《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》57……星の飴とリティ
自分の口の中で甘みが広がり、リティは、半分眠たいのかうとうとと呟く。
「味しい……幸せでしゅ……パパやお兄ちゃん、リー伯父さま達に……」
「帰ったらあげましょうね」
眠くなる時に舌ったらずになる姪のらしさに、ティアラーティアは微笑む。
しかし、王妃である彼はゆったりしているようでいて、それ以上に覚悟をしているのだ。
王妃として、夫を心配しつつ息子であり王太子を支えることを。
不意にリティはムニムニと目をこする。
セリが慌てて止める。
「あぁ、目をこすっちゃダメですよ」
「ご、ごめんなしゃい……っ……」
こらえきれなかったのか小さくあくびをし、口を押さえ赤い顔になる。
「は、恥じゅかしい……」
俯いて恥ずかしがるその初々しさと可らしさに、セリは心悶え、セリの兄2人が、
「なっ、顔も可いのに、仕草も可い!」
「……あいつは大あくびだけど……」
「うちのツキなんて……」
「ツキに期待するな」
バッサリと切り捨てるラファ。
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「それに、ツキが男嫌いになったのは、お前らが、特にエルが悪いわ!」
「ツキ……しゃん、れしゅか?」
「ツキ姉さんは、長兄の奧さん。月歩(つきほ)って言うんだよ。騎士になれたんだけど、問題があって現場に立てなくて、後輩を育てる教になったんだ」
「問題……?」
リティは首をかしげる。
ラファは首をすくめる。
「ツキは私の馴染なんだ。一つ違い。でも、めちゃくちゃ可かった。那智と六槻(むつき)姉さんは別格だが、お人形みたいだったな。潤んだ黒い瞳と漆黒の髪と、は白くて人見知り。六槻姉さんは拐直前に犯人を叩きのめしたが、ツキは何度も男に拐されかかって、おじいさま……騎士の館の館長が自分のを守れるようにと武蕓を叩き込んだんだ。で、その頃、ツキの姉さんが男に騙されて、連れ去られそうになって、俺とツキ、馴染と追いかけた時に、大人しかったツキが、大好きな姉さんの髪のを切り刻み、服を破っていた男たちにブチ切れて、オラァァと半殺し……。どうどうと宥めて、死者がなかったが、それから、長くばしていた髪を短く切って、男みたいな喋り方に『男はケダモノ!抹殺!……あ、セナ先輩とラファ先輩は親友だ!』と、騎士になって男に騙されるを守ると騎士になると言ったんだが……」
はぁぁ……ため息をつく。
「日向夏(ひゅうか)さん……お姉さんの旦那のちぃはツキと上手くいくんだが、それ以外は暑苦しい!と毆り飛ばし、としてみられたり聲をかけられると、敵も味方も関係なく攻撃して……これじゃぁ騎士団には置けないとなった……それを余計に悪化させたのがコイツだコイツ!」
エルを毆る。
「だから追い回すなと言っただろう!お前、顔だけでガサツ!もっとレディに対する対応を考えろ!」
「だって、ツキは兄さん達やちぃとは仲が良かったけど、俺たちには容赦ないし……」
「兄上のとばっちりをけてボロボロでした」
腹黒メガネの次兄アーダルベルトに、セリが、
「兄さんも姉さん囲い込んで、だったよねぇ?あぁ、ヤダヤダ、普段は無表のくせに笑うと悪役」
「セーリー!」
「本當じゃん。ニヤッじゃん。父さんは無表っぽいけどぼーっとしてるのに、エル兄さんはツキ姉さん以外にも想を振りまくからダメなんだよ。で、兄さんは何か悪巧み企んでそうな顔。姉さん達によく言われるんだよねぇ、いつも一緒にとことんまで叩き潰さないかって。今度してあげよう」
「俺も付き合うぞ。那智が心配しているからな……」
「那智しゃん……?」
リティがラファを見る。
「あぁ、那智は私の妻なんだ。ツキと日向夏さんの妹で、本當に可いんだ」
照れっと頬を染める。
顔で顔のラファが照れると可らしい。
「兄さん、惚気はいいから……」
