｢あ…いや、これはその……｣

｢ははっ…ははは……｣

｢わ、わざとじゃ……｣

優斗は半笑いしながら顔をひきつらせると、揺した仕草で自分の頭をかいた｡

しかし、繭は肩を震わせながらゆっくり振り向くと、その目はキラリと殺意にっていた｡

｢……アンタ今、あたしのったわね？｣

｢いや、その……｣

優斗は彼に殺されると悟ると、恐る恐る後ろに下がった｡

｢ったでしょ？｣

｢だから今のは……｣

繭に詰め寄られると優斗は冷や汗をかいた。事故だとしても、彼のをったのは事実だった｡

揺していると、繭は優斗に手をあげて

顔をビンタした。

『何するのよ！！』

『このへんたーーい！!』

強烈なビンタが、彼の心と神を

思いっきり砕いた｡

『ぐはぁーーっ！!』

『オラオラオラオラァアアーーッ!！』

繭は優斗をビンタすると、そのまま地面に

マウントをとって、ボコりにかかった｡

『よくもったわね、この変態！！』

『乙の純潔をよくもぉおおおーーっ!！』

『オラオラオラオラーーッ！！』

繭は優斗をボコボコにすると、トドメに

バックドロップで絞めた｡

彼は背後から頭を地面に叩きつけられると、その場でKOされた｡

周りにいた人は、一瞬何事かと思い、2人の方へ視線を向けた｡

もの凄い癡話喧嘩を目にすると、周囲にいた人達は、巻き込まれたくないため、

一斉にはけていった｡

公園に2人だけになると、繭は最後に

鼻をフンと言わせてから、彼を一人

その場に取り殘してから去って行った｡

彼にボコボコにされた優斗は、なかば

死にかけたが、三途の川の一歩手前で

我に返った｡

を地面から起こすと、優斗は繭を

改めて兇暴と認識したのだった｡

彼は落ちている鞄とハンカチを拾うと、傷付いたを引きずりながら我が家へと帰って行った――｡

散々なめにあった優斗は、傷ついたを

引き摺りながら我が家に帰宅した。

玄関の前で自分の頬をると、毆られた

顔の痛みが、まだズキズキしていた。

優斗は繭の恐ろしさを実すると、

ドアの前でフと呟いた――｡

｢…ッ！｣

｢あいつマジで毆りやがって……！｣

｢顔はまあまあ可い方なのに、何て兇暴なだ……！｣

｢俺をサンドバッグにしやがって……！｣

「今度、蓮一にあったら、今日のこと全部チクってやる…！！｣

｢うちの妹の方が全然良いし、あいつが自分の妹だったら、命がいくつあっても足らないぜ…！｣

優斗は玄関の前で獨り言を呟くと、

ため息をついてからドアを開けた｡

｢ただいま～！｣

玄関の扉を開けると、優斗はそこで

一聲かけてから靴をいだ｡

そして、スリッパをポンと床に置くと、

そのまま直ぐに履いて廊下を歩き出した。

すると、二三歩あるいた途端に足下を急に躓かせた｡

『うわぁっ…！！』

『うわぁああああ～～っ！！』

優斗は何かに躓くなり、大きな聲をあげて慌てた｡

勢を立て直そうとするが、スリッパに

何かがりついていた。

そして、再び何かを踏みつけた。それは、ベチャッとするような覚だった｡

優斗は完全に気が緩んでいた。

足下をとられると、必死で倒れまいと

勢を立て直そうとしたが、は前へと

突き進んだ｡

そして再び何かを踏みつけた。スリッパにりついたものが沢山くっつくと、優斗はとっさに壁に両手をついてを支えた｡

そして彼は次の瞬間、周りの景を目に

すると、大きな聲をあげて絶した――｡

｢何じゃこりゃあ～～っ!｣

彼が目にしたものは、信じられない景だった｡

なんと廊下全に、ゴキブリほいほいが

設置されていた――。

『な、何なんだこれはっ…！？』

廊下のあちらこちらに設置されている

ゴキブリほいほいを目にすると、

彼は信じられない狀況に困した｡

スリッパにりついた正がわかると、優斗はそれを急いで剝がそうとした｡

すると突然、梨乃がリビングのドアを

バンと開けて、びながら棒を

振りかざして向かってきた｡

『きゃ～～っ！！』

『出たなