《家庭訪問はのはじまり【完】》第98話 瀬崎幸人編 離婚後に

もともと、ちゃんとした資格も持たないフリーターだった彼が選べる選択肢は1つしかなかった。

その夜、妻は実家に帰り、3日後の日曜、離婚屆に妻のサインをもらって、俺一人で役所に提出した。

當然、嘉人の親権は俺が持つ。

その夜、俺は嘉人に離婚した事を説明した。

嘉人には、金曜の朝の段階で、「ママはもう帰らないかも」と言ってあったせいか、それほど取りす事も、泣く事もなかった。

それどころか、嘉人はとんでもない事を口にする。

「僕ね、金曜日に夕凪先生にお願いしたの。

『僕のママになって』って」

「はっ!?」

俺は驚いて思わず聞き返した。

「そしたらね、夕凪先生が僕のママになるには、パパのお嫁さんにならないとダメなんだって。

だからね、夕凪先生が僕の先生じゃなくなったら、パパのお嫁さんにしてあげて」

これは、どういう事だ?

俺は、今、嘉人に泣かれることを覚悟して話した。

だけど、嘉人は泣くどころか、自分で新しい母親を見つけて、俺の代わりにプロポーズしてきた?

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「嘉人。

嘉人は、ママに帰って來てしいとは思わないのか?」

「うーん、ママは好きだけど、夕凪先生は、もっと好き」

母親よりも先生が好きって…

母親が悪いのか、先生が良すぎるのか。

確かに、魅力的な先生ではある。

だけど、彼の何がこれほどまで、嘉人の心を惹きつけるのか、俺は不思議で仕方がなかった。

そして、翌日、嘉人は友達にけがをさせた。

昨日は何でもないような顔をしてたが、やはりどこかにイライラの種を抱えていたのかもしれない。

帰宅してすぐに嘉人から聞いて、そのまま菓子折りでも持って謝りに行こうと思ったが、夕凪先生がうちに來ると言うので、ひとまず、ちゃんと話を聞いてからにしようと、思い留まった。

俺は夕飯を3人前作る。

先生にもご迷を掛けたんだから、お詫びとお禮を兼ねて、食事くらいはご馳走したいと思ったんだ。

ハンバーグを焼きながら、付け合わせの野菜を切っていると、玄関のチャイムが鳴り、夕凪先生がいらっしゃった。

嘉人が食事にうが、先生は遠慮して帰ろうとする。

俺は手を止めて、玄関に行き、説得を試みた。

夕凪先生は、し困った顔をしながらも、応じてくれた。

食事をしながら思う。

ああ…

嘉人の見る目は確かだ。

これは、母親としてだけではなく、としても魅力的だ。

人ときちんと向き合えて、的にならないのにに訴える話ができる。

ただ叱るのではない。

「大丈夫」「信じてる」「一緒に頑張ろう」

こんなに前向きに話されたら、期待に応えたくなる。

そのくせ、嘉人が「パパのお嫁さん」というワードを出した途端に頬を染めて、この上なくかわいらしい。

だから、俺は嘉人に乗っかって、「親子共々よろしく」と言ってみた。

その直後、彼は耳まで真っ赤にしてうろたえる。

これ…  すっごくかわいい。

俺が「かわいい」と口にすれば、さらにうろたえて、目を泳がせる。

俺、昨日まで、に幻滅してなかったか?

なのに、なんでこんなに心惹かれるんだろう。

嘉人がいろいろ言うから、先観がってるのか?

自分でもよく分からないが、ものすごく気になるのは確かだ。

俺は、彼を見送り、思う。

俺や嘉人がどんなに好きでも、擔任の先生である以上、好意はれてもらえないだろう。

あと數ヶ月、自分の気持ちと向き合って、本當に彼だと思えたなら…

くのは……  冬…かな。

擔任を外れて、全く接點がなくなれば、口説く事も出來ない。

かと言って、今、けば、確実に斷られる。

冬……

俺は、頭の中で今後の行計畫を練り始めた。

───   Fin.  ───

夕凪の転任先の學年主任、松井音子まついねね先生と武先生のことを書いた短編のスピンオフ作品が、他サイトで佳作をいただきました。

『33歳の初

近日、公開予定です。

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