《婚約者が浮気したので、私も浮気しますね♪》12
突然笑い始めたヨハン様に驚いていると、シャルル様が銀水晶のペンダントを前に差し出しました。
これは攻撃魔法を出すおつもりですね。
「どうして!?どうしてだと!そんなもの決まっているじゃないか!ドロテアが好きだからだよ!分違いで手にれることもできないからな!こういう手段に出るしかなかったんだよ!力さえあれば何でもできる!勇者にだって勝てるんだ!」
まあ、なんという橫暴な考え方なのでしょうか。私の知っているヨハン様はこのような方ではいらっしゃいませんでした。もっとお優しくて心配りのできる方でしたのに、とはこうも人の心を変えてしまうものだというのでしょうか?
「Mecul acigam a tnus atcaf ied inimod enimon ni elanigiro erodo xe tse enidutirama ni snarugluf helas helas」
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魔法がヨハン様を包み込みます。魔法での攻撃は魔人には有効ですけれども、これはやりすぎなのではないでしょうか?魔人の部分だけを削除するのではなく、これではヨハン様そのものも消し飛んでしまいます。
思わずシャルル様の服を摑んで顔を視ますが、そのお顔は真っすぐにヨハン様に向けられていました。
「ドロテアァァァァ」
「ヨハ、ン」
ドロテア様が勇者様に抱き留められて涙を流していらっしゃいます。
責任の強い方ですから今回の件に何か責任をじてしまっているのかもしれませんね。
けれど責任というのでしたらすべては私にあると思うのですがどうなのでしょうか?
そもそも私と婚約をしなければこんなことにはならなかったのですし、もっとも婚約をけれたのはヨハン様ですので、そこの部分はなんともいえないのですが…。
そんなことを考えている間にヨハン様が消滅してしまいました。これでは魔王の報を聞くことが出來ませんね。
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「しまった、うっかり消滅させてしまいました。あまりにも強大な敵だったので手加減が出來ませんでしたね」
「……そうですか」
勇者様、何信じ込んでるんですか?私にはわかりますがうっかりなどではありませんわよ?絶対にわざと消滅させたに違いありませんわ。
せっかくの魔王の報収集の機會を自ら逃したのですわよ。
「シャルル様、あの…」
「レイン、話しはあとで」
あとで教えてくれるのでしょうか?
さて、とりあえず脅威は去ったと言うべきでしょうね。部屋はすっかりボロボロになってしまいましたので移る必要がありますけれども。
「とりあえず魔人は片付きましたし、お部屋を移しましょう。準備をさせますのでいったんシャルル様のお部屋に皆様で集まってはいかがでしょうか?」
「そうですね」
「そうさせていただきますわ」
「わかった」
4人で移している間にも、私やシャルル様のもとにはたくさんの巫や神、司祭様方がいらっしゃいます。
ああ、壊れた樞機卿のお部屋の修理代を考えますと頭が痛くなってしまいますわね。
あと今回の件で神殿を下がりたいと言い出す巫の多い事…。戦闘に參加しない子達ですから、危険が近にあると知って恐ろしくなったのでしょうね。
明日から説得の日々が始まりそうで恐ろしいですわ。
それにしても勇者一行に隨行している間に、最強の神にまでなっていたヨハン様には、神殿にいる神の防魔法はあっさり突破されてしまったようですわね。
神殿にいる神にも、もっと実踐訓練を積んでもらわなければいけないのかもしれません。
私たちがそのように執務に追われている間、勇者様とドロテア様はなんだか甘い雰囲気になっているようでございます。
「ドロテア王、もし魔王の善悪を確かめることが出來、もし悪であった場合討伐することになるが、その暁には結婚をしてほしい」
「勇者、いいえゲラルド、その言葉をずっと待っていました」
…結婚、結婚ですかぁ。2度も婚約破棄になった私には遠い話しですわね。
あ、でも確かシャルル様が私と結婚したいとか言っていたような?いろいろあって忘れておりましたが、プロポーズされたのではなかったかしら?
ふと書類越しにシャルル様を視ますとバチリと目が合ってしまい慌てて逸らしてしまいました。
けれども婚約してもろくなことになりませんし、主に浮気をされてしますし、婚約などしなくてもいいのではないでしょうか?
