《妹は兄をする》2―妹の罠―『家に帰ると……』
「よう優斗、今日は調子がいいな!」
「ん、そうでもない。なんかいつもより、シュート上手くんないし…」
「うそこけ!俺より20本はってるじゃねーか!?」
「それはお前のコントロールが悪いからだろ?」
「何だと~!?」
「じゃあ、俺と勝負するか!?」
「何に?」
「じゃあ、勝ったら妹ちゃんを紹介して?」
「はぁ?お前みたいな奴に、うちの可い妹を紹介できるか!!」
「じゃあ、メアドでいいから!」
「相変わらずしつこい奴だな……」
小野寺はバスケットボールを片手に持ちながら、優斗に1on1を申し込んだ。
「じゃあ、俺が勝ったら妹から手を引け!」
「嫌だ。手を引かない。だって妹ちゃん、可いもん」
「だからってお前みたいな奴と、うちの妹が釣り合うはずないだろ?」
「あ、言ったな?」
「じゃあ、本気で勝負だ!」
「俺が勝ったら妹ちゃんは×××で××××だからな!」
「ゲスの極みだな。やはりお前みたいなクズは、ここで抹殺せねば!!」
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「勝負だ小野寺!!」
「行くぞ優斗ーっ!!」
「ウオォオオオオッ!!!!」 
 
2人がゲームを始めた瞬間、終業のチャイムが鳴った。
「おっ、終わりだ。ゲームはまた今度な」 
「あっ、コラ待てよ優斗…!!」
「ヘヘーン、誰が待つか。お前と本気で勝負するはずがないだろ~?」
「優斗、俺と勝負しろーっ!!」
優斗はバスケットボールをカゴに戻すと、小野寺とは勝負をせずに、笑いながら教室に戻って行った。
 
學校が終わると、優斗はクラスの男子とふざけあいながら帰った。
仲の良いクラスメイトと途中で別れると、駅前にある本屋に寄った。 
そこでお気にりの本を一冊買うと、再び家路に向かった。
家路に向かう途中、道端に500円玉が落ちていた。優斗はそれを見逃さなかった。
サッと素早く500円玉を足で踏むと、手でそれを拾い上げた。
「やりぃ~!!」
「俺ってついてる~!!」
「500円玉、拾っちゃったぜ~!!」
優斗は拾った500円玉に喜ぶと、それを自分のポケットにれた。
すると、すぐ近くに繭が突っ立て見ていた。 
「ふむふむ。梨乃兄、道端で500円玉を拾ってそれを貓ババする…っと☆」
「やだぁ~、見かけによらず優斗さんって、がめついわね~。うちのお兄ちゃんでさえ、そんな事しないわよ」
繭はそう言いながら、持っている手帳に
メモをしていた。
優斗は繭に500円玉を拾うところを一部始終見られていたことに気づくと、その場で慌てた。 
「お、お前は蓮一の妹…!?」
「何故こんなところに…!?」
「って言うか、今の見てたな…!?」
「オーホッホッホッホッホッ。當たり前よ、一部始終みてたわ」
「拾った500円玉を自分のポケットにれて、貓ババする所とかね!」
繭はキリッと言うと、得意気に話した。
「ギクッ…!!」
「ば、ばれたか…!!」
「優斗さんたら、脇が甘いわね。500円玉を貓ババするなんて、梨乃が聞いたらなんて思うかしら?」
「なっ…!!」
繭の何気ない言葉に、優斗は揺した。 
「きっとショックで、泣いちゃうかもしれないわよ?」
「優斗お兄ちゃんがそんな、貓ババするなんて…!!」
「ああ、梨乃ショック…!!」
「およよっ…!」
繭は突然、梨乃のモノマネをすると、々しく泣いて見せた。
優斗はワナワナしながら、頭に怒りマークが込み上がった。
「こいつは~!」
「てか、全然似てねーし…!!」
繭は優斗を茶化すと、そこで片手をひらりと向けた。 
「仕方ないから、繭ちゃんがその500円玉を貰ってあげる!」
「は?」
「はやく寄越しなさい。貰ってあげるって言ってるのよ」
「なんで拾ったのをお前にやらんと、いけないのだ…!?」
「うるさいわねー。つべこべ言わずに、早く渡しなさいよ」
「イヤだ!」
「誰が渡すか!」
「あら、いいの?」
「梨乃にいっちゃうよ~?」
「お前それで、俺を脅したつもりか?」
 
