《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》51……ネグロス侯爵のパーティ

リティは、屋敷にって、何故か落ち著きなくチラチラと周囲を見る。

セリは、そっと聲をかける。

「姫?何か気になります?」

「あっ……あの、セリお兄ちゃん……ごめんなさい。キョロキョロして……」

「大丈夫だよ。それよりも、何か変ですか?」

「えっと……」

し疲れましたか?失禮しますね」

もじもじとしていたリティを、そっと抱き上げて話しやすいようにする。

一応セリは騎士としては低いものの160センチはあり、リティとは30センチも違う。をかがめて聞くこともできるが、止まらないといけない。

リティは、軽々と抱き上げてくれるセリに驚くが、セリの肩に片方の手を置いて、もう片方はセリの耳に寄せて、

「お兄ちゃん。ここのお屋敷、変な臭いします」

「……変な臭い?」

「はい……元の……ラミー子爵の吸っていたタバコと一緒です」

「タバコ?普通のじゃないの?」

「……それを吸うと、お酒に酔ったみたいにフラフラしたり、天井を見上げて笑ったりしてました」

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セリはエスコートしている相手に緒話をして貰い、嬉しそうに微笑むように周囲に見せかけると、後ろにいるローズさまに前を向いたまま、

「ローズさま。こちらのお屋敷の香りは獨特ですね」

「そうねぇ……」

と、微笑みつつ答える。

元々清潔のあるローズ様は、ドレスや香水も量……だが、念に浴をして仕事にる。

ローズ様は昔は潛部隊だったものの、最近ではパーティなどでは分を利用し堂々とり、視線などを集めつつ部下に指示している。

しかし、自分自でも確認したい為、チェックの為にドレスの中には様々なものを納めている。

「……お香かしら?私達の知らない」

「ローズ様の知らないお香なんて珍しいですね」

「そうねぇ……」

ローズは扇を広げ、小聲で一言二言囁く。

「薬反応ね……クレス。調べて」

『はい』

扇の薔薇飾りの中には會話のやり取りのできるがあり、潛メンバーと通話ができる。

ちなみに、セリも新しく作って送って貰った、リティとお揃いの蝶のピアスをつけている。

ピアスからもローズはリティの聲を拾っており、それも実はミューゼリックやテオにも屆いている。

ミューゼリックは妻と娘には通信は付けさせていないし、リティ自あまり良く分かっていない。

この聲が屆くのは、國王リスティルと王太子……そして、現在療養中と言うことで公の場に出ていないが、別ルートで潛していたりするデュアンのみ。

デュアンは、若返ったと言う姿は王宮でも最小限の人間にのみ知られており、今回は服裝は古著を著て、眼鏡をかけ髪を編んだだけで、パーティの為の臨時メイドとして潛していた。

元々クリクリとした瞳の母親似の顔立ちで、何度も裝潛も経験しているデュアンは、

「どうぞよろしくお願いします。マリアと申します」

と、控えめに微笑む。

では目立ってはいけない。

「マリアちゃんかい?こんな日に來るなんて……あまり目立つんじゃないよ?」

「歳は幾つだい?」

思ったよりも年齢が高いキッチンメイドが多い。

いや、デュアンがいるのはキッチンスペースである。

パーティの食べを運ぶ侍従やメイドは別室らしい。

手を洗い、

「お手伝いします。何からすればいいですか?」

「じゃぁ、クラッカーを並べておくれ」

「あぁ、本當に、こんなものをこんなパーティにお出しするなんて、旦那様は何を考えていらっしゃるんだろう……」

嘆く聲にクラッカーをお皿に並べながらヒョイっと見ると、蟲食いや腐りかけた野菜、チーズもパサついていて、貴族のパーティにしては質の悪いが並んでいる。

していると言うことは、日にちも立っているらしい。

ギョッとするが、両親や可い妹にこんなものを食べさせられないと、

「あの……私、実は一時期別の地域で住んでいたので、加工できます……よ?」

「加工?」

元々高級料理しか作らない料理人たちは、質の悪い材料でいつも通りの料理ができるだろうか?いやするしかないと心嘆いていたが、振り返る。

「は、はい。私の母が料理好きで、教えてくれたのですが……えと、香辛料はありますか?」

「これだけだね」

示すが、デュアンはチェックし、

「じゃぁ、すみません、ボウルをお願いします。そしてオーブンを溫めて下さい」

言いながら、を削ぐと、中はまだマシだった。

その為、周囲を削ぐと、塩胡椒を々多めにまぶし、味が染み込むように叩き込む。

そして、

「すみません。野菜は腐っている部分を取り除いて、綺麗なところだけ。綺麗な葉野菜はクラッカーにお願いします。マーデュは四角く刻んでオイルとビネガー、お塩、胡椒のドレッシングに混ぜて下さい。これは全部ではないですが半分はクラッカーの上に、殘りは小さい小皿で、何も載せていないクラッカーを並べた橫に添えて下さい」

「この、悪い野菜は?」

「おのソースと冷製スープを作ります。他には大丈夫な食材で、先輩方は味しい料理を作られるでしょうし、私はこちらに専念します」

「何を作るんだい?」

「本當は燻製にしたいのですが、時間がないので、胡椒とお塩で締めた後、表面をじっくり焼いて、その後オーブンで焼きます。それに、この削いだおもハーブを混ぜて腸詰めにして、茹でたいと思います」

その言葉に料理人はき始める。

気持ちは落ち込んでいたが、まだ若いきと言葉にやる気になったらしい。

「そうか。じゃぁ、私たちも急がないとな」

「そうですね」

料理人たちも広いキッチンに分かれ、料理を作り始める。

他の料理人が腸詰めを擔當してくれると言うので頼み、暑いオーブンの側で、火のチェックをしながらシンプルなピアスから時々報を頭にれつつ、キッチンに、

「あの、すみません。おのソースは二種類。一つはあっさりとしたものにして下さい。胡椒が辛いので……」

「分かっているよう。そう言えば、ラルディーン公爵閣下のお嬢様が來られているとか」

「食べて貰えるかねぇ……こんな酷い材料の……ご主人様も何を考えてるのか……」

ため息をつく料理人。

「おい、ご主人様の悪口……どこにれるか」

「でもさぁ……借金をしてこんな……大々的なものを。それなのに料理には……本當は他の所から來てくれないかって言われてるんだ。こんな殘念なパーティはもう嫌だよ……移ろうかと思ってるよ。……言いたくないが、給料も滯ってるじゃないか」

「……そうだねぇ……」

「まぁ、今日のパーティは何とかしないと」

き回る料理人を火のチェックをしているふりをしながら、デュアンは報を送り続けたのだった。

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