當面私の代わりになりそうな巫長も現れそうにありませんし、勇者様の蘇生リザレクション要員は私以外に居そうにありませんものね。
「ああそうだレイン」
「は、はい!」
いきなり聲をかけられてしまいました。
「婚約はやはり白紙撤回になったようです」
「そうですか」
巫長の婚約者が魔人になったなんてそれは記録から削除したいですものね。
「そこで、新しい婚約者なのですが」
「それなのですが」
「私になりました、拒否はしませんよね」
「…はい?」
「承諾してくれて嬉しいです」
いやいやいやいや、疑問形ですから。
「待ってくれシャルル樞機卿様、今のは疑問形だったようにじるんだが」
「私もそう聞こえましたわ」
よく言ってくださいましたお2人とも!
「いいえ、承諾してくださいましたよ」
「いやしかし」
「けれども」
負けないで2人とも!って、私も頑張らなければなりませんわね。
「私も、承諾した覚えはございませんわシャルル様。だって、私の婚約者は皆様浮気なさるんですもの、もう懲り懲りですのよ」
「私は浮気はしませんよ」
「ふ、夫婦になった場合の巫長とその伴の苦しさは聞き及んでいらっしゃいますでしょう!」
「最後までしなければいいですよ」
「んなっ、何を言っていらっしゃるんですか!勇者様達の前ですのよ!」
「では後程2人っきりになった時にゆっくりと」
助けて勇者様!ドロテア様!
「嫌がっているのではありませんか?」
「そうだな、ここはひとまず落ち著いてみてはどうだ?」
「チッ」
舌打ち!?今舌打ちしましたよねシャルル様!
「わかりました、婚約の件は改めて話し合うことにいたしましょう」
よかったです。
その後、王宮への連絡やなんやらで結局朝を迎えることになってしまいました。
いつものように水行へと向かったのですが、今回はドロテア様も同行なさるとのことですのでご一緒いたしました。
「…っ冷たい」
「私はもう慣れてしまいましたわね」
「そうですか。……巫長はヨハンの気持ちに気が付いていたのですか?」
「當人より聞かされておりましたので」
「そうですか。…苦しくはなかったですか?」
「最初のころは苦しかったようにも思いますが、だんだんと興味がなくなってきたと言えば、言い方は悪いのですが、どうでもよくなってきてしまいまして、ここ最近では話も適當に聞き流しておりました。それに、半年前の告白の現場を見ておりましたので…」
「見て、いたのですか」
「はい。申し訳ありません。あの時止めていれば今回のようなことにはならなかったのに」
「いいえ、あの場で魔人が暴れることの方が問題でした」
「違和はじていたのですが、ゆえに盲目になっているだけだと思ってしまって…」
「私もです。勇者にこの想いを気づかれてはいけないという思いだけで承諾してしまいましたが、今思えば淺はかなことをしてしまいました」
パシャリ、と水しぶきが上がる音がします。
「魔眼という力を持つ魔人もいると聞きますし、きっとその魔眼に囚われていたのかもしれませんわね。だって、あの後のドロテア王様は幸せそうとはいいがたかったですもの」
「そうですね、半年の間苦しくじていました」
「そうなのですか」
パシャパシャと水しぶきが上がり、髪がゆらゆらと水面に浮かんでいきます。
「……巫長は、シャルル樞機卿と人となって苦しい思いはしていたのでしょうか?」
「いいえ、確かに恥ずかしい思いは何度かしましたが、苦しい思いはしてこなかったように思いますわ」
「そうですか、やはり同じ人でも心が通い合っているとこうも違うものなのですね」
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
「心が通い合っている、ですか?」
「そうではないのですか?私の見ている限りですが、シャルル樞機卿様と巫長は大層仲がよろしいように見けられます」
「そう、でしょうか」
「ええ」
「私はシャルル様は義務で私の人役を買って出てくれていたのだと思っておりましたの」
「そんな、まさか」
「けれども先日それが誤解だったと判明いたしまして、それでその、プロポーズもされたのですが……、私の立場を考えますとシャルル様には我慢していただくことになりますでしょう?そうしますと自ずと浮気に発展するのではないかと思いまして、そう考えるとプロポーズをおけするのにためらいがあると申しますか…」
「なるほど、巫長の能力は確かに貴重なですからね。蘇生リザレクションも時間経過とともに難しくなってきます。それに失った部位も復活させるとなると、さらにというところですものね」
「私と同じレベルの者が現れればいいのですが今のところその気配もありませんので」
「難しい問題ですわね」
「はい」
そこで私たちは水行を終えて部屋まで戻って著替えをすることになりました。今日は王宮に事態の報告をすることになっております。
王宮につきますとすぐさま國王陛下への謁見が始まりました。
昨晩起こったことの詳細を伝え、無事に魔人を討伐したことをお伝えいたしましたら、褒を與えてくださるとのことで、私は迷わず神殿の修繕を要求いたしましたら、皆様に苦笑されてしまいました。
なぜでしょうか?
勇者様は魔王が邪悪な存在の場合の討伐と、その討伐が終わったらドロテア様を娶りたいとおっしゃいましたし、ドロテア様も同じような容でいらっしゃいました。
問題はシャルル様です。なんと、私を嫁にしいとおっしゃったのです。何を考えていらっしゃるのでしょうか。
「失禮ながら、國王陛下の2度にわたる勅命での婚約は2度とも白紙撤回になってしまいました。ですのでこの際、婚約などまどろっこしいことをせずに結婚をさせていただきたいのです。ああ、けれどご安心ください。巫長の資格を奪うような真似は致しませんよ」
「な、な…何を言って」
「レイン、私は本気です。大丈夫ですよ私は浮気なんてしませんから」
そう言う問題じゃありません。せっかくのご褒ですのにそんなことに使わないでくださいませ。
「よかろう」
よかろうじゃないでしょう!國王陛下何助かったみたいな顔をしてるんですか!全く持って助かってませんよ!主に私が!
結局、そのまま私は神殿に戻りシャルル様と急的措置による結婚を行うことになりました。指、いつの間に用意していたんでしょうね。ものすごく気になって仕方がありません。
結婚式が終わりますと初夜を迎えるわけなのですが、巫長に就任している私には関係ないことですよね。
か、関係ないことのはずです。
「あの、この勢はいったいどういうことなのでしょうか?」
ベッドの上に組み敷かれている狀態なのですが、いったい何が起きたのでしょうか?
いつものようにお茶を頂いていたら眠くなってしまい、ベッドまで運んで下さるというお言葉に甘えて、気が付いたらこうなっておりました。
「シャルル様?」
「大丈夫ですよ、いつものように最後まではしませんから」
「いつものようにってんんっ」
いきなりキスされてしまいました。もうが慣れてしまっていてけれてしまう自分のおバカさ加減に呆れてしまいます。
そう考えていると手を上の方で纏められて、しゅるっと何かで結ばれてしまったような覚がしました。
「ゃ、なに?」
「暴れないように、念のためですよ」
「へ?」
上を見れば手が絹の布で結ばれていました。これはいったい何事なのでしょうか。
「ああ、足も結んでおきましょうか」
「やぁっ」
足を開かれて片足ずつ折りたたまれて絹紐で結ばれてしまいます。抵抗しても強い力で抑え込まれてしまいましてあまり意味がなかったようです。
すっかりあられもない格好になってしまいましたが、スカートで足が隠れているのがせめてもの救いというものでしょうか。
「いい格好ですよ、レイン」
「シャルル様、酷いです」
こんな格好にさせられるなんて今までありませんでした。
「抵抗されては困りますからね」
「抵抗ってなにをなさっきゃぁっどうしてスカートの中にお顔をれて、やっなめちゃだめですっ」
太ももの部分を思いっきりなめられてしまいました。恥ずかしくて死にそうです。夫婦になったとはいえこれはもう恥ずかしさが天元突破しているのではないでしょうか。
「甘いですよ」
「そんなはずありませんから、顔をどけてください」
「そうですね」
あ、あっさり顔を出してくださいました。よかったです。
「この可い足だけでも十分に楽しめますからね」
「へ?きゃっくすぐったいですわ」
「おかわいらしい足です」
足にさわさわとれられ、私はくすぐったさでをよじってしまいます。そうしますと自然にスカートがずれてしまって、足がになってしまいました。
「あ、あの、スカートを戻してくださいませんか?」
「おや、自分でしたのに?見せたいのかと思いましたよ」
「そんなはずありません!お願いですから意地悪をしないでくださいませ」
「意地悪なんてしてませんよ。これはむしろ親切です」
「どこがですかっ」
「もっと恥ずかしい思いをしたら暴れてしまうかもしれないでしょう?暴れてもしこのに傷でもついたら大変ですからね」
「そ、そんなことしなければいいではありませんか」
「いいえ、今夜は初夜ですから」
にっこりと、そうにっこりとシャルル様はほほ笑んで私の足の指先をパクリと口に含んでしまわれました。
その後のことはとても口にはできませんが、とても恥ずかしい思いをいたしました。
翌朝の水行の際にに殘った縛った跡やキスマークにシーラが目を見開いて驚いたことは言うまでもありません。
ともあれ、浮気されたから浮気していた私の人生ですが、これでいったん一區切りついたと言うべきなのでしょうね。最後までしなくてもあんなに恥ずかしい思いをするなんて思いもよりませんでしたし…。
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