《婚約者が浮気したので、私も浮気しますね♪》番外 東の魔ディアナ

私は東の魔、と呼ばれている。最古の魔王とも言われているわ。もう何千年生きたかわからない私の楽しみと言えば、人間の営みを遠くから観察するぐらい。あとは、たまにちょっかいをかけることぐらいかしら。

ある日、森の端に赤子の泣き聲が響いているとじた時、私は翌朝まで生き殘っていたら拾ってやってもいいかもしれないと思ったのよね。

もっともこの森には魔がたくさんいるからそんな可能はほとんどゼロに近いんだけど、ね。

なんて思っていたのに、赤子は一晩生き殘っていたわ。あの時は流石に驚いたものだったわ。あの赤子、アドルフと名付けたあの子の能力の高さに新しい魔王を誕生させることが出來るかもしれないと思ったのも確かよ。

けれども、人間を育てていくというのは私のような存在にとっては中々に刺激的な日々だったわ。魔人があたふたしながら世話をするのを見るのはおかしかったし、私になつき始めてくるのを見るのもなんだかおもしろかったもの。

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そうして私はアドルフに文字を教え、計算を教え、魔法を教えたわ。

才能があったのよね、きっと生き殘っていたのも無意識に魔法を発していたせい。

でも殘念なことにアドルフが得意なのは防式や治癒魔法などの神聖魔法……今はなんていうのかしらね?とにかく神聖魔法が得意だったわ。魔王にするにはしもったいないのではないかと思い始めたのもそのぐらいの時期だったかしら?

「なあディアナ、人間っていうのはどういうものなんだ?」

「魔人よりも劣っている存在すぐ死んでしまう存在、よ」

「私は人間なんだろう?すぐに死んでしまうのか?」

「そう、ね。私よりも先にこのままでは死んでしまうわ、ね」

「そうか」

いつのころからか、アドルフは外見の変わらない魔人や私と、どんどん外見が変わっていく自分に悩み始めていたようで、人間に興味を持ち始めていたわ。

だから私はアドルフを人間に託すことにしたのよ。神殿に連れていけば、その才能と持っている彩からすぐに高位の地位に就いたのだとこっそり人間に紛れ込ませた魔人から報告があって、し寂しく思ったのは事実ね。

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やっぱり人間は人間の中で生きていく方がいいのかしら。一時の事だったけれども、楽しい時間を過ごせたからいいとしましょうか。

そう思っていたのに、話はしだけおかしな方向になってきたのよ、ね。

あの子は、アドルフは私の元に戻って來たわ。この世のすべてに絶したような顔をして、ね。

「なんて顔なの、よ」

「私の大切なあの子が國に奪われてしまいました。何とか取り返す方法を教えてくださいませんでしょうか」

魔人から報告はけていたけれど、やっぱりこうなってしまうの、ね。やはりアドルフには魔王になる才能があるのね。私の下で育ててしまったからかもしれないわ。

「ないこともないけど、ね。危ない、わ」

「かまいません!」

私は手のひらを上にかざして一つの種を召喚する。それは魔王になるための種で、適合しなければ化けになって死んでしまうのみ。

「種、よ。貴方が耐えられれば願いは葉う、わ」

アドルフが耐えられるかは賭けだったけれども、アドルフは耐えきったわ。それほどまでにあの子が、ミストという子がしいのでしょうね。

一週間、種の発する魔力と自分の中の魔力とが混ざり合いぶつかり合うのに耐えながら、アドルフは魔王となったわ。

「おめでとう」

「ディアナ、この種は魔王になる種ですね」

「そう、よ。新しい魔王の誕生、よ」

「……そうか、古の魔王、緑の魔と呼ばれた魔王が貴かディアナ!」

「そう、ね。そう言われたこともあったわ、ね」

「しかしこれでは神殿に戻れませんね」

「じゃあこれをあげる、わ」

私は魔人に與えている抗魔の力が宿っている耳飾りをアドルフに差し出す。これには私に報が流れ込んでくる式も組み込まれているからきっともうしばらくは退屈しないで済みそう、ね。

その後のアドルフのきはまさしく人間臭いものだったと思うわ、魔人や魔王ならば力でどうにかしてしまえばいいのに、回りくどいことをして、面倒ではないのかしら、と何度首を傾げたかわからないわ。

そうしているうちに、アドルフは魔人捨駒を作り出してミストを手にれようとしているけれども、あの子は気が付いているのかしら?最初の魔人に選んだ男はミストがしく思っていたという嫉妬から、破滅させるために敢えて魔人にしたっていうことに。

気が付いているとしたら救われないわ、ね。

そうして案の定魔人にした子は暴走してアドルフに殺されてしまったようね。これは私の魔人からの報。アドルフったら自分で抗魔の備わっている裝飾品を作ってしまったからのぞき見が出來なくなってしまったのよね。

殘念に思いながら魔人の報告を聞いていると、アドルフがミストにいつまでたっても自分が魔王だということを明かしていないということを聞かされて、私は不安になったのよ、ね。

もし魔王であることを拒絶されてしまったとき、アドルフはきっとまた絶してしまうかもしれないもの。

だから私はミストにお手紙を書くことにしたのよ、ね。

ミストは私のお手紙に素早く反応してくれたわ。いい子よね。私は久しぶりに森を出て行くことにしたわ。治癒魔法をけるためにわざと自分で傷をつけるのは久しぶりの覚だったわ。

「南の通りのカフェでこの後待ち合わせでいいかしら、ね?」

「ええ」

「じゃあまっている、わ」

そう言って私はミストから離れたけれども、ミストの治癒魔法はアドルフ以上の才能があるわね。なるほど、巫長になるわけだわ。なんでも蘇生を一人で行えるうえに気絶もしないのだと聞くし、保有魔力はもしかしたらアドルフと並ぶのではないかしら?

カフェについてしばらくするとミストがやって來たので人払いと防聴の結界を張る。

「大丈夫、よ。食べたりしないから安心して、ね」

「はい。…今日はどのようなお話でしょうか?」

「アドルフの事、よ。あの子まだ貴に言ってないでしょう?」

「言っていない、とは?」

「あの子、ね。生まれてすぐに私の住んでいる東の森に捨てられたの、よ。どうしてだかわかる?」

「いいえ」

「母親の、ね。お腹を食い破って産まれて來たんですって」

「え?」

「その話しを聞いて、ね。面白いから拾ったの、よ」

「才能があると思ったのよ、ね」

「才能ですか?」

「そう。魔王の才能、よ」

「なっ!?」

ガタン、と立ててミストが立ち上がった。

驚くのも仕方がないわよね、魔王の才能なんて神の長、樞機卿と真逆ともいえるもの、ね。

「シャルル様は樞機卿様でいらっしゃいます。魔王の才能などおっしゃらないでくださいませ」

「魔法の才能ももちろんあったわ、よ。だから神殿に帰したんだし、ね」

「……そ、そうですわよね」

「でも、ね。魔王になったのは最近なの、よ。ほんの5年ぐらい前、ね」

「シャルル様が魔王だとおっしゃるんですか?」

「そう、よ」

「樞機卿様が魔王など聞いたこともありません。そもそも魔素をどうやって隠しているというんですか」

「魔素を押さえる道に著けているの、よ。最初は私が與えたものだったけど、今は自分で作ったものを使ってるみたい、ね」

「そんな…。ありえませんわ。樞機卿様にまで上り詰めておきながら魔王になるなど意味が分かりませんもの」

「本當の事なのに、ね」

そこで私は結界をといて「ふう」と息を吐き出す。

「あとはアドルフに聞いてみると良いわ。また、ね」

そう言って私はその場から離れて東の森に帰ることにしたわ。

それからしばらくしてミストからお手紙が屆いたわ。私の魔力の殘滓をたどって來たみたい。やっぱり中々の魔法の使い手のよう、ね。

そこから私とミストは々なことを話したわ。アドルフの事、魔王の事。

ミストはきっとアドルフのことをれてくれるだろうけれども、人間としての立場があの子たちの妨げになってしまっているわね。

私だったら滅ぼしてなかったことにしてしまうのだけれども、あの子たちは優しすぎるからその方法はとらないみたいなのよね。

々と話した結果、私の魔人がミストを攫うということで決著がついたわ。一番の強面を使いに出すことにしたわ、こういうことは印象が大切だから。

そうして、まずミストが私のもとにやって來たわ。

「來たの、ね。いらっしゃい」

「お邪魔いたします」

「ゆっくりしていって、ね」

「シャルル様が迎えに來てくださるまで、お世話になります」

「その後も自由にいてくれて構わないの、よ」

「いいえ、シャルル様とも話し合ったのですが、世界をめぐってみたいと思っております。今まで國の中、それもほとんどを神殿という狹い空間で暮らしていた私ですから、世界を知りたいのですわ」

「そうなの、ね」

また退屈しない日々が過ごせるかしら?

