《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》59……最後のブルードラゴンの養い親

クレスツェンツは、バランスの悪い型をしている。

頭が大きく、前足は短く、後ろ足が大きいものの、頭の重さでろくに歩けない。

そして、尾が長の二倍あり……。

四つん這いだとゴーンと前頭部を打ち、逆に手を取って二本足で歩かせようとすると後ろに倒れ、後頭部を打つ。

リティは、どうしようと思いクレスツェンツの兄だと言うヴァーソロミューの義弟のマーティンという人を見上げるが、

「えっと……ヴァーロ兄貴に聞いたが、心ついた時からずっと養い親の背に背負われていたらしい……」

「えと、ずっと……?」

「そうずっと。と言うか、姫は知ってるかな?この國の暗黒時代。ヴァーロ兄貴が生まれたのはその最中で、確か『母さんが『食べ〜』って、殻を叩き割ってくれたんだよね〜』って言ってたはず。多分、そのねぼすけより長してなかったと思うぞ。目は見えてなかったらしいし」

「た、食べ……」

周囲は引きつる。

ちなみにいつのまにか、國王を支える五爵……カズール伯爵を除く……が集まっていた。

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マガタ公爵スティファン、マルムスティーン侯爵エドワード、ファルト男爵リダイン、ヴェンナード子爵ターリズ。

「食べちゃダメ!って伯父上に言われて伯母上が拗ねて……でも時々『お腹すいた〜。これ食べる〜』って言うから、慌ててファルト男爵になったアルフォンゾ叔父って方が狩に行って『これを食え!』って」

自分の先祖のことを聞かされ最年……とは言え、大柄な茶の髪と瞳の青年は唖然とする。

「一応初代は、剛毅で豪快な人だったとお聞きしましたが……」

「大雑把で豪快だったけど、それ以上に破壊力があるのがうちの母だったからねと言ってた」

「はぁ、そうでしたか……」

「でも、伯父上、この華奢な姫に一日中この竜の子供を背負わせるのは酷かと」

珍しいプラチナグリーンの髪と瞳の青年が、いたたまれないと言いたげに告げる。

彼がマガタ公爵スティファン……國王兄弟の養い親の一人である。

「姫に背負わせるわけにはいかないよ。俺が怒られる」

首をすくめる。

「何しろ向こうからの急の書狀だと、姫は二年間はコルセットもハイヒールもじられているんだから。重い荷をずっとなんて無理だろう?」

「だ、大丈夫ですよ。えっとリティ、力持ち!」

「やーめーてー!姫〜!」

周囲は珍しく顔をひきつらせる。

「アルス様は呑気そうだけど、実際キレると恐ろしいから!お願いだから、誰かアレ持ってきて!それと急にルーズリアに連絡を〜!」

「それは済ませました。そうしたら……」

「ただいま帰還いたしました」

セリが真顔で立っている。

「セリお兄ちゃん!マ、ママやお姉様達……」

「あぁぁ、姫〜良かったぁぁ!」

セリは周囲を気にせず、リティを抱き上げるとくるくる回し、ぽふんと抱きしめる。

ちなみにコロンと転がったクレスツェンツは仰向けでバタバタしている。

「急に姿が見えなくなって、向こうで大騒ぎで……急にセナ兄さんに連絡を頂いて、即來たんです」

「……無理矢理、王族専用の鏡を使ったんだよね……後で私が行くかられ替わりにって言ったのに」

セナは悟ったような遠い目をする。

「怪我はありませんか?それに痛いところは?」

「だ、大丈夫でしゅよ。お兄ちゃんは大丈夫でしゅか?」

「良かった〜!もしあったら絞めてる……」

ボソッとつぶやいた一言に、父のカイが青ざめる。

「セリ!誰を絞めるの?」

々失敗してる四兄です。エル兄達はローズ様とラファ兄さんが徹底的に調教するって言ってました!ラファ兄さんは『ナムグの方がなんぼかマシだ!』だそうです」

「……あぁぁ……」

泣き暮れるカイに、ポンポンと肩を叩くのはアルドリー。

「兄さん大丈夫。あの二人は補助で、大きな働き期待してないから!」

「えぇぇ〜」

「あはは、冗談冗談」

「エリオット叔父さんとミカ兄さんも一緒に調教されてるよ」

「頑張れ、ラファ兄」

アルトゥールを見つつ、セリは足元でバタバタしている生きを見る。

「……これ何?玉……竜族だったら黒いよね?白い玉って……」

「クレスツェンツでしゅ。えっと、卵ちゃんでしゅ」

「はぁ?」

リティを抱いたまま、玉を見下ろす。

「卵……もしかして伝説のブルードラゴンの卵……ってないよね。あはは……」

「セリ。その卵が孵ったんだよ。姫が養い親」

アルドリーの一言に、腕の中のを見つめる。

「えぇぇ!姫が養い親?」

「呼ばれたのです。お父さんに、この子を頼むって……」

アルドリーに抱き上げられた白い玉は、

『ママ〜!抱っこ!このにーたんきあい!コロンしゅる、きあい!』

「クレスツェンツ……わがままはやめなさい。柘榴姫はが弱いの。言うこと聞かないと、ポイするよ」

アルドリーはたしなめる。

「姫はお母さんだけど、お前はゆりかごで寢てなさい良いね」

大型のゆりかごが運び込まれ、その中にれる。

『ヤァダァ〜ママぁぁ!』

「えと、クレスツェンツ。ねんねの時間だからね」

セリに降ろしてもらい何とかなだめると、ようやくねむりにつく。

「姫の部屋はこの館に用意するから、しばらくお願いするね?後で、私達の家族も紹介するよ」

「は、はい……でも、ママ……」

「大丈夫。何とか考えるからね」

アルドリーは自分の家族……恐ろしいことに、両親が帰ってきているタイミングに嫌な予を覚えていたのだった。

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