《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》53……オードニックという國

オードニックという國は、前にも書いたように砂漠と荒地、鉱山の國。

牧畜と略奪の國ともいう。

しかし鉱山は調べてみれば、それなりのものが取れる上に、地質學の専門家であるリスティル、ギルドの共同調査では、シェールドではでない珍しい鉱石が出る。

それはごく稀に降る隕石と同じ分が含まれており、過去のシェールドの書簡には、竜王ヴァーソロミューが生まれるもっと前に、巨大な隕石が落ちたとあり、元々高溫の鬱蒼としたジャングルが一夜にして焼け野原と化したとされているという。

そして、そのジャングルだった場所の一角にされた跡には、と骨が大量にされ、そこで人供が日常的に行われていたと言う。

その行為に悲しんだ神々がそのに染まった地を消し盡くしたらしいと言う噂まで。

その跡の発掘調査で、大地の神と風の神の祝福のない國とも言われるようになったという。

ものはほとんど育たず、巖や山、わずかに生える雑草は家畜の餌として食べ盡くされる。

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ちなみに、現代世界でもそうだが馬や牛は葉の上の部分を食べる。

その為、は殘るし、新芽も殘る可能も高い。

夏の間は放牧をさせ、柵を作った中で生え替わる新芽を食べていく。

しかし、ヤギやヒツジは葉だけでなくまでを食い漁る。

糞などが栄養にできればマシだが、乾燥させた糞は燃料となる。

木の生えない地域には、大事な火を焚く為の方法である。

しかし、糞は栄養が富である。

それに消化しきれなかった種なども殘っており、新しい芽吹きもある。

それを乾燥させて燃やすのみでは、芽吹くものはほぼないと言ってもいい。

その為に土地は荒れて痩せていき、種でも撒いておけばいいが、そのまま放置して移した後は、文字通り草一本生えないようになる。

シェールドの中南部も元々そんな荒地が多かったが、中央や地域の領主であるファルト男爵家で育てた飼料用の種を収穫し配り、放牧して土地を移る時に蒔いて貰うことで、草を食べ移して、又戻った時に生えている草を與えることができ、安定した餌を食べられるようになり、家畜もえ収が増えた。

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それだけではなく、麥などの食料を育てる畑に侵することもなくなり、旅する一族と、その近くの農村との関係も良くなり、人手が足りない時に旅する一族に頼み収穫の時期を終え、その手伝ってくれた分を分け、旅する一族も代わりに増えた家畜をさばき、お返しをした。

そう言う繋がりを風習や民族の違いをげるのではなく、認めていく。

そして、お互いの利益を求めていく。

生き抜く道を探していくことに功しつつある。

だが、オードリックは政策も立てず、民の生活を考えなかった為に、周囲は繁栄するものの衰退していく。

そして、不満が募ると、國王は政策を変えるよりも、民に囁く。

「自分たちの國がこのようになったのは隣國が悪い。隣國が我が國から奪っているのだ。ならば、隣國から返して貰えばいい!隣國は元々この國に恩があるのだから」

と……。

その言葉に、國境を超えて牧草地を荒らしたり、國境の町に家畜と共に現れる隣國の民を殺すことはないが、代わりに武を持って襲ってくる分あるものを徹底的に懲らしめるのがクシュナの役目である。

その徹底的と言うのは二度とこの國にってこないように誓約をわすことで、それを違えると命を失うものである。

もうあらかたの貴族はそれで追い返し、次こないように牽制していたが、今度はオードニックの國王直々に來るのではないかと言う噂を手していた。

そして、目の前には、

「お目目が、痛い……それに……」

涙目で、こほんこほんと咳を繰り返す小柄な従姉妹。

帰ってきた叔父たちも獨特の臭いを纏っており、クシュナは、

「大丈夫ですか?吸いすぎていませんか?それは、オードニック領の高地にわずかに自生する薬草です」

と問いかける。

「知っているのか?」

「いえ、ティフィから貰ったサンプルにありました。これは高地で生きる人が、高山病や疲労を覚えた時にちぎり噛むことで、一時的にその苦痛から解放されるのです。それを製したものがこの香です。ずっと吸い続けると、興狀態が続き、急に暴力的になったり、何かからの危険の恐怖を忘れることもできるとか。常習するとやめられなくなるそうですよ」