* * *

それからの日々は驚きの連続だった、わ。まさかミストが料理の一つもできないとは思わなかったのよ、ね。

まさに箱り娘といったところかしら。卵を割る時の失敗なんてあまりにも典型的で思わず大笑いしてしまったわ。

どうやったら卵を割るだけなのに発させるように顔にまで飛び散らせることが出來るのかしら?

洗濯もできないし、この子、ミストは本當に巫としての技能しか持っていないのね。

だから私も知っている限りの知識を分け與えていく日々は、アドルフを育てて居る時とはまた違った覚があって楽しかったわ。

「ディアナ様のようにうまくえませんね」

「こういうのは、慣れ、だから」

「慣れですか。まあシャルル様がいらっしゃるまでにはある程度できるようになって見せますわ」

「そう、ね」

そう言えば、この子はいつまでアドルフのことをシャルルと呼ぶのかしら?まあ通じるから気にしていないのだけれど、いつかこの子も私が名付けたアドルフの名で呼んであげてしいものだわ。

「でも、この一年で大分うまくなってきた、わ」

「本當ですか!よかったぁ。卵も焦がさず調理できるようになりましたものね」

「そう、ね。ふふふ、最初のころは本當に可笑しかったわ、あんな風に卵を発させる子、はじめてだったもの、ね」

「も、もぅっ忘れてください」

ふふふ、やっぱりミストは楽しいわね。

ここ最近になってだけど、ミストは長もびたし付きもよくなってきているように思えるわ。やっぱり蘇生の影響で長がわずかに阻害されていたのね。

蘇生を何度もするなんて、普通の巫長でもそうそうしないものだもの。今の勇者は隨分と命知らずなものだわ。それとも、ミストがいたから無茶をしているのかしら?

けれど、ミストがいなくなってしまったから無茶が出來なくなってしまったわね。普通蘇生は數人の巫子が祈りを捧げて半日かかるような式だもの。

そう考えると、この子にかかっていた負擔はどれほどのものだったのかしらね。々なものを抑制されて長させられていたのかもしれないわ、ね。

* * *

そうしているうちにミストがきてから三年という月日が経過したわ。魔の退治はひと段落ついたと偵察に向かわせている魔人から報を手したしもうすぐアドルフもこっちに合流するでしょうね。そうしたら二人でここに住んでくれるかしら?それともどこかにいってしまうかしら?それはし寂しいかもしれないわ、ね。

「アドルフ遅いわ、ね」

「きっともうすぐいらっしゃいますわ」

「そういえば、いつまでシャルルと呼ぶのかしら、ね」

「え?」

「神殿の関係者ではなくなるのだから、本名で呼んであげたほうが良いのではない、の?」

「あ、そういえばそうですね。えっと、アドルフ様ですよね」

「そうね、そのほうがいい、わ」

アドルフは私があの子に名付けた名前だもの。

「ねえミスト」

「なんでしょうかディアナ様」

「あの子のことをよろしく、ね」

「え?」

「私は、駄目だったから、あの子の依存先にはなれなかったから、ごめんなさい、ね」

「あ…。大丈夫ですわ。これからは私がいますもの」

「そう、ね」

「それに私も巫長ではなくなりましたので、白い結婚の枷が外れましたし、子供もいっぱい作ってみせますわ」

「そう」

「きっと大家族になってディアナ様も退屈なんてしてる暇はありませんわ」

「そう、ね。そうだといいわ、ね」

「子育てって大変なんだそうですよ、それこそ寢る間もないぐらいだそうです」

「それは困るわ、ね」

「ふふふ、魔人の方々にも協力していただきましょうね」

「それがいいわ、ね」

子育てをまたできるのね。それもいっぱいだなんて、楽しそうだわ。

「來たわ、ね」

「はい!」

「いってらっしゃい、な」

「いってきます」

アドルフもやっと來たみたいだし、これからどうなるかはわからないけれど、楽しくなればそれで構わないわ。

* * *

「ああっ私のお菓子!」

「早い者勝ちだよー!」

「まって~!それとっちゃだめぇ」

「こぉらぁ!みんな大人しくしなくちゃダメなのよ」

あの後、アドルフとミストは魔の殘黨狩りと言ってしょっちゅう家を空けることが多いけれど、ちゃんと帰ってきてくれるし、なによりも我が家には今こうして子供の聲が響くようになって私は退屈な生活と無縁になったわ。

「こら、喧嘩しちゃダメ、よ」

「「「「はぁい」」」」

この子供たちが人間の世界に戻っていくのか、それとも魔人になるのかはわからないけれども、その決斷をするまではまだあと數年の猶予があるもの、ね。

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