「エル兄さん、うるさい!」
セリはポケットの中にれていた何かを投げた。
ラファを除く4人の真ん中にったそれは、明な空中で発すると、まみれになり、ついでに目を覆いくしゃみを始める。
「セリ、何をしたんだ?」
「卵の殻の中に、と香辛料を使う弾です。出の時に使うので。常時作ってるんです」
「あぁ、あれか。良くやった」
「いえ、兄達がアホですみません。団長」
4人がくしゃみをしているのに、上司と部下の會話は続く。
「団長。ウィリアム卿が、向かう前にあれこれと言われておりますが……」
「ある程度は見當がついている。大丈夫だ。後でくるセナと師匠が一気に戦局を変えるだろうさ」
「大丈夫ですか?」
「何が?」
「叔父上……シエラ叔父さんは、國を守ったほうが……」
躊躇う一言に、ラファが、
「師匠が來なかったら、陛下が來る。そうすると先代マガタ公爵閣下、先代マルムスティーン侯爵閣下が揃って來られる。表舞臺から下がられたお二人……逆に陛下を支えられておられるお二人まで出て來られると、國が曬される。一気に行こうと思っているのだと思う……まぁ……それは、私が思っただけだけれどな」
「……もっと、私に力が……本當は、私が潛している間に、愚兄達がもっと団長やセナ先輩、ちぃ先輩のようになっていれば、かせる駒が増えていたのに……」
「本當に、私の努力が足りなかったよ……」
ヴァーソロミューが髪をかきあげる。
その聲にセリとラファは首を振る。
「ち、違います。ヴァーソロミュー様のことを言ったのでは……」
「分かってるよ。でも、指摘されたようにやっぱり甘やかしすぎだね。帰ったらもっとビシバシ教育しようか。ラファを後宮にとも思うけれど、そうすると白がいないからね。シュティーンの孫は次のマガタ公爵として自分の領地を知るべきだしね……」
「後宮には名譽なことですし、父と共に働けるというのも嬉しいことですが……」
口を濁し、チラッと見るのは、実父と弟……。
「神的に追い込まれそうなので、遠慮させてください……カイ兄上の例もありますし……」
「そうだねー。カイには辛いかもね。ならエルドヴァーンとアーダルベルトを後宮から出そうか?心労も減りそうだし」
涙目の2人は突然の戦力外通告に青ざめる。
「それだと私の心労が……」
「そうなんだよね……本當に、セリは祖父のエイや両親を見て育ったからか、そういったところは似ているのに、エルドヴァーンとアーダルベルトは中途半端で出來の悪いリュシオンそのもので、本気で歯がゆいね。リュシオンは騒を巻き起こす天才だったが、剣に関しては天才のアレクシアに負けないと努力していた。孫のお前達にはそれがない。殘念だよ。末っ子がどう育つかだけどね」
「ウィンツェンツは負けず嫌いですね。いつも、暇があったらお兄ちゃん、僕に剣を教えて下さい!って來ますよ。最初は本當に荒いきでしたが、最近はさも取れ、無駄なきが減ってきました。父上にも教えてしいとせがんでいるそうです。父が嬉しそうでした」
「まぁ、末っ子で上とし離れているからね」
「それに、嬉しいんでしょう。私は母に似ましたが、ウィンツェンツは父に似ているようで、どことなく両親のいいところを貰ってますし。それに、髪のが濃くなっているんですよね。私と同じ真っ直ぐだと思っていたのですが、金じゃなく、明るいブロンズ系に」
セリが考え込む。
「もしかしたら、もっと濃くなるかもしれません。本人は、父は好きだけど黒い髪がいいと言ってました」
と、セリの上を握りしめていた指の力が緩む。
ハッとすると、スゥスゥとリティは眠っていた。
しかし、軽い。
セリの末弟よりも遠慮が強い。
元の家では甘えることが許されなかったのだろう。
多分……セリの父のように……。
「弟の長も楽しみですが、姫が笑顔になってくれたら嬉しいです」
「そうだな……」
ラファは微笑んだ。
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