《家庭訪問はのはじまり【完】》第16話 電話

翌週は、研修などの出張が続いた。

その間、夜になると、毎日、瀬崎さんから電話があった。

「こんばんは」から始まり、その日の出來事など、他もない話をする。

そして最後に決まって、

「夕凪、おやすみ。好きだよ」

と言われる。

そう、土曜の夜、初めての電話で、

「嘉人がいない時は、名前で呼んでもいい?」

と聞かれて、つい「はい」と返事をしたのが間違いだった。

まさか、呼び捨てだとは、思わなかったんだもん。

瀬崎さんの聲は、程よく低くて、電話越しで聞くと、それだけでドキドキするのに、名前を呼び捨てになんてされたら、どうしていいか分からなくなる。

そうこうするうちに、あっという間に金曜日。

家庭訪問て、いつ?

週末って言ってたけど、今日?  明日?  明後日?

晝間?  夜?

っていうか、ほんとに來るの?

私、どうすればいいの?

好きだとは言われてるけど、返事もしてないし、付き合ってもいない。

でも、うちに來るって、どうすればいいの?

夜10時。

電話が鳴った。

『こんばんは』

「…こんばんは」

『今日もお疲れ様』

「あ、お疲れ様でした」

『うん、今日はめんどくさい會議があってね、ほんとに疲れたよ。

夕凪は?

今日も研修って言ってたけど、どうだった?』

「うん、ちょっと眠かったけど、頑張ったよ」

『そうか、偉い、偉い』

「あ、バカにしてる?」

『してないよ。

頑張った夕凪を褒めてるだけ。

明日、頑張った夕凪にご褒、持ってくよ』

「明日?」

『約束しただろ?

家庭訪問』

「ほんとに來るの?」

『ほんとに行くよ。

夕凪に會いたいし』

「…… 」

『何?  ダメ?』

「ダメじゃないけど… 」

『じゃあ、何時がいい?』

「え?」

『夕凪の都合に合わせるよ』

「じゃ、じゃあ、10時」

『了解。

  明日、楽しみにしてる』

「うん」

『じゃ、夕凪、おやすみ。好きだよ』

「お、おやすみなさい」

はぁぁぁ…

なんで、毎回、電話だけで、こんなに疲れるんだろう。

気づけば、焦って、うろたえて、敬語もうまく使えなくて、思いっきりタメ口だったりするし。

明日、私、大丈夫かな。

心臓が壊れるんじゃないかな。

もう、お風呂にって寢よっ!

明日は早起きして、掃除機をかけなきゃいけないし。

あぁ、でも、明日、うちで何するの?

まさか、そういう事はしないよね?

だって、付き合ってないし、8ヶ月も待つって言ってくれたし。

    人が読んでいる<家庭訪問は戀のはじまり【完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください