《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》48……練習のネグロス侯爵家のパーティに向かう
リティは、両親とは別のエスコートのセリと共に馬車に乗り向かう。
「リティ姫。可いです。今日のドレスは、シェールドのですね」
「布が違うのですね。それに、織の柄が不思議です……」
「あぁ。これはですね?グランディアの織になります。草木染めを用いたもので藍あいと言う植から出るや、後は紫草むらさきぐさと言う草で紫、紅花べにばなが赤とを出すんです」
「沢山があります」
「えぇ、友禪ゆうぜんと言って、とても手間がかかるのです。実は、簡単に下書きをして、その線の上に糊を染み込ませ隣同士のが混ざらないようにするのです。そして、筆でを置いていくんです」
「えぇぇ……」
ドレスを見つめる。
細かい模様……花柄や、六角形の模様の中に花柄など様々な模様がある。
「綺麗ですけど、本當に凄いです……この端切れで、可い飾りとか作りたいです」
「そうそう。向こうの正妃のルエンディード殿下や、王弟殿下のお妃のブリジット殿下が々作られているよ。その髪飾りは手作りなんだ。あ、こっちの小さい花を沢山くっつけたのは僕が作ったの」
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「えっ?セリお兄ちゃんが?」
「うん。簡単だもの。小さいのを1つだけでも可いんだよ?四角い布の中央にこうやって四つ角を折って、ってそこにビーズをつけるんだ。それをピンにつけただけでも可いよ?」
「わぁ……」
あまり知らない寶石以外の裝飾を、今日は選んで貰ったのが心嬉しかったリティは、
「ありがとうございます。可いです」
「この時期だから紫花あじさいがグランディアでは咲き始めるから。紫花の花をイメージしました」
「紫花?」
「グランディアの花だよ。沢山の花が1つに集まって、こんな形になるの。確か、ラーシェフ公爵の溫室にもあるはず。今度見てみると良いよ?アルカリ土と酸の土でが変わるんだよ」
髪飾りを直しながら微笑む。
「そう言えば、セリお兄ちゃん。グランディアのドレスはどんな風なのですか?」
「うーん……スカートじゃないなぁ……それに、今の時期だと暑いから、浴かな?うちの母さんはドレスよりもグランディアの著が多いなぁ」
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「どんなのでしょう……」
「シェールドに行ったら、僕が贈るね?」
「……もう、やめなさいな。セリ」
苦笑うのはローズ様である。
「言うか、著は著せないわよ。を締め付けてしまうのだから……浴にしなさい。浴に」
「はーい。可い柄にします」
「あっ、ここでしょうか?」
最近は、クッションと膝掛けで危険回避に努めているリティは、馬車が立派な門にっていくのに気がつく。
「無駄に金をかけているのよね。私の報網でも有名よ。このネグロス侯爵家のお金の流れはどうなっているのかしらって」
「あぁ、僕も気になってます。調べましょうか?」
「何言っているのよ。姫様のエスコートを忘れないのよ。気を抜かないようにしなさいね」
「そうですね。殘念ですけど」
ローズ様とセリは話すが、ローズ様の橫に座っていたのは、リティ付きの執事である。
リティはを治すこととダンスなどのマナーレッスンの為、ほぼ両親や兄に全てを任せていたのだが、デビュタントの直前に、リティ付きの執事を紹介された。
メイドのリナとレナの雙子が付いてくれているので、充分と思っていたのだが、
「僕付きの執事のリヒャルト・ギーンゲンの弟のテオドール・ギーンゲン。兄弟で勤めているからね。2人の父が家令のギーンゲンだよ」
と兄のデュアンに紹介された。
テオドールは兄のリヒャルトに比べ筋質で、がっしりとしている。
リヒャルトも細だがそこそこ鍛えているらしい。
詳しく聞くと、デュアンの留學の際に兄弟で一緒に留學し、2人とも剣などをそれなりにこなしているらしい。
リヒャルトは結婚しているが、テオドールはまだ未婚だとデュアンは紹介したのを、眉間にしわを寄せた。
「若様……個人報ですよ」
「結婚しなよね。いい歳なんだから」
「若様に言われたくありません」
「僕は婚約者がまだ未年だよ。テオは、17になったじゃないか、相手」
「……」
無言になるテオドールに、リヒャルトが、
「若様。テオドールをからかわないでやってください。仕事ができませんから」
と口を挾んだ。
リティはそれ以降事件が相次ぎ、雙子のメイドとテオドールが後日王宮にやってきた為、知らなかったのだが、セリはすでに騎士の館の先輩でもある彼の人のことを知っていた。
「姫様。私どもはお側にいられませんので、セリ殿とローズ様、旦那様や奧方様からあまり離れないようにして下さいませ」
低いが暖かいバリトンの聲が響く。
「もう直ぐ到著かと思います。姫様はマナーは完璧で、公爵家、ひいてはこの國の唯一の存在。何かあればすぐにお二人に……」
「はい、テオお兄ちゃん」
「テオで結構です」
「……えと……テオお兄ちゃん……ててて、テオお兄ちゃん……言えないです……」
「お兄ちゃん程度で文句はやめなさいな。テオドール。言って貰えるうちが花よ」
ローズ様が後輩であり部下をいなす。
「私なんて、おじいちゃんよ……の子たちはみんな可いけれど、可くない次男の長男が可い位で、あとは可くないわ〜男って嫌よね」
「そう言えば、あの子もメテオール。テオですね」
「違うわよ、メオよ!うちのメオはお利口なのよ!口下手で表があまりでないのだけど……あの子にだけは『じいじ』って呼ばれてもいいの!」
「そう言えば、ローズ様、メオどうしたんですか?」
「馬鹿息子が連れ帰ろうとしたから、半殺しにしておいたわ。それに、メオもラファなら大丈夫なのに、あの子を見ると直して、ここで言うのもお下品かもしれないけれど……おもらしをしてしまうの……」
ローズ様は悲しそうにため息をつく。
「両親ともに職業持ちの弊害ね。しかも最前線の紅騎士団長とその側近の參謀の夫婦でしょう?悪気はなくてもメオを騎士団の建に置いて出したり、星蘭せいらんが2人目を妊娠して大変だからって、なーにが『俺が面倒見る!』よ!あの萬年真夏のカルスの騎士団の奧の武庫に閉じ込められて一晩!重度の熱中癥で発見されるまで、気づきもしない馬鹿息子にはもう想が盡きたわ。星蘭が泣いたけど、連れ戻したわ」
「そう言えば追いかけてきて滅多打ちでしたね、ローズ様とラファ団長と陛下に。で、カズール伯爵閣下も即、任地に戻れって送り返されて……」
「當然でしょう!馬鹿息子のことも『パパ』って呼ばなかったのよ?テオは。『団長』って呼ぶの。自分のことを『団長の邪魔』『大人しくしてるの』って言うの!もう、悲しくて毆り飛ばしたわ!自分の名前も『団長の邪魔』だって思い込んでたみたいで……何度も言い聞かせたんだから……もう、ラファのところの長と同じ歳なのに、ビクビクおどおどして……最近になってよ?『じいじ、大好き』って……あぁ、思い出すと會いたくなるわぁ……」
「帰られます?」
「仕事が優先。それに、ファーや陛下が付いているから大丈夫よ。それに、先日初めて、メオから手紙が屆いたの」
頬を赤く染める。
「『じいじ、大好き。ローズちゃんのじいじも大好き』って、絵も描いていて……もう、幸せよ〜」
「ローズ様のことも理解しているんですね……」
「當然でしょう?私の孫は賢いんだから。まだ小さいのと、人見知りだから、怖がってしまうけれど、それさえ直せば、あの子は可いんだから」
「その姿させるんですか?」
「させないわよ!メオがしたいと言いだしたらだけど、あの子はまだ人見知りだから」
ローズ様の孫ラブ談義に、
「ローズ様、メオくんは、ローズ様に似ているんですか?」
「いいえ、星蘭……息子の嫁に似ているわ。だから、髪のは金、瞳は緑だけれど、顔立ちはいわね。彫りも淺いし、鼻は低いし、タレ目よ。同じ年のラファの娘よりもく見えるわ」
「星蘭は僕の従姉妹だよ。僕の長兄の奧さんが星蘭のお姉さん。でもメオは星蘭に似てるのは格で、顔立ちは僕の兄嫁に似てる……男の子に生まれて勿無いって言われてるくらいだし」
セリが説明する。
「お目目ぱっちりでまつ長くて、おとなしい子なの。シェールドに行ったら會えるよ」
「紹介するわ。長男夫婦と一緒に。一応、次男のところには男の子が生まれたのよ。だから、ひとり娘だけの長男の養子にしようかと思っているのよ」
ローズ様は微笑む。
「星蘭も大変だと思うけれど、職業と子育ての両立は難しいわ……そのためにも息子が協力できればいいけれど、ラファは大丈夫だけど、あの子にそんな用なことは無理なのよね……」
ぼやいたローズ様の聲とともにゆっくりと馬車の速度が落ちていき、門前に止まったのだった。
小説家の作詞
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