「まずは、醫師だな」

妻とリティを別室に、そして、浴とドレスを証拠品として持ってこさせると、ミューゼリックは浴後自分たちの服を甥で王太子の直屬機関に送る。

大人たちは何とか大丈夫だが、まだいリティには刺激が強すぎたのか、咳が続き息苦しそうな為、即診て貰う。

一応、リティの周囲がある程度落ち著くまでと殘っていたアルスは、息発作に近い咳を繰り返すリティに吸引をさせて落ち著かせる。

そして、酷い咳の為に熱を出したリティを休ませた。

「……この咳発作は、アレルギーではないんだが……」

「あの……」

浴したセリが髪を乾かしながら答える。

「姫が『前の家』と言っていました。その前の家の主人が、この匂いのするタバコとかお香を焚いて、暴れていたとか……だから嫌い、気持ち悪い……と」

「……では、服にこれだけ匂いがつくんだ、大量に炊かれていて、リティにはかなり辛かっただろう。それよりも、セリ……頭拭くのそんなに時間がかかるのか?」

「し、仕方ないでしょう……長いですし、重いんですよ……乾かすの時間かかるので切りたいんですけど、両親が許してくれなくて……」

嘆く。

セリの髪は母親と同じ黒い……祖父から聞くと、昔は『緑なす黒髪』と言われて、みずみずしくかな髪だと言われて育ったのだが、兄弟はらかく軽いが、セリはばすと重くて仕方がない。

ショートにしたいのだが、両親……特に父が、妻に瓜二つのセリが髪を切ることを反対する。

「一応風の魔法で、水を飛ばすんですけど、あまり効き目なくて……」

「まぁ、乾かした方が良いと思うが、お前は風とそんなに相良くないだろう?」

「そ、そうなんです……何故か分かりませんが、グランディアのを引いているのに、風は従えなくて……」

「風は従わせるんじゃない。友として対等に付き合うんだ。従わせるのは火。力の強さを見せる為。水は自分を見て貰う……水面を鏡と稱するだろう?で、土は知識を請う」

「……じいちゃんは、そんなこと言ってませんでした……」

目を見開くセリに、

「お前の祖父は生まれついての霊使い。風は無條件で従うだけのを持っていたんだ」

「じゃぁ、私は……」

「お前は外見はグランディアだが、グランディアらしくあるが、グランディアらしくない。風は気まぐれだ。気まぐれ風を制するなんて、よっぽどだ。それよりも乾かしてやる」

アルスは風を吹かせ、セリの髪を乾かす。

「ありがとうございます。編んでおこう」

一つにまとめ、三つ編みにする。

そして、

「私はグランディアらしくないというのは……」

「お前は、父方の祖父がグランディアのを引くカズールの人間でもあり、母方はグランディアだが、お前自は姿はどうであれ、水や土の霊と相が良いはずだ。お前の兄弟はアホが多い癖に無意識に風に好かれる質揃い。お前のことを嫌いではないが、お前は格が父親に近いから、真面目な土や、己の面と向き合うようになる水と相がいい。つまり、土の対稱に位置する風とはさほど……と言っても、全的なレベルは高いから分かりにくいんだな」

アルスはうがいをさせた後、薄めたジュースを飲ませつつ、まだ涙目のリティの頭をでる。

「姫は數日休もう。ハーブウォーターの匂いが嗅ぎ取れない位、焚きしめられていた。ここまで吸い込んだら辛かっただろう」

「でも、ロ、ローズさまや……パパとママとお兄ちゃんたちが……」

「でも、一番辛かったのは姫だろう。よく頑張ったな。お休み。これからうるさくなるから。それにアリアも休むと良い。旦那たちは作戦がある」

うとうとと眠り始めたリティに、アリアも々疲れたように微笑む。

「ありがとうございます。でも、リティが辛い思いをしているのに……」

「一緒に休めば良い。私がきちんと結界を張り巡らせておこう」

「アリア。リティを頼む」

ミューゼリックは妻に微笑む。

躊躇ったものの、アリアも正裝で長時間張していたこともあり、夫や息子たちを見ると、頰をうっすら赤くして、

「ごめんなさい。リティと休ませて頂きますね。貴方、デュアン、皆さん」

「あぁ、後で戻ってくるから」

ミューゼリックは抱きしめると、アルスに頼み部屋を出て行った。

アリアはベッドに潛り込むと、娘を抱きしめ、その頭をで、目を閉じたのだった。

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