《妹は兄をする》2―兄の災難―『それは悪夢の一日』
俺は家に帰ると直ぐに私服に著替えた。
やっぱりわが家が落ち著く。
さっきのイザコザが噓のようだった。
私服に著替え終わると、下に降りて
居間のリビングで寛いだ。
テレビをつけるとニュースがやっていた。
俺はソファーにもたれながら、
持っているリモコンでチャンネルを回した。
「あ、優斗お兄ちゃん帰ってたの?」
「ああ、今帰ってきたところ」
「梨乃はいつから帰ってきたんだ?」
「私はさっき、4時頃に帰ってきたよ」 
「何でお兄ちゃん?」
「いや…べつにたいした事じゃない」
「そ、そうなんだ」
「ああ」
梨乃はそう答えると冷蔵庫から
ジュースを取り出した。 
俺は後ろを振り向くと梨乃に聲をかけた。
「あ、梨乃」
「俺もジュース飲みたい!」
その時だった――
俺は後ろを振り向いた直後、
妹にがドキッとした。 
梨乃は俺の方を振り向いて、
「お兄ちゃん何飲む?」と聞いた時の顔が
凄く可い子に見えた。
一瞬、自分の妹だということを
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忘れそうになった。
俺は目の前で妹に目を奪われると、
ソファーに座ったまま固まった。
そして顔が急に熱くなって、自分の心臓が
ドキドキ高鳴った。
今のは一何だったんだと、
自分で自分を疑った。
梨乃は俺の妹なのに…
まるで普通のの子みたいに見えた。
俺は前を見るとテレビに目を向けて、
自分の揺を隠した。
「はいお兄ちゃん!」
「おっ、サンキュー!」
俺は妹からコーラをけとると、
一気にそれを飲み干した。
「お兄ちゃんそれ、コーラだよ?」
「一気に飲んで大丈夫?」
妹は健気に俺の心配をした。
でも、俺はコーラを一気飲みせずには
いられなかった。 
不覚にも自分の妹が普通のの子みたいに可く見えたなんて……。
それは兄としてまずいだろ。
俺は自分の中で自分を恥じた。
梨乃は俺の揺なんか気づいていないのか
隣でオレンジジュースを飲んでいた。 
改めて見ると梨乃はやっぱり、妹に見えた。
俺の気のせいか。
俺はチャンネルを回すフリをして、
梨乃のことをコッソリ見たのだった。 
俺は橫目で何気なく妹をみた。
梨乃は昔から可かったが、ここ3年で大分長した。
顔なんてとくに小さかった頃よりも、
もっとの子らしくなった。
たぶん俺にとって梨乃は、自慢の可い
妹には違いないない。
それなのに妹に彼氏がいなかった事が、
俺はずっと不思議でならなかった。
まあたしかに俺も今、彼いないし。
人の事は言えないけど、やっぱり兄として妹の將來を心配するのは同然だろう…。
俺はフとそう思った。
梨乃に彼氏か…――。
隣で何気なく見つめていると、妹が俺の視線に気づいた。 
「何お兄ちゃん?」
「あ、いや…」
「なんでもない」
俺は視線を外すと、慌ててテレビを観たのだった。 
「あ、そうだお兄ちゃんおやつがあるよ!」
「え?」
梨乃はそう話すと立ち上がってキッチンに向かった。そして、何かがっているお皿をこっちに運んできた。
「はい優斗お兄ちゃん!」
「お、ホットケーキだ」
「味しそうだな」
「これってお前が作ったの?」
「うん!」
「お兄ちゃんホットケーキ好きでしょ?」
「ああ」
俺は妹が作ったホットケーキに
お腹が急に鳴った。
「食べていいの?」
「どーぞ♪」
「じゃあ、いただきまーす!」
俺はフォークを持つと、ホットケーキを
食べ始めた。
梨乃が作ったホットケーキは、
けっこう味しかった。
ホットケーキの味加減が、ちょうど
俺好みだった。
疲れたに甘いを食べると、
なんだか元気になった気がした。
気のきいた妹のサプライズに俺はちょっと嬉しくなった。
「梨乃ありがとう!」
「ホットケーキ上手かった!」
「これならあと3枚食べれるよ」
「お兄ちゃん本當に…!?」
「エヘへ、作ってよかった♪」
妹は上機嫌になるとお皿を片付けた。
「なあ、梨乃」
「ん?」
「これって俺のために作ってくれたの?」
俺はソファーから妹に聲をかけた。
「ちがうよ、なんな今日は疲れたから」
「ホットケーキが食べたくなったの」
「材料が殘ったからそれでお兄ちゃんの分も作ったんだよ?」
「そうなんだ…」
「じゃあ、今日はついてるな」
「お兄ちゃん何で?」
「いや、べつに」
俺は妹にそう答えると、再びテレビを観た。 
暫くすると妹は宿題をすると言って、
2階に上がって自分の部屋に戻って行った。
勉強熱心な妹に関心すると、自分は宿題をせずにソファーの上でゴロゴロした。
「そうだ!昨日買ったジャンプ、たしかこの辺に置いたはず…」
テレビの前に置いてあるテーブルの下に
手をばすと、そこから雑誌を見つけた。
俺は雑誌を手に取るとそこで続きを
ねっころがりながら読み始めた。
時間も忘れて漫畫を読みふけると、
俺は一人で笑した。
今日は心底疲れたから笑うと疲れが一変にとれた。
「あ~面白かった!」
「早く來週にならないかな」
読み終えた雑誌をソファーの下に置くと、
俺はそこでうたた寢をし始めた。
ウトウトしていると玄関の方から
チャイムが鳴ったのが聞こえた。 
玄関の方からチャイムが再び鳴ると、
俺はリビングから妹に聲をかけた。
「梨乃~!」
「お客さんだよ~!」
俺はソファーの上で、ウトウトしながら妹を呼んだ。 
リビングから妹を呼んだが、梨乃は返事をしなかった。
「あれ、おかしいな…」
「聞こえてないのかな?」
そうしているうちに再びチャイムが鳴った。
「お~い梨乃!」
「お客さん來てるよー!」
俺はもうし大きな聲で名前を呼んだ。
『梨乃ちゃ~ん!』
『誰か來てるよ~!』
『かわりに出て~!』
これぐらいの聲だと梨乃は気づいて、
2階から降りてくるんだけど。
どうやら妹は、俺の聲に気づいていないようだった。
俺は眠たい目をこすると、ソファーから立ち上がって仕方なく玄関の方に向かった。 
「はいはい、どなた~?」
俺は大きなアクビをすると、
面倒くさそうに玄関のドアを開けた。
「よっ!」
玄関を開けるとそこには、
小野寺が立っていた。
俺は一瞬固まって、呆然とした狀態で
玄関の出り口に佇んだ。
「お前ん家、はじめて來た!」
「けっこう良いじの家だな!」
目の前にいるのは紛れもなく、
小野寺のヤツだった。 
何しに來たと思った俺は、とっさに玄関の扉を閉めようとした。
すると、小野寺は扉の隙間に足をれた。
「なんだよ神崎」
「友人に対して失禮な態度だな?」
「小野寺テメー、何しに來た!?」
「この足を退けろ!!」
「せっかく來たんだから、茶の一杯くらい出すのが禮儀だろ?」
「お前は訪問の押し売りセールスマンか!」
「茶なんて出す気はない!」
「早く帰れ!」
俺と小野寺は玄関の扉の前でもめあった。 
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