《家庭訪問はのはじまり【完】》第18話 2人で料理

「あ…

いえ…

別に、そういう訳じゃ… 」

私は、慌てて否定した。

「夕凪は、ちゃんと仕事頑張ってるんだから、家事なんて、適當でいいんだよ」

「でも、瀬崎さんもお仕事頑張って、子育ても頑張ってますよね?

そういうの、尊敬します」

しかも、あの嘉人くんの子育てだよ?

普通の子育ての3倍は大変でしょ?

「子育ては、全然、大変じゃないんだ。

   いや、大変は大変なんだけど、苦じゃないって言うのかな?

我が子のためなら、ちょっとくらい大変でも頑張れるっていうか、んー、ま、嘉人はあんな奴だから、手は掛かるんだけど、親から見たら、あれでもかわいいんだよ」

「擔任から見てもかわいいですよ」

お世辭抜きでそう思う。

「ほんとに?

嘉人さえいなきゃ、楽なのにって思ってるだろ?」

瀬崎さんは、笑う。

「そんな事、思いませんよ。

正直、何年も教師をやってると、そう思う子が全くいない訳じゃありませんけど、嘉人くんは、かわいいです。

を抑えられない所はありますけど、基本的には素直で明るくて人懐っこいですから」

「先生にそう言ってもらえると嬉しいなぁ」

そんな取り留めのない話をして、11時半になった。

「夕凪、そろそろ晝飯、作ろうか」

瀬崎さんが言う。

「私にも手伝える事、ありますか?」

私は一応言ってみる。

「じゃあ、一緒に作る?

教えてやるよ」

瀬崎さんは微笑んだ。

キッチンへ行き、エプロンを著ける。

瀬崎さんは、ちゃんと自分のエプロンを持ってきてた。

私は、まず、さっき飲んだ湯のみを洗う。

それを瀬崎さんが片付けてくれる。

それから、私は、冷蔵庫の中から、買ってきてくれた材料を取り出す。

「何を作るんですか?」

「暑いから、冷製パスタでも、と思ったんだけど、いい?」

「パスタ好きです!」

私がし大きな聲を上げると、

「くくっ

喜んでもらえてよかった」

と笑った。

恥ずかしい…

パスタくらいで喜びすぎた。

「じゃあ、まずパスタを茹でようか。

鍋に湯を沸かして」

私は言われた通りに、鍋を火にかける。

その間にトマトを刻んで、ツナを水切りして…と、瀬崎さんの指示に従って作っていくと、あっという間にできてしまった。

「すごい!  こんなに簡単にできるんですね」

「やってみれば、簡単だろ?」

「うん。

でも、先生がいいのかも」

私が言うと、瀬崎さんは嬉しそうに微笑んだ。

「じゃあ、授業料、もらっていい?」

「え?」

私が驚いて顔を上げると、ちゅっという音と共に、左の頬にらかなものがれた。

「っ!!」

私は慌てて、顔を伏せる。

「くくっ

貰いすぎたかな?

こっちにお釣りを返そうか?」

瀬崎さんは、指先で私の右の頬をぷにっと突っついた。

返すって、返すって、ええ!?

私は、下を向いたまま、顔を橫に振る。

「やっぱり、夕凪はかわいい。

プライベートを知れば知るほど、好きになるんだけど、どうすればいい?」

そんな事、聞かれても…

私も、瀬崎さんを知れば知るほど、どうしていいか分からなくなるんだけど…

「さ、とりあえず、食べようか」

瀬崎さんに促されて、席に著く。

瀬崎さんは、なんでこんなに簡単に気持ちを切り替えられるの?

私は、もういっぱいいっぱいなのに。

「いただきます」

瀬崎さんが言うから、私も慌てて、

「いただきます」

と手を合わせた。

「ん!?  すっごくおいしい!!」

私が言うと、瀬崎さんは嬉しそうに微笑む。

「よかった」

「このバジルもモッツアレラもすごく合ってておいしいです」

「まあ、トマトとバジルとモッツアレラは、合わないはずがないからね」

あ、確かに。

「これなら、私1人でも作れるかも」

「うん、頑張って」

瀬崎さん、優しいなぁ。

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