《妹は兄をする》3―れた―『沸き上がる』
「何お母さん?」
 
妹は張した顔で母に返事をした。
母は洗濯を畳んだので、後でリビングに
取りに來てと妹に話かけてきた。
 
妹は直ぐに返事をすると、その場を上手くやり過ごそうとしていた。
 
母は妹にその事を告げると、
直ぐに室から出て行こうとした。
 
俺は冷や汗をかきながら張した。
母が室から出て行くと、俺は一気に
張が解れて安心した顔でため息をついた。
 
すると案の定。母が再び戻って來て梨乃に話かけてきた。
 
「そう言えば梨乃」
「お兄ちゃんみなかった?」
「さっきお風呂にるって言ったのよね?」
 
母がそのことを尋ねると、俺は顔を急に青ざめさせた。
もし、母がお風呂場にってきたら
大変だ…!
 
この場をなんて説明すればいいのか、
それこそ絶的だった。
 
俺達は一瞬、黙り込んでみつめあった。
 
すると、梨乃が答えた。 
「みなかったよ…?」
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「自分の部屋にいるんじゃない?」
 
妹のナイスフォローに俺は間一髪助かった。
 
母は「そう」と言い返すと、 室から出て行った。
 
母が居なくなると俺は全から力が抜けたように、お風呂のタイルにしゃがみ込んで一安心した。
今でも自分の心臓はドキドキしていて、心拍數も上がっていた。
まるでジェットコースターに乗ったような
スリルを俺は味わったのだった。 
たぶんこれが俺にとっては、最大のピンチだった一日かも知れない。
子3人に追い回されたよりも、エロ本を隠れて見たスリルよりも、これのほうが、神的に応えたのは確かだった。
なんでこんな事になったかは今ではわからないが、母にバレなくて良かったと、俺は心底じた。 
妹はそんな俺の姿を黙ってジッと見てきた。
俺はその自然に気づくと、目を向けた。 
「お兄ちゃん驚いたね。安心した?」
 
妹が尋ねてくると、俺は苦笑いをしながら
驚いたと返事をした。
 
驚くどころか、さきので心臓が
飛び出しそうだった。
ドッと疲れてくると、俺は立ち上がって
お風呂場から直ぐに出て行こうとした。
すると梨乃が俺の名前を呼ぶと、
手をパッと摑んできた。
 
俺は梨乃に手を摑まれた瞬間、前で心臓が大きく高鳴った。
まるでさっきの延長戦だった。妹に手を摑まれただけなのにが妙に熱くなった。
それにの中のざわめきも次第に高まっていくのをじた。
俺は妙な気持ちに支配されながらも、
それを振り払うように後ろを振り返って
一言言った。
きっとそうしなければ、自分自を
上手く割りきれる自信がなかった。 
「今のは母さんには緒な?」
「父さんにもだ。言いな梨乃?」
 
そう言って話すと妹は落膽した表で、一言返事をした。
 
「…うん。分かってる」
 
俺は妹のその表の意味に、
その時はまだ気づいていなかった。
妹が俺のことをどうおもっているのか――。
梨乃は俺はの手を離すと、
その場で黙ったままうつ向いた。
俺は心臓の鼓を高鳴らせながらも、
妹に聲をかける事もなく室から慌てて
出て行った。
そして、心臓の高鳴りはそれと同時に
ピークに達した。
 
室を慌てて出ると、俺は逃げるように2階に上がって自分の部屋に戻った。 
部屋にった途端、俺はそのままドアの前に力が抜けたように座り込んだ。
慌てて2階に戻ったから、心臓の鼓が早くいていた。
でも、それと同時にの中のドキドキが
止まらなかった。
俺はさっきのことを思い出すと、頭の中が熱くなってしょうがなかった。
脳裏に蘇るのは不覚にも妹の姿だった。
今思い返すと、妹のが綺麗だったことに気がついた。 
のラインもしっかりしていて、
どうみても梨乃はの子だった。
俺はそれを思い出すと顔を真っ赤にさせた。
自分の妹なのに俺はあの時、自分の妹に
いけないを思ってしまった。
りたいなんて――
そんなこと思ったらいけことないのに……
俺はあの時、妹のにりたいと
思ってしまった。
梨乃は俺にとって大事な妹なのに、
どうかしる……!
俺は急にの中から押し寄せてくる
罪悪に、自分が最低な奴だとじた。
いくら頭の中で自分のことを責めても、
俺はあのが忘れられなかった。
あれは事故とは言え。俺はあの時、
服の上から妹ののをじてしまった。
凄くらかくて俺はあのになからず
男として意識してしまったのだった。 
そう思うと再び罪悪が押し寄せてきた。
両手で頭をかきむしると、俺は不貞腐れて
ベッドの上にねっころがった。 
邪念を振り払って、一人心の中で瞑想した。
でも、さっきのことがなかなか頭から
離れなかった。
 
俺はそこでフと思った。
さっきエロ本を見た時、雑誌に載っている
の子達のにはドキドキしなかったのに、妹のを見た時、自分でもわかるくらいドキドキした。
その違いに俺はし、自分の中で戸いをじた。
瞳を閉じてもあの景が忘れなかった。
モヤモヤした気持ちが高まると、
俺は寢返りをして壁の方に顔をそらした。
自分の中でモヤモヤを振り払っても、
なかなか心がおさまらなかった。
 
俺は壁の方をジッとみつめると、
妹のことを思った。 
さっき梨乃、俺になんて言おうと
したのかな…――?
あんな真剣な目で、俺のことを
見てくるなんて…
俺は梨乃が摑んできた右手を
不意に見つめた。
摑んできた右手をみつめると、の中が
急にドキドキした。 
そして気がついたら俺は壁の方に、
無意識に手をばしていた。 
隣は妹の部屋だった。
俺は自分でもわけがわからない気持ちに
襲われてくると、そこで考えるのやめた。 
これ以上考えたら、自分の頭の中が
おかしくなりそうだった。
瞳を閉じて考えこんでいると、
妹が部屋のドアをノックしてきた。
俺は途端にハッとなった。
「お兄ちゃん起きてる…?」
梨乃はドアの向こうで聲をかけてきた。
俺はそこで慌てて寢たふりをした。
俺が返事をしないと、妹は自分の部屋に
戻って行った。
隣の部屋からドアが閉まる音が聞こえた。 
俺はモヤモヤした気持ちが一気に高まると、もう自分でも消化できずに、ふて寢した。
きっと朝起きたら、今日起きたことは
夢だったかもしれない。
そんな甘い期待をしながら、俺は眠りについた――。
 
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