《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》43……好きになってしいのに

セリは兄弟の中で一番平凡な顔である。

他の兄弟は、父方の祖父に似て貌なのだ。

父は穏やかな格そのままの形だが、長兄は祖父そっくりの派手な格好の似合うタラシで、ヘタレである。

他の兄弟も似たようなものだが、セリだけは漆黒の髪と瞳の、その上は白く、ほっそりとした軀の年に育った。

は弱くはないのだが、小柄で華奢な為、特に長兄、次兄には可がられた。

まぁ、コンプレックスのこの顔は、自分の別を不詳にし、その上大きくタレ目はく見えた。

しかし、この顔で生まれたのだからと諦めたのだが……ちなみに、初も今までになかった。

シェールドには、ほぼ代々人間を超えた貌の國王がおり、その妃も整った顔をしている。

その為、シェールドの者は形に見慣れて他國の人間は不細工に見えるだろうと、前……先代國王アレクサンダー二世は、他國の外にそう言われたらしい。

すると、椅子に悠然と座っていた先代シェールド國王アレクサンダーは、ふてぶてしい態度と長い足を円卓の上に乗せ、両手を頭の後ろに回すとニヤッと笑った。

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「ホォ?貴殿のお嬢さんは非常に殘念なご容姿なのだな。私ははそれぞれしさが違うと思っているのに、父親にこんな場面でそう言われるとはお嬢さんは可哀想だな」

「なっ……」

「それに、私はシェールドでも不細工で有名なんだ。すまないな?私のような不細工が渉役で……」

「えっ……」

「父も母も、神に祝福されたと言われる程の。その息子がこれかと」

その言葉に、ルーズリアのリスティルも遠い目になった。

アレクサンダーは売られた喧嘩は買いまくる。

「後で、マルムスティーンの兄上達にチクろうっと……あんなうざいのは裏でバラしたら良いのに……」

と呟くリスティルの橫で北の國リールの王の夫……王配殿下カイルも苦笑する。

「陛下もお変わりがないようで……」

「カイルもね。王陛下とは仲睦まじいと評判じゃないか」

「はい……陛下……妻も最近は大人しくしております」

「まぁ、仕事は大変でも、おがね。もうし落ち著くか、生まれるまでは君たちが主になってくしかないね」

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「先代陛下……義父上もそうおっしゃって下さって……」

カイルは義父や親友たちもおり、安心している。

それよりも……。

「オラァァ!最低でもこの仕事しなさいよ!あんたが豪遊するから、お金が盡きたんでしょう!私は帰りたいって言ったのに!このバカアレク!」

漆黒の髪と瞳だが、神は薄く、何故か鋭い眼差しでアレクサンダーをねめつける。

「あぁ、セイラさん!そこの男が、シェールドは形ばかりで、不細工はいないだろうだって。アルドリーたちは良いけれど、アルトゥールのことを不細工だって。どうする?」

のぞみ……みーくんは不細工じゃありません!私の子は皆形揃い!許せないわ!」

と言い放ったセイラは、夫をボッコボコにした。

「わぁぁ、言ったのは、あっちだよ!」

「あんたをけないようにして、私は子供達のところに帰りたいの。早く逝って頂戴!」

と、國際會議場で夫婦の毆り合いの喧嘩が始まり、その話を聞きつけた當時のマルムスティーン侯爵シルベスターが、丁度遊んでいたセリの手を引いて姿を見せると、

「申し訳ございません。我が國の大使がお恥ずかしい限りです」

と蹴り飛ばしたのだった。

セリは賢い子供だったので大人しく、カイルの膝に座り、夫婦がシルベスターによって追い出されたのを確認し、共に會議に聞きっていた。

カイルも穏やかだが政治家としての手腕は相當だったし、リスティルは天才、そして、『すべきおしき外』と言う異名を持つ、別は男だが自分の娘であり王妃のルエンディードよりもに間違われるシルベスターはシェールドの騎士ながら騎士の正裝でもなく、がよく著る乗馬用の服裝に似た格好である。

ちなみにシルベスターはセリと同じで兄弟や従兄弟皆長で、それ以上に恐ろしいのが騎士の正裝で歩いていてもに間違われる……娘よりもである。

世界の貌10人の中に、何故か男部門でも部門でも名前が上がる。

シルベスター本人は昔は度々文句を言ったらしいが、最近は言うのも馬鹿らしいとほったらかしている。

ちなみに、その世界の貌10人にシルベスターの妻子、つまりシルベスターを含め合計5人がっている。

そして、長の夫である國王アルドリーと、長男の嫁であるカズール伯爵家の長、六槻むつきもっている。

つまり、シルベスターは重複しているので20人中8人が一族であり、他に、リスティルとその妻ティアラーティア、カイルの妻の王陛下もっており、他はカイと、國王アルドリーの妹王2人と六槻の母の清泉いずみがっていた。

そして、ティフィリエルとデュアンリール、男同時がもう1人、ローズ様がいた。

昔は端正な兄弟の中でただ1人の異端児……兄弟じゃないとまで言われ傷ついてきたが、最近は兄弟に似なくてよかったと思っている。

父は口下手な方だが、母を本當に大切にしていて、それに母もかなり格が破壊的だが、父は、

「私も綾も、そんなに親のを理解できなかったからね……」

と呟いた。

一応、綾は國王アルドリーの母、セイラの妹だが、実際は同母兄の隼人と共に引き取られた養である。

しかも待されて中がボロボロの狀態で、養子に出されていた兄が久々に実家に戻った時に見つけ、即座に連れ出された。

ミミズ腫れに手足も踏みにじられ、泣くのがうるさいと猿ぐつわをかまされて放置されていたらしい。

一歳の時に連れ出された時には人に怯え、聲を発することもなく、手足は無殘に骨が砕けていた。

同じ年の子供がいた義兄の奧さんにを分けて貰い、手足の治療に、放置され育った弊害が……他人への恐怖……大人の方は突然顔を見せたりしないように、そして大聲を上げないように、怯えさせないように優しく接し、同じ年の義兄の息子と一緒に育てられた。

ちなみに、初めて言葉を喋った時は、

「とと」

だったと言う。

特に綾を心配し、夜に怯え、風にも音にも怖がり抱いてあやして寢ていた義父のことで、ニコッと笑いそう呼ばれた義父は大泣きしたらしい。

カイもカイで実の親と引き離され、養父に待されて育った。

自分は結婚する気は無かったのだと一回、セリだけに言ったことがある。

「自分が待されて育ったから……子供たちに手をあげたりしたら……とゾッとした。綾を、子供達を不幸にするかもしれないと思った」

すると、叔父のカズール伯爵シエラシールは大笑したらしい。

「お前は2人だけで子育てするつもりなの?おこがましい!綾の家族である私たちや、お前のお祖母様たちがいるって言うのに、2人で?」

「えっ、でも……」

「お前は仕事で忙しい。爵位もいつかは継ぐだろうね?それに綾は、努力家だから頑張ろうとするだろうけど、綾も支度に子育てに、屋敷のことにって……その上に余裕はあるかぁ!それに綾の両親である姉様や兄様、お前の義母上にお祖母様、皆が楽しみにしているのに、それを拒むのかな?冷たい甥……まぁ、私は不用だけど〜」

「叔父上や……皆さん……嬉しいですか?」

「當たり前じゃない。カイは私の甥で、綾は姪。幸せになってしいに決まってるでしょ」

シエラシールは頭をでる。

「兄上や姉上も本當に喜んでいるよ……幸せになりなさい」

叔父にそう言われ、涙が止まらなかったらしい。

そして生まれた子供は、本當に男ばかりで手がかかり、シエラシールの言う通り親族に頼まないと全くどうしようも無かった。

安心したとも言う。

そして最近には、

「お前もそろそろいい人を探さないとね」

と言うようになっていた。

しかし、自分に近づくはほとんど、二言目には兄たちの名前を出すことが多く……既婚の上3人の名前を出すことすらある。

それにうんざりしていた。

で、自分の先輩であり、シェールドの最も友好の深いルーズリア王國の王弟の嫡子デュアンリールの暗殺未遂と言う事件に父とローズ様、そして実兄以上に兄として慕うアルトゥールが向かい、次はルーズリアの王太子のお茶に毒をれられたと聞き、急に溜まっていた休暇を使い溟海めいかいを渡った。

そしてそこで、デュアンの妹であるリティがいた。

あまりの可らしさに、どきっとした。

大きな瞳に華奢なにお人形のようならしい仕草。

ちょこまかとく様も可いし、聲もコロコロしていてがドキドキする。

すぎる……どうしよう……抱きしめたら絶対に折れる。

聲を聞いていたら、話に聞きっていたいし、小さい口でクッキーを食べているのを見ると、アーンと食べさせたくなる。

ニッコリと、リボンを結んであげただけで笑ってくれた瞬間は息が止まった。

どうしよう。

他の……特に、男子で知られているこのルーズリアの王太子に、あの笑顔を向けられたら……。

「僕……泣けるかも……」

「どうしたの?」

「……ローズ様に聞いて、向こうから々持ってきて貰おうっと……リボンも喜んでくれたし、次は時計とか……ピンクの……こっちもローズ様にお願いしよう」

「だから、泣くって?」

「……嫌われたくないし、でも、僕、誰ともお付き合いしたことないし……どうしたらいいのか解らないし……ダンスのレッスンと、後、何をしてあげたらいいのかな?」

父を必死に見上げる。

「どうしよう?えっと、レッスンに勉強に……」

「……落ち著きなさい」

「あっ。ごめんなさい」

思い出したように告げる息子に、カイは頭をでる。

「まぁ、おじいさまに教えて貰った昔話とか、姫の知らないお話を話してご覧?」

「あ、そうか!父さんありがとう!」

「はいはい。でも、もし振られたら、昔のように私に抱きついて泣いていいからね?」

「父さん!酷いこと言わないでよ〜!まだ何も始まってないのに!」

セリは半泣きで父親に訴えたのだった。

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