《家庭訪問はのはじまり【完】》第19話 デザートとヤキモチ

「あ、そういえば、嘉人くんは、今日、どうしてるんですか?」

「祖父母とデートだよ。

ショッピングモールで、映畫見て、買いしてくるって言ってた。

今頃、嘉人もおいしいもの、食べさせてもらってるんじゃないかな」

それなら、よかった。

お父さんがいなくて、寂しい思いをしてたら、かわいそうだもん。

「じゃあ、宿題の日記3日分のうちの1日は、今日の事を書くのかな?」

「ああ、そうか。

早速、明日にでも書かせよう!」

「嘉人くん、夏休みの宿題は、ちゃんとやってますか?」

「全然やらないから、映畫で釣ったんだ。

ここまで終わらせないと、映畫も行かせないぞってね」

と瀬崎さんは笑う。

偉いなぁ。

お仕事だけでも大変なのに、子供の世話をして、宿題もちゃんと見て。

「じゃあ、ご褒、出そうかな」

そう言って、瀬崎さんが立ち上がる。

「ご褒?」

何の?

「昨日、言ったでしょ?

頑張ったご褒を持ってくって」

「ああ!  あれ、本気だったの?」

お晝ご飯だけでも、十分、ご褒なのに。

「あれ?

信じてなかったの?

心外だなぁ」

そう言って、瀬崎さんは持ってきた紙袋から箱を取り出す。

ん?  ケーキ?

「多分、ちょうど食べ頃だと思うんだよね」

ん?  プリン?

箱から出てきたのは、白くてかわいいココット。

「うちのデザート。

お取り寄せできるようになったから、試食がてら、持ってきた」

プリンかと思ったそれは、表面がこんがりとキャラメリゼされている。

「これ、もしかして、クレームブリュレ?」

私が聞くと、

「そう。

食べてみて」

と一緒に添えられたスプーンを渡してくれる。

「んー!!  すっごくおいしい。

私、クレームブリュレ、大好きでよく食べるんだけど、これは、その中でも1、2を爭うくらいおいしいよ」

表面の砂糖のパリパリとした食と甘さ、下の濃厚でクリーミーなカスタードのバランスが絶妙だ。

「よかった。

商品開発の連中が聞いたら、喜ぶよ」

「でも、殘念だなぁ」

私は、先日、武先生とレストランに行った時の事を思い出していた。

「ん?  何が?」

「私、Accueilアクィーユ大好きだし、また行きたいんだけど、お一人様じゃ行きづらいじゃない?

の子同士だと、どうしても、もうしリーズナブルなお店になるし、武先生はいつでも行ってくれそうだけど、必ず奢ってくれちゃうから申し訳なくてえないし」

私がそう言うと、瀬崎さんは眉をひそめた。

「あのさ、あの學年主任さんって、獨なの?」

「うん。

あんなにイケメンなのに、不思議だよね。

格だって、優しいし、気遣いもできるし、絶対、モテると思うんだけど」

すると、瀬崎さんは突然私の手を握った。

な、何?

「夕凪、今、俺がこんな事言う資格ないのは分かってるんだけど」

「何?」

「その、學年主任さんと2人で食事とかできれば行ってしくない」

「え?」

「俺は、春まで待つって言ったんだし、ちゃんと付き合ってる訳でもないし、

おまけにとんでもなく面倒なコブ付きだけど、夕凪の事は、真剣に好きなんだ。

誰にも渡したくないと思ってる。

だから、その、例え上司でも、デートみたいなのは、心穏やかでいられないというか、心配というか」

まさか…

「……それって、もしかして、ヤキモチ?」

そんなはずはないだろうと思いつつも聞いてみる。

すると、瀬崎さんは拗ねたような口調で答える。

「悪い?

ほんとは、離婚してすぐ、こんな急に夕凪を口説くつもりはなかったんだ。

せめて冬まで待って、嘉人の擔任を外れてからって思ってたのに、あの人と一緒に食事してるのを見たら、居ても立っても居られなくて…

あのまま帰したら、帰りに夕凪を口説かれるんじゃないかとか、最悪お持ち帰りされたらどうしようとか思っちゃって」

「ふふっ  ふふふっ」

なんか、かわいい。

それに、なんか嬉しい。

そんなに想ってくれてたの?

「なんだよ。夕凪、笑いすぎ!」

「だって…

ふふふっ 」

私がなおも笑ってると、瀬崎さんは立ち上がって、私の隣に立ち、肩に手を置いた。

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