《妹は兄をする》2―診斷テスト―『それは思いつきで始まった』

繭がモタモタしていると間に、

お兄ちゃんは前をどんどん歩いていた。

私はこのままではお兄ちゃんが笑い者に

されると思い、その場から離れると一気に走り出した。

「優斗お兄ちゃん待って!!」

私は走りながら兄に聲をかけた。すると、兄がそこで立ち止まって後ろを振り向いた。

「あ、梨乃…!」

私は兄に駆け寄ると、その場で腕を摑んだ。

「優斗お兄ちゃん…!」

私が息を切らしながら腕を摑むと、兄は私の方を不思議そうな顔で見てきた。

「よかったぁ…!」

「追いついた!」

「梨乃…?」

お兄ちゃんは私の顔をジッと見てくると、急に黙りこんでいた。

「あのね、お兄ちゃん…」

「梨乃。昨日のことは忘れろ!」

「え…?」

兄が突然その事を話してくると、私は急に驚いた。

「優斗お兄ちゃん…?」

「俺べつにお前のを見たくて、見たんじゃないからな!」

「あれは事故だったんだ!」

兄はそう話すと私から目を反らした。 

「優斗お兄ちゃん…」

私はその言葉に急に切なくなった。確かにあれは偶然に起きた出來事だったけど、

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でもそんな簡単に昨日のことが忘れられるはずがなかった。

兄に抱き締められたあの溫を、簡単に忘れられるなんて出來ない――。

私はの中が切なくなると、兄の顔を

ジッと見つめた。

兄は私の方をみてくれなかった。こんなにちかくにいるのに、兄の心はどこか遠くにあるような気がして、私は兄の摑んだ腕を黙って離した。 

の中がチクチク痛むと、私は顔をあげて兄に笑って答え。

「うん、わかってる。大丈夫だって…!」

「あれは事故だったんだから、そんなに気にしないで!」

「梨乃…」

「もう、そんなに落ち込まないでよ」

「なんか笑っちゃうじゃん」 

「あのなあ…」

兄は呆れたようにため息をついた。

私はあえて兄に明るく振る舞った。

そうしないと怪しまれると思ったからだ。

どんなに悲しくて心が傷ついても、私は兄の前では『妹』として演じなければならない。

だってそれが『家族』で、『兄妹』なんだから…――。 

しでも怪しまれれば、私のはシャボン玉みたいに壊れてしまうけど、それなのに私はお兄ちゃんにしてる。

だから傷ついてもいいから、私は兄の前で妹の仮面をつけて、自分の本當の気持ちを誤魔化すの。

それが兄妹として生まれた

逃れられない運命なんだから――。 

 

「そうだお兄ちゃん、ちょっと屈んで!」

「なんで?」

「いいから!」

兄は不思議そうな顔で頭下げた。

「はい、とれたよ!」

「ん?」

私は明るく笑うと、兄の頭の上に乗っていた紙くずを然り気無くとってあげた。

すると、兄は驚いた聲をあげた。

「うわっ!」

「なんで俺の頭にゴミが乗っかってるんだ!」

「てか、デカっ!!」

「きづかないで歩いてたなんて、俺カッコわるすぎだろ!!」

お兄ちゃんは私から紙くずをけとると、ワナワナしながらゴミ箱に投げ捨てた。

「一誰が俺の頭にゴミを乗せやがった!」

「見つけたら100回殺す!」

優斗お兄ちゃんはブツブツ獨り言を呟くと、ちょっと不機嫌な顔になっていた。

すると、繭が笑いながら後ろから現れた。 

「やだぁ~!」

「優斗さんかっこわるぅー!」

「そ、その聲は…!?」

兄は慌てて後ろを振り返った。

「げっ!!」

「七瀬繭!!」

「蓮一の妹…!!」

「どうも、いつも兄がお世話になってます!」

繭はにこやかに笑いながら手を振った。

「梨乃、こいつとつるんでるのか…!?」

「え…?」

「ならやめとけ!」

「蓮一の妹は見かけは可いが、中は兇暴で最悪だ!」

「この前なんて俺のにめがけてアッパーを…!」

兄がそのことを言いかけると、

繭はいきなり足を踏んだ。

「いってぇ~!!」

「やだ~!」

「お兄さんたら、冗談が上手いんだから~!」

「私そんなガサツじゃありません!」

「人聞きの悪いことは言わないで下さい!」

「ウソコケーッ!!」

「俺は絶対に騙されないぞ!!」

「何よ、文句ある?」

「だいたいアンタがうちのお兄ちゃんに、ちょっかい出すからでしょ?」

「な、なんだとぉ~!」

「ちょっかい出されてるのはこっちの方だ!」

「あ、そうだ。この前うちのお兄ちゃんから取り上げた食券、早く返してあげてよ?」

「誰が返すか!」

「もともとは、あれは俺の食券だ!」

「あいつが勝手に橫取りしたんだ!」

「うそ言わないでよ、うちのお兄ちゃんはそんな事しないわよ!」

「お前の目は節か!?」

2人はそこで言い合って口論していた。私はキョトンしながら、兄に尋ねた。

「お兄ちゃん、繭と知り合いなの?」

 

「知り合い?」

「冗談じゃないぜ!」

「こんなと知り合いでたまるか!」

「こ、こんなとは何よ…!?」

「こっちこそアンタみたいなバカと、知り合いでたまるもんですか!」

「な、なんだとぉ…!?」

「それが年上に向かって話す態度か!」

「蓮一の妹だから今まで多目にみてやったが、頭にきた!」

「今までの恨みを今日こそ晴らしてやる!」

「やるかぁ~?」

「こっちこそ容赦しないわよ!」

「アンタなんか腕一本で投げ飛ばしてやる!」

繭はそこで鞄を地面に投げ捨てると、

ファイティングポーズをとった。

「アンタに道の禮儀を教えてあげる!」

「かかってきな!」

「よーし、その話し乗ってやる!」

「俺はでも容赦しないぞ!」

2人はそこで睨み合うと、お互いに牽制しながら間合いをとった。

2人の険悪なムードに梨乃は困った顔を

すると、そこで思いきって割ってった。

「優斗お兄ちゃんケンカはやめて!」

「それに繭もケンカはダメだよ!」 

梨乃が慌てて間に割ってると、2人はそこで言い返した。

「止めるな梨乃!」

「これは兄としてのメンツの問題なんだ!」

「こんなじゃじゃ馬に舐められたんじゃ、俺としても不愉快だ!」

「そうよ梨乃!」

「止めても無駄よ!」

「こんなニブチン兄貴、あたしが制裁してやる!」

「ま、繭…!?」

「ニブチンだと?」

「俺がニブチンなら、お前はブラコンじゃないか!」

「な、何ですって…!?」

2人はジリジリと間合いを取り合いながら、睨みあった。

梨乃はそんな2人の間に板挾みになると、そこでウロウロと狼狽えた。 

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