《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》閑話休題……國王陛下の祖父

鏡を利用し、久しぶりに王都の土……王都の義父の住まう屋敷に著いた清影せいえいは、即、向かうのは妻の従兄弟たちの元である。

「あれ〜?久しぶり。エイ」

と聲をかけたヴィクトローレはザッと青ざめる。

ヴィクトローレは、孫が現在マルムスティーン侯爵、先代侯爵シルベスターの弟である。

師として現在最高位として采配を振るっているが、彼ですら青ざめるほど凄まじい力が今現在、清影の周りを渦巻いている。

「ど、どうしたの?」

「あぁ、久しぶりに幸矢こうやのところに滯在させて貰えたらと思って……」

ヴィクトローレは長兄と次兄をチラリと見る。

長兄で、先代マガタ公爵ルドルフが笑い、

「あぁ、行ってくればいい」

「あ、僕も行く〜エイ。ひ孫や玄孫やしゃご見たいよね」

「……そうだな……と思う」

「じゃぁ行こうよ。じゃぁ兄様、ヴィク行ってくるね」

従兄弟を促し出て行った兄を見送り、

「兄様、大丈夫かな……」

「大丈夫じゃないか?それに、先日ヴィ叔父上が、又じい様に遊ばれて暴発して寢込んでいるし、あの狀態のエイを、お前が何とかガス抜きできるとは思えないしな」

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「一回で懲りました」

ヴィクトローレは遠い目をする。

一回、ヴィクターに頼まれて清影のを見せて貰う……れない訓練場で立ち會ったのだが、次々と構……は組み立てるものである……を行うヴィクトローレの前で、天霊使い兼も扱う清影が次々と二言三言で、霊が荒れ狂い、その合間に初級のだというのに破壊力が通常の數倍のものが飛び込んでくるのを目の當たりにして、余裕もなく本気になって戦った。

しかし、最高位の師とは言え、高レベルので向かい自らの力は削がれて行くのに、清影は霊の力の合間に初級のを使うのみで、最後にはヴィクトローレが倒れ、數日寢込んだ。

生來見た目はほっそりとしているが、ある程度鍛えていたヴィクトローレが、い頃以來の稽古中にぶっ倒れたのに家族が何があったと駆けつけると、

「すみません……ストレス発散の為に、付き合って頂いたのですが……ヴィクが次々と強いを使うので、面白くなって……」

と頭を下げる清影に、ヴィクターが青ざめて、

「エイ!もしかして、霊を使ったのかい?」

「そうですが……向こうよりも何故か皆、面白そうに、『遊んで良い?』と言われました」

「あぁぁ!本當にあれだけ言っただろう?向こうとこちらとは霊の濃度は薄いけれど、こちらの方が広大で霊の數は桁違いだと!師としたら無盡蔵に近い狀態だ……ヴィクトローレはここ何代かの中でも強い力を持っているのに、力が盡きかけて……」

「そうなんですね。だから、長い間を見られたんですか……さすが、ヴィクトローレ」

心する姿にヴィクターはその頭をグイグイと押して、

「ごめん!うちの子が!一応小さい頃から暴走する子だったんだけど、を穏やかに大らかに、ついでにうちの子たちには滅多にいない、蕓系を教え込んで……いたんだけど」

「えっと、調子に乗りました。申し訳ありません」

「もう、來なさい。數日反省!」

とヴィクターが放り込んだのは、マガタ公爵領に作ったグランディア公主邸。

そこには清影が大切にグランディアから運んできたお寶が飾られていた。

「反省……」

「ストレス発散しなさい。全く……余裕がないよ」

義父の言葉にホッとした清影は思う存分盆栽などの趣味に沒頭し、発散して戻っていった。

その後も時々ストレスが溜まると、休暇を取り、その時の発散方法を決め……ある時は、丁度戻ってきていた娘の夫のアレクサンダーを徹底的にしつけ直したり、國王である孫の幸矢やその周囲の禮儀作法を見たりとあれこれしているが、今回は特に自分の不甲斐なさを思い出したのかとてつもなく落ち込んだらしい。

ため息をつき憂げな清影を見る。

「どうしたの?エイ」

「……難しいなと思って……」

「何が?」

「……里心がつかないように、最初は家族からの手紙をけ付けない、その後は長期休暇以外には実家には戻らない。手紙のやり取り以外はやめておく……と言うのも、子供ごとに難しいと思って……」

シルゥは考え込み、ほぼ変わらぬ長の従兄弟を見る。

「それって、騎士の館の運営のこと?」

「……本當は、総帥であるシエラや伯父上、ルード兄上にも相談が先だと思うのだけれど……シエラにだけ渡して逃げてしまった……」

「シエラに渡したのなら良いんじゃない?エイは、騎士の館の館長と言うよりも、若い騎士たちの父親だよねぇ?」

シルゥは自分の騎士の館時代は館長がしっかり定められておらず、微妙なじと思っていた。

それは子供達……フィアたちの時代は、館長が袖の下をけ取り、績を改ざんしたりしていた。

息子のフィアが同期のと追い出されるように騎士の館から騎士に配屬され、転々としていた。

その配屬先があのような狀況だったとわかったのは、フィアが意識不明で発見されたと連絡があった後……そして、歯車公爵家の令嬢でまだ若かったアルファーナが海賊に連れ去られ、人質とされ、命が助かったものの酷い傷跡が殘った……。

このような狀況というのは、聖騎士として許されないと、聖騎士である父や兄達と共に騎士の館の改編に著手した。

當初は兄のルードと父が時々館長代理として赴くものだったが、それではいけないと館長に適した人材を探した。

そうした時に、王太子と共に戻ってきた清影に適任だとシルゥが聲をかけた。

シエラや清影、そして兄達と話し合い、清影たちは當初カズールから通いだったが、あまり日をおかず家族と共に騎士の館の一畫に住み込み、次男の隼人が教として清影を支えた。

自分の子供や孫を育てるのと違う為、最初はどう接して良いのか悩んだが、その時は従兄弟たちに相談した。

「手紙の件は、やっぱり難しいですね」

「うーん。普通はだけど。複雑な場合は、その子と話し合うとかすれば良いんだよ。まぁ、エイたちはものすごくそこらへんは、きちんとしてるでしょ?」

俯き、呟く。

「対応が遅れてしまいました……の力もあって、暴走したのです。怪我をしてしまいました」

「……それは、その子に全部著いている訳にはいかないよね?エイは館長だし」

「……家族からの手紙で、追い詰められていたのです。家族から屆く手紙が嬉しいだろうと思って……」

「それは、仕方ないよ。私もそうだけど、あの頃の子供って微妙な時期だもん。それよりも、その子は」

「……隼人に預けました」

ポンポンと頭を叩く。

「じゃぁ、行こっか」

と歩いていくのだった。

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