《妹は兄をする》3―冷たい雨―『その日、繭は……』

それからの記憶は曖昧で、

よく覚えていなかった。

どうやってここまで歩いて來たのかも

覚えていなかった。

ただ唯一覚えているのは、兄がとキスをしていた事実だった。 

そして、そのの名前を呼んでいた。

恭香って誰よ――?

あたしの頭でその名前だけが、

永遠とリピートしていた。

ボーッとして歩いていると、いつの間にか

雨が降ってきた。

でもそんなことお構い無しに、

あたしはずっとそのことを考えていた。

そして、気がつけばあたしは橫斷歩道の

真ん中で呆然と立っていた。

車のクラクションの音であたしは、ハッと気がついた。 

何やってるんだろう

あたし。

早く橫斷歩道渡らないと……。

そう思って前に進もうとした足が、

何故か鉛のように重かった。 

あたしはその重たい足をひきずりながら、

雨が振る街中を一人で歩いていた。

その日の雨は、いつもよりも冷たくじた。

まるで心を突き刺すように冷たかった。

泣きたくもないのに涙が溢れた。

蓮がキスしていたことを思い出すと、

突然あの日の夜の記憶がよみがえった――。

蓮はあたしにキスしてきたけど、

それは本當にあたしにキスしたのか?

それとも蓮は…―――。

 

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