《妹は兄をする》2―冷たい雨―『その日、繭は……』

梨乃と帰りにわかれてから、あたしは何となく街を一人で歩いていた。

時計を確認すると5時になっていた。

ちょうどその時間帯は、蓮がアルバイトに出る時間だった。

あたしは兄が働いている喫茶店に

先回りすると、その前で蓮が來るのを

コッソリ待った。

ちょっとだけでもいいから、

蓮のウェイター姿が見たいと思っていた。

家にいる時の兄と、學校にいる時の兄と、

外で働いている時の兄の別の顔が見たいと

思った好奇心からだった。

でも一番の理由は、やっぱり兄の

関係だった。

兄に言い寄るは悪い蟲だと思っている。

あたしはそれに目をらせながら

つねにチェックしていた。

先月も悪い蟲を一匹駆除した。

蟲を駆除する為ならありとあらゆる手段を

あたしは使う。 

きっと梨乃がその話を聞いたら、間違いなく顔をひきつらせる。

あたしはただ、蓮を誰にも

渡したくなかった。

それが今の私を突きかす原力だった。 

店の前でコッソリ隠れて待っていると、

誰かが店にって行った。

よく見ると、それは蓮ではなかった。

なんだ…人違いか。

まだ來ないのかな…?

今日は確か出勤のはず。 

あたしは鞄から手帳を取り出すと、

ページを捲って確認した。

手帳には蓮のスケジュールが

書かれていた。

これはあたしが日頃、兄を尾行した

果だった。

ある程度尾行すると、兄の行

パターンが見えてきた。

例え第一土曜日は必ず、兄は仲の良い

友達と遊びに出かける。

その仲の良い友達も、あたしの中では

すでにチェック済みだった。

兄の出勤日は火水土日だった。

それもすでにチェック済み。 

他にも々と兄の行パターンが

この手帳には書かれている。

ついでに兄に彼がいないことも、

チェック済み。

あたしはこうして手帳の中でも、

兄を獨占している。

梨乃の兄貴が言っていたけど、あたしは

自分が思っている以上に、ブラコン

なのかもしれない――。

蓮はバイト先は自転車か、バスで出勤してくる。 

家の近くだから通も便利だった。

しばらく店の前で待っていると、

一臺の赤い車が止まった。

あたしは何気なく、その赤い車を見ていた。

すると、車から何故か蓮が出て來た。

「え…?」

あたしは一瞬、自分の思考が止まった。

止まると同時に次の瞬間。あたしは見てはいけない景を目にしてしまった。 

兄が車から降りてくると、窓から

髪の長いの人が蓮に話しかけていた。

そして、次の瞬間。蓮とそのの人が

キスをしていた。

その瞬間、あたしの世界は何かが

音をたてて壊れた――。

 

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