《妹は兄をする》3―斷の林檎―『一夜の過ち。それは始まり。』
「――だから死のうとしたの?」
「沙織里さんのことが忘れられないから…?」
「ああ…」
不意にそのことを尋ねると、蓮はそうだと答えた。あたしはその言葉に背筋がゾッと凍りついた。
もし、あのまま部屋を通りすぎていたら、兄は自分の部屋で手首を切って自殺してたかも知れない。
そこまで「彼」のことを想っているんだと思うと、あたしは急に悲しくなって泣き出した。
「お兄ちゃんのバカ…!!」
「あたしを置いて死ぬなんて絶対に許さないから!!」
「ま、繭…?」
「兄妹だからとかじゃない。あたしは蓮に死んでしくないの!!」
「繭…?」
「繭、何で泣いてるんだよ…?」
「っ…ばかぁ!!」
ばしてきた手が顔にれると、あたしは泣きながら蓮のに飛び込んだ。
もう気持ちもぐちゃぐちゃで、自分でもわからずに涙が次から次へと溢れ出た。
ただ一つ思ったことは蓮が死んでしまった時のことを想像すると、あたしは怖かった。 
兄はあたしのことを妹としか思っていないのはわかっている。でも、あたしは蓮を兄以上の存在だとじてる。 
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あたしにとって蓮は大切な人。この世で唯一のあたしだけの「寶」。だからそれを失うと思うと、怖くて仕方なかった。
泣きながら震えてると、蓮があたしを
そっと抱きしめた。
近くで鼓を打つ音が聞こえると、あたしはその心音の音に心が落ち著いてきた。
――蓮が生きてる――
その実だけでも、あたしは嬉しい。蓮が手首を切って本當に死んでしまったら、
あたしはきっと沙織里さんのことを一生恨んでたかも知れない。
彼には渡さない。 
蓮は あたしだけのもの。 
貴には絶対……。
あたしはそこに、としての嫉妬のようながの中で溢れた。
彼は死んでもまだ兄の心の中に居続ける。あたしそこに嫉妬をじずには、いられなかった。
 
「蓮…」
「あたしじゃ…」
「あたしじゃ、ダメなの…?」
「繭…?」
「あたしじゃ沙織里さんの代わりには、なれないの…?」
「え…?」
「あたしは蓮を置いて逝ったりしない…!」
「もし死ぬなら、お兄ちゃんを連れて一緒に死ぬ!」
「繭どうしたんだよ…?」  
「だってそんなのズルいよ!」
「お兄ちゃんは今も苦しんでるのに、沙織里さんはお兄ちゃんが苦しんでることなんて知らない…!」
「なのに今も蓮の心の中に居続ける…!」
「なのにそんなのズルいっ!!」
抑えていた気持ちが発すると、あたしは兄の前で有りのままの気持ちを伝えた。
悲しく悔しくて涙が止まらなかった。
そして、亡くなった沙織里さんのことが、心のどこかで羨ましかった。
彼はもうこの世にはいないのに、それなのに蓮は今も彼のことを想っている。
そこに私のる余地すらない。そう、昔とおなじだ。あの時も私はただ2人を遠目から眺めてることしか出來なかった――。
記憶の底にしまい込んだ過去を思い出すと、あたしは辛くてその場から逃げようとした。
立ち上がってドアの前に走るとドアノブに手をかけた。すると、蓮がうしろから聲をかけてきた。 
「繭。お前も俺の前から、いなくなったりするのか――?」
「蓮…?」
「俺の目の前から突然、いなくなったりするのか――?」
兄が不意に尋ねてくると、あたしはそこで立ち止まった。
「あ、あたしは……」
「繭助けてくれ…」
「え…?」
「今一人でいるのが耐えられない。ちょっとだけでいい。俺の傍にいてくれ…――」
蓮は苦しそうな表をすると、あたしの足下にすがりついてきた。兄がそんな事をするとはおもっていなかったので、突然の出來事にあたしは揺した。
足下にすがり付くと、小さく震えていることに気がついた。まるであたしに救いを求めてる様にも見えた。の奧がギュッと締め付けられると、居ても立ってもいられなくなり。あたしは下に座り込むと、蓮の頭を両腕で包み込むように抱き締めた。 
「繭助けてくれ…」
「が苦しくて辛いんだ…」
「自分でも、どうしたらいいのかわからない…」
「蓮…」
「繭助けてくれっ…!」
そう言って悲痛な聲で助けを求めてくると、あたしは震えている蓮を抱き締めながら答えた。
「聞いて蓮。あたしはいなくなったりしない」
「だから…――」
「繭…」
「だって、あたしは蓮が…――!」
気持ちが高まると、あたしは思わず自分のの奧にしまっているおもいを言いそうになった。
こんなことを突然打ち明けたら、兄は混するに気待っている。
隠していた気持ちを言いそうになると、あたしはそこで口を閉ざした。
気持ちを打ち明けたら全てが壊れそうな気がして、あたしは怖くなって黙り込んでしまった。 
蓮があたしのことをどう見てるのか、
怖くてまともに見れなかった。
兄に軽蔑されたらきっと立ち直れない。あたしにとって「告白」は、勇気がいる事だった。場合によっては失うものも大きい。 
とくにの繋がった兄妹なら、なおさらだ。 
言いかけた言葉を飲み込むと、あたしは目の前にいる兄から目を反らして下をうつ向いた――。 
もしも変わってしまうなら
第二の詩集です。
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