《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》56……セリとママとお留守番です。
リティは母のアリアと王宮で、セリと王太子の従兄弟のティフィとラディエルとその母のティアラーティアと共に過ごす。
父も兄も、國王であり伯父のリスティルと共に出征する。
サーシアスとイーフェ……ラミー伯爵夫妻の長男クレスも一時的に爵位を長男のノエルに預けて出征するのだという。
國王である伯父が出る戦い……大掛かりなものになるらしい。
隣國オードニックとこの國……ルーズリアの戦いである。
しかも、こちらから攻撃するものではなく、先に向こう側からこちらに攻撃されていたことが判明したのだと、伯父のリスティルが発言した。
溟海うみを隔てた大國シェールドにも、その報はもたらされており、オードニックの目的が、何の罪もない隣國であるだけのルーズリアに攻め込み、領地を略奪、人々を奴隷とし、そして王妃のティアラーティアを敗戦國の王妃として口には出來ない行為をし、最後に、リスティルの姪であるリティを拐し、オードニックの國王の弟の妾とするのだと宣言したらしい。
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ちなみにオードニックは複數の妃、妾を持つことができるらしく、
「……一応言っておくが、7人の人に、妾が15人、一応妃が20人だそうだ。子供がいないらしい。まぁ、50も超えてて、リスティル陛下のように節制のある生活をしてを鍛えているならともかく、贅と太っているのが金持ちの証とかいう國だ。馬が重さで走れないそうだぞ」
「それに弟も、ほぼ同様ね。どちらも悪政敷いているし、叛寸前よ。住民はこちらにも逃げて來ているらしいわ」
ティフィとその母ティアラは説明する。
「でも迂闊にれられないから、クレスがラミー領に一時的に保護してくれているんだ」
「れないですか?」
「そう。ほとんどの人は、悪政に苦しんでいた一般の人。でも、その中に紛れて諜報……間諜スパイ活をする人がいる。そういう人を即座に捉える事が、クシュナ兄さんの役目だよ。それに、新しい當主のサーシアス卿とイーフェ殿が向かったのは、一般の人の援助と地域の人々の為。戦爭に巻き込まれたら困るし、空いている家に逃げて來た人々を振り分けて、食べや服、布などを分ける為だよ」
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「じいやとばあや……リティも行けたらよかったです……きっとお手伝いしてくれている、領地の人たちもいるので……」
「だいぶん、勢が良くなってからにしようね?姫。きっと領地の人も姫が心配しているって分かってると思うから」
「はい」
頷いたものの、珍しく機嫌が悪い……と言うよりも、目をこすっているのは眠れなかったらしい。
「姫?眠たいの?寢ます?」
「……変な夢見るのです……卵から何かが生まれるのです……パパ……お兄ちゃん……」
「卵から?」
軽々と抱き上げ、自分のに耳を當てるようにして、トントンと叩くセリ。
「……ピィピィ鳴いてるのです……。パパ、ママって。そうしたらえっと、アルドリー陛下によく似たの方と、灰の髪と翠の瞳の男の方が見ていたら、青い獣の赤ん坊で……男の方が抱き上げたら、リティを見たのです。『こちらからは見えないけど。私たちを見ているね?この子には弟妹がいる。お寢坊な子なんだ。起こしに來なさい。きっと道が開かれる』って……」
灰の髪と、翠の瞳?
