《妹は兄をする》5―斷の林檎―『一夜の過ち。それは始まり。』

「さっきはすまなかった…」

「その…どうかしてたんだ…」

「一度しか言わないから聞いてくれ」

「さっきのことは全部わすれるんだ」

「その方がお前もいいだろ…――?」

蓮はドアの前であたしに話しかけると、

後ろを向いて自分の部屋に戻ろうとした。 

あたしはその話に堪らずドアを開けると、後ろから兄に抱きついた。

「ま、待って…!」

「あたし気にしてないから…!」

「あ、あたし蓮なら良いと思ったの…」

「ほ、ほんとだよ…?」

「それに嫌じゃなかったの…」

「だってあたし蓮が…」

『繭っ!!』

蓮は怒鳴ると前で小刻みに震えていた。あたしはハッとなると、しがみついた手を離した。 

「――頼むから俺を困らすな。お前がその言葉を口にしら、俺はお前と"兄妹"でいる自信がなくなる」

「そうしたら、もうこの家には居られない」

「蓮…」

「あたしは嫌…」

「そんなの嫌…」

「だってあたしは…!」

「繭、この話しはもうこれきりだ。とにかく忘れるんだ。いいな?」 

蓮はそう言うと自分の部屋に戻ろうとした。あたしは廊下の前で呆然と立ち盡くすと、思わず聞いてみた。 

「ま、待って…!」

「じゃあ、何であたしにキスしたの…?」 

「お兄ちゃんは、あたしのこと…――」

がギュッと切なくなると、泣きたくも

ないのに涙が溢れた。

蓮は一度も振り返らずに部屋にると、ドアを閉めた。まるで拒絶されてるみたいだった。 

蓮はあたしの質問には答えてくれなかった。あたしはそれが悲しくて、何故か涙が

止まらなかった。

蓮はあたしにさっきのことは忘れろと

言ってきた。 

でも、そんな簡単に忘れられる訳がない。

あのキスのも抱き締められた溫もりも、全部忘れられることなんて出來ない。 

蓮はどうなんだろう?

さっきのことを簡単に忘れられるのか? 

閉められたドアの前に佇むと、あたしは心の中で蓮に問いかけた。

蓮にとってあれが間違いの行為であっても、あたしはあの時、心の中で幸せをじたのは確かだった――。

 

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