《星乙の天秤~夫に浮気されたので調停を申し立てた人妻が幸せになるお話~》小話 法律事務職員より

【おまけの法律事務職員パラリーガル】

(【08-09】における調停休憩中の電話)

桐木先生から著信があったので、僕は吉報だと思って元気に電話に出た。でも、桐木先生は小さな聲でまず僕に謝ってきた。

『榊、すまん、長引きそうなんだ。俺の予想が甘かった。不倫相手がとんでもない馬鹿で、自分が謝料もらえると思い込んでる』

めるのは想定だけど、金額についてだろうと思ってたので僕もびっくりした。林原さんは「もし相手が誠心誠意謝ってくれたら減額してもいい」とも言ってたのに。これじゃ減額はないな。

「うわ……今回で終わりそうにないですか?」

『面倒だから終わらせたい』

「ですよね。……じゃあ、17時のお約束の件、河村先生と高木先生にお願いしときますね」

『あと、明日朝イチのアポの資料……』

「あ、それ準備できてます。大丈夫です」

こう見えて、僕、優秀なので。

『……ありがとう……榊……』

殊勝にお禮を言う先生に、僕は笑いながら言った。

「仕方ないですよ。男なら、惚れたはとことん助けないと」

『お、おう』

「今日で終わらせてあげてくださいね。僕も応援してるんで。不倫野郎死すべし」

こう見えて、僕、妻家なので!!

【おまけの法律事務職員パラリーガル2】

(【10-11】における森林判事への電話)

―――榊さんも行きますよね?―――

それを聞いた僕はあわてて先輩に電話をかけた。

「森林先輩、お疲れ様です!」

『おう、お疲れー。どした?』

電話の向こうの先輩は、かなりゆるーい調子だったので、多分仕事終わりで気を抜いた狀態だろうと予測した。

「あの、桐木先生の例の……」

『どうなった?どうなった?』

センパイ、を乗り出してるんだろうな……という食い付きで例の件の結果を聞いてくる。

「何故か打ち上げと稱して僕も參加することになっちゃって」

『えええええ、二人で行かせるはずだろー!』

そう。なんとか二人きりになってくれないかと、畫策していたのだ。昨日の晩、僕と先輩と先生の三人で飲んで、あれだけヨイショヨイショと煽りたてたのに。

『桐木、ほんとヘタレだな』

「ぜんっぜん、これっぽっちも、1ミリも進展しないんですよ、あの二人」

すると森林先輩が急に常識的な事を言い出した。

『あーうん、まあ、離婚云々の時、當事者はいっぱいいっぱいだからなぁ』

ここで言う?いま言う?おま言う?

「ちょっと家裁の判事の力、見せてくださいよ!」

『それ関係ねーだろ』

「森林先輩、お願いしまっす。店は適當に僕が選ぶことになったんで、今すぐ來てくださいね!」

『俺、殺されない?大丈夫?』

「骨は拾いますのでよろしくお願いします!」

『死ぬ前提かよ。んじゃ覚悟して行くわ』

先輩がそう言ったので、僕は嬉々として店の場所を伝えた。

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