《星乙の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~》小話 裁判より

【裁判より】

(【07】における東京家裁の廊下での緒話)

東京家庭裁判所、法廷141から廊下に出る。

今日の裁判は後味が悪かった。

産分割調停で兄弟が対立。結局、そもそも言書が有効かどうかの訴訟となった案件だった。泥沼化した相続爭いで兄も弟も家庭が崩壊している。金は簡単に人間関係を変えてしまう。たとえ額であっても。

合同庁舎14階の廊下の窓から霞ヶ関の高層ビル群をしばらく見て、深呼吸して気持ちを切り換える。切換え大事。これ大事。

判事補から判事になり、仙臺地裁から東京家裁へ転勤してきた。地方裁判所と家庭裁判所の違いにはじめは戸ったが、ようやく慣れてきた。裁判室に戻って早くこの黒い法服をごう。そう思いながら廊下を歩いていると、どう見ても「損害賠償請求の相手方ヤクザだな」と思うような男と遭遇した。お前は柱か!と言いたくなる長。かといってヒョロヒョロじゃないから高そうなスーツも著こなす格好つけ野郎。こんな奴、俺の記憶の中ではあいつしかいない。

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俺、森林樹いつきの司法修習同期、弁護士・桐木敬也きりきたかや。

桐木の隣に可の子を見つけたので聲を掛けたら、依頼人だと言う。企業買収や事業承継の法務相談を専門にして、民事・刑事も扱わない桐木が家事事件の代理人?

分野が違いすぎて、どう考えてもこのこと自が大事件だったので、廊下の隅で直接聞いた。

「お前が家事ってどういうことだよ」

行きで」

「案件は?」

「調停離婚。旦那が不倫して子供が出來た。謝料請求する」

あの可い子、人妻?しかも旦那が不倫?馬鹿じゃねぇのその旦那。

「証拠は?」

「スマホの履歴。カレンダーに書き込んでた出張日程と通系ICカードのデータとの相違。あと相手方との會話の録音。全部べらべら喋ってくれた」

「なんじゃそりゃ。そんだけありゃ、弁護士出る必要ねーだろ」

調停委員にもわかりやすい証拠があれば、當事者だけで調停に出るのが一般的。何故かと言うと簡単で、弁護士頼むと金がかかるから。よっぽど気弱で思ったことを口に出せないタイプなのか?……そうは見えないが。

「だから行き」

含むような言い方が気になった。とりあえず、要點を端的に聞く。

「ふーん、好きなの?」

「はあ?!」

はい、揺した。ビンゴだね。わかりやすいねぇ。

「惚れてんの?あの子に?」

「うっせーな。そうだよ」

外見はアレだが、が素直な男だから、裁判・検察なんかの公務員は向いてない奴だとつくづく思う。

「うん、じゃあ頑張れ。お前が自分からいてるの初めて見るわ。完勝しろよ」

その「行き」とやらを詳しく聞く必要がありそうなので、飲みに行く約束をした。楽しくなってきたー!

オラワクワクしてきたぞー!!!

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