきりと告げる。
「特にお前はお爺様にも言われただろう?綾に似ているだけでなく……」
「でもっ!」
「……まぁ、父さんの子供だから、頑固だと思うけどね。頑張りなさい」
ため息をつく。
幾ら言っても、頑固でその上の病に侵されている息子には聞く耳はない。
しばらく歩き、近衛に案された部屋の扉を叩く。
「失禮いたします。セリディアスです。父のカイと一緒です」
「って良いよ」
リスティルの聲に、扉を開けて貰いっていく。
執務室だが、休憩か、ティフィや王妃のティアラーティアがソファでお茶を飲んでいる。
「どうしたの?今日はリティとダンスのレッスンだったよね?」
「あ、レッスンの後に、ローズ様たちとドレスのデザインを選んでいました」
「と言うか、カイ、どうしたの〜?顔悪いよ?」
「いえ……私は……リオンの気持ちが今、ものすごく分かります……胃薬……攜帯しようと思います」
青い顔をするカイに、親子は不思議そうな顔をする。
「どうしたの〜?カイ。形は顔悪くても良い男だね〜」
「形?いえ、これは普通ですし、うちにはこの顔ばっかりで……ハァ……」
「あははは〜!カイの家は、セリ以外は同じ顔だもんね」
「妻の綾が、同じ顔ばかりで呪われていると……で、セリが生まれた時は『の子だったら最高だったのに!後1人!』と拳を固め、次も私に似た息子で『もう諦めた……』と」
カイの言葉にリスティルは笑い転げる。
「あははは〜!7人男ばかりだもんね。子沢山!」
「ところで、父上、お客様であるお二人を立たせて失禮ですよ?」
「あ、大丈夫です。お伝えしたいことがありまして參りました」
セリがティフィに優雅に頭を下げると、挑戦的な眼差しで宣言する。
「リスティル陛下。ティアラーティア妃さま、ティフィリエル殿下。お願いがございます」
「なぁに?」
「ラルディーン公爵令嬢のファティ・リティ嬢と結婚を前提にお付き合いさせて頂きたいのです」
「ハァ?」
いつもは年下をからかい冗談を言うリスティルだが、今回は想像していなかった際宣言に、ぽろっとティーカップをとり落す。
「うわぁぁ、あちち!」
「大丈夫ですか?陛下」
「熱いよ!ありがとう、琥珀ちゃん!やけどするかと思った!」
「やけどは、しばらく冷水を流した方がいいそうです。水ぶっかけましょうか?」
「やめて!僕の執務室が濡れちゃうじゃないか!」
顔を変える。
実は、カイの息子の中で、騎士だけでなく師の勉強をして、風のと水のを収めているセリは、呪文を唱えなくても、この城を水浸しにすることもできるのである。
弟のシリルも師だが、が弱い為、セリ程ではない。
「じゃぁ、ハンカチ濡らしますね」
濡らしたハンカチを手渡す。
「所で、何で突然?」
「一目惚れです」
頬を赤くする年。
「だって陛下!僕24ですけど、兄弟皆、父に似て顔はこれで背も高くて、格良くて!僕いつも三兄や四兄にからかわれていたんですよ!チビとか!顔って!お前、この家の子じゃないだろっていっつも!」
「……!」
驚く。
カイが、一度も聞いたことのないことである。
黙っていたのだろう。
悔しくて泣いていたのだろう……。
と、えっへんとを張り、
「そんなことを繰り返すしかできない馬鹿兄貴は、母やおばあさまや、陛下とお爺様にチクりました!それにシエラ叔父上にも!それに、ヴィクトローレ叔父上にを習って、仕返しをしてやったし、三兄や四兄が騎士の館で落第に留年を繰り返すのを見て、僕は絶対に早く飛び級するのと、師の勉強と、大學院を卒業して見せるって、頑張ったんです!で、魔法騎士になったんですけどね。馬鹿と同レベルじゃ嫌じゃないですか〜」
と宣った。
こういう所は母親に似ている……図太い。
しかし努力家で、本當は裏では頑張っていたのだろうと思われる。
「で、今回、伺ったのは仕事でもあったのですが、姫様が本當に可くて、それに、僕はそんなに背が高い方じゃありませんし、顔だけで馬鹿な兄どもと違って平凡じゃないですか……あ、父さんはちゃんと顔も格も、頭も良いし、騎士として最高の尊敬する上司だからね?クズは兄貴たちだよ?」
「……セリにこんなふうに言われるなんて……同じ顔で生まれてしくなかった……」
「仕方ないよ。あれは呪いだから。うん。父さん。可い孫娘が生まれたでしょ?呪いは解けたからね?」
「められた気にならないよ……父さんは」
カイは涙目である。
「あ、それに、陛下や殿下がおっしゃられるかもしれないので前もって言いますが、僕は、向こうの爵位とか放棄して、こちらに來ても構いません。姫様の兄上のデュアンリール閣下は僕の尊敬する先輩のお一人で、閣下の邪魔をする位なら、逆にお支えできればと思います。それと、まだ向こうの陛下にも家族にも一言も伝えていませんので、伝えようかと思っておりますが、反対されてもこちらに來るつもりです」
「父さんは反対だよ。綾が泣くよ?それに陛下やカズール伯爵がなんて言うか……」
「僕は、それだけの気持ちがあるって宣言しています。それに、それが疑われるなら即、向こうに帰り、全てを整えて戻って來るつもりです。姫様は14歳です。約2年結婚まであるでしょう。その間に私もこちらのことを覚え、お仕えしたいと思っております」
「でも、騎士は剣を主人に忠誠を誓うものでしょ?セリは誰に誓ったの?」
リスティルの問いに、セリは答える。
「私は、忠誠を誰にも誓ってませんよ?カズール伯爵閣下にも、陛下や妃殿下、王太子殿下にも。僕はカズール伯爵閣下に伺って許可を得たので」
「許可?」
「カズール伯爵一族は國王陛下に忠信を捧げていますが、剣を持って誓う儀式は行わないのです。逆に、カズール伯爵一族は、騎士たちが集まる前で、人や婚約者に剣を捧げ、プロポーズするんですよ。今のカズール伯爵は結婚していましたが、爵位を継承した後に、『もう一度プロポーズします。結婚して下さい。貴方に純白のドレスを著てしい』と告白して、フィア先輩も『僕のも想いも全て君のものです。共に生きて下さい』って言ったのだとか。僕は、母がグランディアの人間で、父が伯爵閣下の甥だから、好きになった人に、剣を捧げなさいって言って頂いたのです。なので、今からでも、姫様にプロポーズしても良いです」
「やめて〜!シエラや皆が〜!特にシエラはお前を気にっているのに!」
「叔父上に気にられるより、姫様とお話ししたいです。では、陛下に妃殿下、王太子殿下。お邪魔致しました。失禮致します」
セリは禮儀正しく、もう一度頭を下げると出て行った。
その父のカイも遠い目をしつつ、部屋を去っていく。
言っても聞かないし、諦めようと思っているらしい。
しかし、この弾は、リスティルたちに凄まじい衝撃を與えたのだった。
非リア充の俺がまともに戀なんてできるはずがないと思った
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