《星乙の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~》11. 案件終了_2
「お疲れ様でしたー!」
ご近所の居酒屋で、桐木先生と榊さんと私と、何故か店にいた森林判事との4人で、中ジョッキを天にむかって掲げる。一気に飲み干して「味しい!」と笑ったら、榊さんが目を真ん丸くして「男前ですね」と呟いていた。森林判事は「いいねーいいねー飲め飲め」と手を叩いて喜んでいる。
「ここ、お魚が味しいから」
「なんか普通に座ってるけど、なんでお前がいるの」
案の定、森林判事に桐木先生がつっこむと、榊さんが手を挙げた。
「僕が森林先輩に連絡しました!」
「榊、お前クビな」
「森林先輩には逆らえないんです~」
大學のゼミの先輩後輩らしい。「刺が食べたい。イカ食べたい」と言ってオーダーしてる森林判事の前で「俺と森林、どっちの言う事が優先なんだ?ああ?」「どっちもです~」と師弟がめ始めていた。
それを橫目に、オーダーを終えた森林判事が小聲で手招きする。
「ちょっとちょっと、梓ちゃん」
聞こえないので、移して顔を寄せた。
「何ですか?」
「梓ちゃんてさぁ、桐木の事どう思ってんの?」
「え?あ、はい、とても尊敬してるし、謝してます。顔は時々まじやべーなって思うことありますけど。ほら今みたいに」
「いや、そうじゃなくてさー……」
そこに榊さんが割り込んできた。
「森林先輩、桐木先生が凄い顔で睨んでるんで、ちょっと離れてください」
そして、榊さんが私の隣に座る。どうやら、上司一番、先輩二番の順番になったらしい。
向かいでは追い払われた森林判事と桐木先生が喧嘩をはじめていたが、じゃれてるだけだろうから放っておいた。
「林原さん、じゃなかった梓さん。本當にお疲れ様でした。僕もとても勉強になりました」
「とんでもないです。いつもありがとうございました」
二人でペコペコ頭を下げる。
「僕、桐木先生みたいに企業法務専門って思ってたんですけど、ああいう家事も遣り甲斐ありますね」
「………………え?」
「いや、民事とか家事なんて初めての案件だったから、本當に凄く勉強になって……あれ?梓さん?」
「ポカーンとしてるけど、どうした?目を開けて寢てるのか?もう酔っぱらったか?」
私の顔の前で、桐木先生が大きな手をひらひらさせていた。その手を摑んで私は訊いた。
「桐木先生、質問していいですか?」
「質問容によっては相談料もらうぞ」
「わかりました、払います。桐木先生はいつもは企業法務専門なんですか?なんで私の依頼を引きけたんですか?」
その場の全員が沈黙した。
「何この子、鈍にぶ……」
「これだけ特別扱いされてもわかりません???」
「榊くん、お願い黙って。本當にクビにするよ?ね?」
「わかりました。僕はあと100日黙ってます」
「100日……?」
「何この子、鈍にぶ……」
森林判事が同じことを2回繰り返していた。
終電が、と言ったのに二軒目にも連れていかれ、泥酔した森林判事に「祝儀の前払いじゃー!」とお札をねじ込まれてタクシーに乗った。
翌朝の土曜日、二日酔いの私は、ベッドの上でたくさん泣いた。
全部終わった。全部。
それきり、桐木先生と連絡をとることはなかった。
多分、私は桐木先生に惹かれている。だからもう會えないと思うと辛くて苦しかった。
引越したり、実家に帰ったり、友人と會ったりしていると、時間はあっという間に過ぎていった。そして、離婚から3ヶ月とし経った頃、鳥居坂法律事務所から著信があった。
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
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