《家庭訪問はのはじまり【完】》第13話 武先生と食事に
「だったら、私なんかでごめんなさい。
武先生は、好きな方、いらっしゃらないんですか?」
「いえ、夕凪先生がいいんです。
俺の好きな人は、夕凪先生なんだから」
またまたぁ…
「武先生、そんな事ばっかり言ってると、いくら私でも、そのうち本気にしますよ?」
全く、武先生がこんな派だとは思わなかったよ。
今まで、接點がなかったから、知らなかっただけ?
「どうぞ。
俺は、本気だから」
ほんっとに、もう!
そこへ瀬崎さんがやって來た。
武先生がオーダーしてくれる。
「瀬崎さん、今日、嘉人さんは1人でお留守番ですか?」
ふと心配になって尋ねた。
「いえ、夏休みなので、今週は実家に泊まりに行かせてます。
あ、先生、今夜、お時間ありますか?
嘉人がいないところでご相談したい事があるんですが」
「今日、ですか?
時間はありますが、今日は飲むつもりで木村先生に乗せて來てもらったので、足がないんです」
「よろしければ、私がお送りしますよ。
10時には上がれますから、それまでワインでも飲んで、待ってていただけませんか?」
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「はい、構いませんけど」
「ありがとうございます。
では、また後ほど。
ごゆっくりお過ごしください」
瀬崎さんは一禮して下がっていく。
それを見送りながら、私はなんだかうきうきしていた。
だけど、武先生は、逆に不機嫌そうだった。
「武先生?
どうかされました?」
私が聲を掛けると、武先生はいつもの優しい武先生だ。
「瀬崎さんの奧様もADHDらしいって言ってたよね?
だけど、お父さんは、隨分、落ち著いてない?」
「そうなんですよ。
この間、禮央くんとの事があって家庭訪問した時も、嘉人くんとの関係も良好で、すごくいいお父さんでしたよ」
「そんな方が、なんでADHDの方とご結婚されたのかな」
そうだよね。
あんなにモテそうなのに、あえてそんな面倒な奧さん選ばなくてもいいのに…
「奧様、ここでアルバイトをされてたそうですよ。
あまりにも失敗が多くてお世話をするうちにって、瀬崎さんがおっしゃってました」
「へぇ、そういうものですか。
まぁ、男は好きなを構いたくなるものですからね」
「そうなんですか?」
初めて聞いた。
お世話をするのって、母本能じゃないの?
「そりゃそうですよ。
完璧なより、ちょっと抜けてるくらいのの子の方がモテません?」
ああ!!
「確かに!!」
私の友人でも、ちょっとわがままな子がなぜかモテるなぁ。
「ま、俺はしっかりしてるように見せるために一生懸命頑張ってる健気な子もツボなんだけどね」
武先生が意味あり気な視線を私に向ける。
それって、私?
そこへ瀬崎さんがお料理を持ってきてくれた。
「オードブルでございます」
うわぁ、綺麗…
ワンプレートに四種のひと口サイズのお料理が並んでる。
「おいしそう…」
食べる専門の私の気分は既に最高調。
くすっ
瀬崎さんが笑った気がした。
もしかして、呆れられた?
ま、いいか。
私は気をとり直してナイフとフォークを握る。
「いただきます」
私は、お料理を頬張る。
うん、おいしい〜!!
幸せいっぱいで、あっという間に前菜を食べ終えてしまった。
その後も、スープ、ポワソン、ソルベ、アントレと続き、どれもとてもおいしかった。
こんなおいしいお店の廚房にってた事があるんだから、瀬崎さんのお料理がおいしい訳だ。
最後のデセール、カフェ・ブティフールもおいしくて、また來たいと思った。
だけど、この店、お一人様じゃ、りづらいからなぁ。
「満足していただけました?」
コーヒーを飲みながら、武先生が言う。
「はい、とても。
すごくおいしくて、幸せな気分になれました」
「くくっ
食べてる時の夕凪先生、本當に幸せそうですよね」
あ、また笑われた…
「いいじゃないですか。
おいしいものは、世界を救うんです!」
「くくっ
また、それは、壯大な理論ですね」
「だって、過去のも戦爭もほとんどが、貧困と飢から起きてますよ?
飽食は世界平和への第一歩です」
「くくっ
そうか。
じゃあ、これから、1年生の平和のために、夕凪先生には定期的に飽食を提供する事にするよ」
「あ、いえ、そういう訳には…」
そんなつもりで言ったんじゃないのに。
「また、デートしてくださいね」
え?
デート?
これ、デートなの?
あ!  また、からかわれた!
「そうですね。
武先生の奢りなら、いくらでもお付き合いしますよ」
私はあえて、揺していないふりをした。
「それは良かった。
じゃあ、明日もデートしようか?」
「は?」
「明日、休みだよ?
ドライブでも行かない?」
「え?」
あれ?
からかってたんじゃないの?
あ、これも、からかってるのか!!
もう!!
「武先生、私で遊びすぎです。
その、冗談か本気か分からない口調で言うの、やめてくださいよ〜」
「全て本気だよ。
俺、夕凪先生に噓を吐いた事はないから」
「またまたぁ。
そうやって、からかうから信用されないんですよ。
私、男の人にあまり免疫がないんですから、そうやって遊ばないでください」
「全然、遊んでないんだけど。
どうしたら、信じてもらえる?」
相変わらず、武先生は飄々としている。
私だけが焦って、バカみたい。
「はいはい。
信じてますよ。
武先生は、私の事を好きなんですね。
とっても嬉しいです」
私は、思いっきり棒読みで答える。
「じゃあ、明日、10時に迎えに行くから」
「は!?」
「デート、するでしょ?」
何、何!?
「しないでしょ!?
武先生、悪ふざけが過ぎますよ」
「ええ!?
  しないの?  殘念」
武先生がわざとらしく、しょんぼりして見せる。
「ふふっ
もう、武先生とは出かけません。
武先生、私をおもちゃにしすぎです」
「そんな事ないのに」
食事を終えたのは9時過ぎだったけど、武先生と他のないお喋りをしてたら、気付けば10時になっていた。
武先生は、代行を呼んでもらい、
「お先に。また來週ね」と帰って行った。
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