し艶が出たら銀の為、この國にはそのが多いが、アルドリーに似ている人といると言うことは……。
「ミュリエル・レクシア・レ・ファン・ド・ラディール・シェールド陛下だね。アレクサンダー・ギデオン陛下の夫君。お二人が育てられたのがあの竜王ヴァーソロミューさまだよ」
「兄弟……」
「ヴァーソロミューさまには兄弟がいるんだけど、まだ卵のまま、生きてるかどうかも解らないんだ。それに、ヴァーソロミューさまのようなブルードラゴンは生態を調べる前に、ヴァーソロミューさまともう一つの卵を殘して絶滅してる。ヴァーソロミューさまは確か1800歳……でも、ブルードラゴンが何歳まで生きるかは解らないんだ。他のドラゴンの壽命はヴァーソロミューさまが覚えているけど……一応ヴァーソロミューさまは結婚していて子供はいるけど、ホワイトドラゴンの奧さんで、ハーフの子供たちは上の子はブルードラゴンに特徴似てて、長はゆっくりで、賢いけれどまだはいはい程度、下の子はホワイトドラゴンのが濃いのかもう、外見、人間だと姫さま位の年齢かな?」
「お、お兄ちゃんがはいはい……」
「そう。僕の小さい頃は、寢返りもうてなくてびえびえ泣いてて、抱っこしてゴロンゴロンして遊んでた」
セリは笑う。
「カリュスレード……カリュは賢いんだけど、小さくて、同じ頃生まれたホワイトドラゴンはもうすぐ人だから、いつもいじめられて、お父さんであるヴァーソロミューさまと王宮で生活しているんだ。お母さんのコンスタンツェはホワイトドラゴンの長の娘で、妹のフロレンティーナもある程度大きくなるまで向こうにいるみたい。コンスタンツェの弟のマルティーンも、レッドドラゴンのウィンフリーデと結婚してハーフのパトリツィアが生まれてるよ」
「わぁぁ……」
「ピンクので瞳もピンク。パティはカリュが大好きで、いつも一緒なんだ」
「ピンクちゃん。可い。會ってみたいです」
リティは瞬きを繰り返しながら答える。
「……夢……でも、リアルなんですよね……『お寢坊さんを起こしに來なさい』なんて……」
トントン、扉が叩かれる。
「妃殿下、王太子殿下、ロビンソンにございます。お客様がお越しにございます」
仮近衛部隊長のロビンソンである。
國王の命令で、王妃と王太子付きとなっている。
「お客様……」
「お久しぶり〜」
大型の扉を頭を下げて潛る、巨人である。
「ほら、カリュ?セリだよ」
巨人……しなやかさのある細ではあるものの、リティが必死に首を持ち上げないと顔が見上げられないだろう……。
そして、その肩……首にしがみついている白い玉。
『シェリー!シェリー!カリュだおー!』
「はいはーい。カリュ。久しぶりだね」
『うん!カリュ、おにーたんだもん!パパとあしょびにきらの』
「こらこら、カリュ。パパはお仕事です。カリュは遊んでいいけど、ほら、この間のナムグたちと遊んでおいで」
白い玉は降ろされると、
『んっちょ、んっちょ……』
とはいはいをする。
その姿が可らしく、眠そうだったリティは目をキラキラさせてじっと見つめている。
「姫さま、行きますか?」
セリは抱いたままカリュに近づく。
「カリュ?姫さまがこんにちはだって」
「カリュくん、はじめまして。リティです。な、仲良くしてくださいね」
セリに降ろしてもらったリティは、にっこり笑う。
首を傾げたカリュは、
『ファティ・リティ?こんにちはにゃの』
「知っているのですか?」
『うん。カリュ、ここのリーより年上にゃの。お兄ちゃんにゃのよ。にゃのに、からかうの。らからね?ペンペンしゅうの』
「こらこら、カリュ。今、ここは大変だからね?」
息子の後ろで座り、長い足をばした青年は、
「こんにちは。ファティ・リティ。私は、このカリュの父のヴァーソロミュー。ヴァーロと呼んでね?」「ヴァーロさまですか……」
「そう。シェールドの國王アルドリーの後宮騎士団長です。今回、部下を數人連れて來たのです」
「部下……」
「うげぇぇ……」
珍しく嫌そうなセリに、
「おい、セリ、そんなに嬉しそうにされると嬉しいなぁ」
「誰が嬉しいかぁぁ!このバカ兄貴ども!」
セリが怒鳴りつけるのは、瓜二つだが、片方が派手、もう片方がモノクルをつけた青年……。
セリの父、カイにそっくりだが、カイにはない腹黒さが見える。
リティはとっさにセリに抱きつき、顔を隠す。
「あれあれ?アーダルベルト、お前、怖がられてるぞ?その目つきの悪さ何とかしろ、腹黒」
「兄さんに言われたくありませんよ。兄さんはマゾですから」
「ツキだけだ。お前はサドだろうが」
あまり知らない人に會うのは怖いリティは、ぎゅーっと抱きつき、必死に首を振る。
「ふ、ふえぇぇ……せ、セリお兄ちゃん……怖い〜」
「この、クズ兄貴!即座に死ねぇぇ!」
リティを抱きしめ、二言三言呟くと、バーンと小規模発が起こった。