「じゃあ、言いつけちゃおう!」
繭はそう言うと攜帯電話のボタンを押して、梨乃に電話をかけた。
「あ、梨乃~?いまねー、アンタのお兄ちゃんが道端でね…」
『おいおまえーーっ!!』
優斗は慌てると、繭から攜帯電話を奪って通話ボタンを切った。
「オーホッホッホッ。や~ね~、だから早く寄越しなさいって言ったのよ」
「だからって本當に妹に、告する奴がいるかーーっ!!」
優斗は改めて、繭の恐ろしさを思い知った。 
「油斷できねーやつ。てか、お前みたいのを悪って言うんだなきっと…」
「なんか言った?」
 
「じゃあ、マンおごってくれたら黙っててあげる」
「あ?」
「いいから早く、おごりなさいよ!」
「なんで俺がお前なんかに…!」
「じゃあ、梨乃に言っちゃお!」
「この小悪魔が…!!」
優斗は繭に貓ババしたことを妹に
告げ口されるのを恐れて、拾った500円玉で
仕方なくマンをおごることにした。
目の前のコンビニに寄ると、そのまま
近くの公園へと行った。
2人は公園のベンチに座ると、
熱々のマンを食べた。 
 
「ハフハフ、やっぱりマンはセブンに限るわね~」
「この角煮まんなんか、おがやわらかくて、口溶けなめらかで最高~!!」
繭はそう言いながら、角煮まんを
味しそうに食べた。
その隣で優斗はワナワナすると、
思わず怒った。
「って…なんでお前が200円のマン食って、俺が100円のマンなんだ…!?」
「仕方なくおごってやったのに、お前はあまのじゃくか!?」
「何よ~?」
「貓ババしたところ梨乃に黙っててあげるんじゃない。謝してよね~?」
「謝だと…!?」
「それとも、梨乃に喋ってしい?」
「アンタのお兄ちゃんが、道端で500円玉を貓ババしたって☆」
「きっとショックで、泣いちゃうかも?」
「いやいや、幻滅するかもしれないわよ?」
「優斗お兄ちゃんがそんな事するなんてって、ガッカリするわよ。それでもいいの?」
繭は小悪魔に笑うと、再び角煮まんをほうばった。 
「だいたい梨乃だったら、間違いなく拾った500円玉を番に屆けるわよ。そのてん、優斗さんは駄目ねー」
「な、なんだよ…!?」
「じゃあ、お前は番に屆けるのか?」
優斗が尋ねると、繭は真顔で答えた。
「しないわよ。ばかねー、拾った者勝ちよ」
「ほらみろ、やっぱりお前もそうじゃん!」
「いいのよ私は、私なんだから。そんなことより優斗さんも、もうちょっとしっかり した方が良いんじゃない?」
「そんなんじゃ、梨乃が可哀想よ」
「あ、それはどう言う意味だ?」
「自分の頭で考えなさい」
繭はそう話すと缶ジュースを飲んだ。
優斗は隣で黙ると、マンを一口食べた。
 
繭はマンを食べ終わると、缶ジュースをゴクゴク飲んだ。すると、優斗が突然聲を上げて怒った。
「あ~っ!!」
「ちょい待てぇ~い!!」
「それ、俺が買った缶ジュースだろ!?」
「勝手に飲むなよ!!」
「何よ~?」
「ケチ臭いこと言わないでよね。どうせ、拾ったお金で買ったんだから良いでしょ?」
「だからってお前なぁ~!!」
繭はそう言い返すと、缶ジュースを
飲みまくった。
優斗はすかさず繭から缶ジュースを奪うと、一口飲ませろと言って飲んだ。
2人は公園のベンチで、一本の缶ジュースを奪いあいしながらもめた。
ギャーギャー騒いでいると、小さな男の子が不思議そうな顔で眺めながら指をさして言った。 
「ママー、あのお兄ちゃんとお姉ちゃん。間接キスしてるよ?」
小さな男の子はそう言うと、母親のもとに駆け寄った。
2人はその瞬間、赤面しながら固まった。 
 
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