「ふ、うぅ……」
半泣きになったリティに、
「大丈夫。結界の中だけ薬を破裂させたから」
あれを見てと示されると、円形の煙を取り巻いていた中から、ボロボロの制服の青年二人が見える……。
「……エルドヴァーン、アーダルベルト!」
背後から姿を見せたのは、金髪に紫の瞳……ウェイトの妹の夫エリオットである。
ウェイトの同期のルーの従兄弟で、同じく貌の持ち主なのだが、従兄弟同様ガサツで野生の勘に優れている、勿無い上司その二である。
「おっ前なぁぁ!來て早々に、何してんだ、このあほんだらぁぁ!」
「それよりも、おっさんのとこの息子、口説いてるよ」
振り返ると、エリオットにそっくりな青年が、リティの母を口説いている。
「ダメダメダメ〜うあぁぁん!ママぁぁ!」
「この、愚弟がぁぁ!親父共々死ねぇぇ!」
と、澄んだ聲が響き、青年の襟首を摑むと、エリオットめがけて投げつけた。
「全く、馬鹿どもめ!連れてくるんじゃなかったぜ……大変お騒がせいたしまして申し訳ございません」
丁寧に挨拶をするのは、ただ一人純白の制服をにまとっている青年……顔は、ローズさま瓜二つである。
「団長!」
「あぁ、セリ。ご苦労。さすがカイ兄さんの息子。愚兄賢弟とはよく言ったな」
「でも、団長のところは賢兄愚弟ですよ?」
「……今更だが、俺のどこに、この親父のが流れているのか聞きたい」
ため息をつくと、父親らを睨み、橫に並ばせると、
「申し訳ございません。私は、シェールド騎士団、カズール騎士団長ラファエルと申します。養父は、先日よりこちらにお世話になっております、ウィリアムです。ラファとお呼びください」
丁寧に頭を下げる。
「そして、橫から順番に、私の実父のエリオット、実弟のミカエル、そしてセリの長兄のエルドヴァーンと次兄のアーダルベルトです。順番に力だけ、浮気者、嫁に毆られるのが好きな変態、嫁を泣かせて喜ぶ馬鹿です。急でしたので、毆り飛ばして參りました。後で、親友のセナやカズール伯爵が到著いたしますので、力不足ですがご了承くださいませ……おい、頭下げろや!」
顔は養父に似てだが、口調が厳しい。
しかし、心配そうな表で、奧を見る。
「本當に、ティアラーティア姉上、アリアレーナ叔母上……それに、ティフィも無事で良かった」
「ラファ兄さん!」
ティフィが抱きつく。
「來てくれて……良かった!ありがとう!」
「當たり前だろ。約束したじゃないか」
ポンポンと背中を叩く。
その様子に、セリは、
「ラファ団長……兄さんは、シェールドの6つある騎士団の最高位なんだよ。ヴァーソロミューさまも後宮騎士団長だけど、形だけ下。で、僕は王宮騎士団長だから、一応ラファ団長の次。で、エリオット叔父さん以下ミカエル兄さんに、うちの長兄次兄は、後宮騎士団の一般団員だから、ラファ団長や僕が指示することもあるの。だから、見てて?ラファ団長〜」
「何だ?」
「姫さま……こちらがラルディーン公爵閣下の末娘のファティ・リティさまです。ヴァーロ団長やラファ団長は大丈夫みたいですが、長兄次兄に怯えてます〜。それに、ラファ団長の頭痛の元のお二人も苦手みたいです」
「……即処分しよう」
低い聲で宣言したラファはティフィと共にゆっくりと近づく。
「本當に申し訳ございませんでした。姫。あ、そうだ……」
ポケットから、飴のった小瓶を出すと、
「グランディアの技を使って作られた飴です。姫。いかがですか?」
「飴?」
飴は時々食べたことはあるが、紙にり付けられ、剝がして食べるものである。
恐る恐る見ると、星のような形の白、赤、緑、黃、オレンジの飴が小瓶にっている。
「可い……綺麗……ひ、一つ頂いても構いませんか?」
潤んだ目で上目遣いでおねだりするリティに、ラファだけでなく4人も墮ちた。
が、すぐに我に返ったラファは、結界に4人を閉じ込め、にっこり笑い、
「どうぞ。これは姫へのお土産です」
「えぇぇ!お星さまいっぱい!えっと、セリお兄ちゃんとティフィお兄ちゃんと……えと、ラファエルお兄ちゃんも食べますか?ママやお姉様にも……」
「良いのですか?」
「は、はい。一緒に食べたいです」
養父のローズさま譲りで可い子が大好きであり、の子は可くあるべし、無理難題ではないの子の可らしいお願いは必ず果たすべしがモットーのラファは、瓶を開けると、リティは、まずピンクをセリの口にれ、黃をティフィにれた。
そして、ラファには緑、白は、
「ヴァーロさまも、カリュくんも大丈夫ですか?」
「うん。甘いもの大好きだから」
「じゃぁ、あーん」
『アーン……おいしー』
それから順番に母に、叔母にと食べてもらい、じかには怖かった4人には、瓶を差し出したのだった。
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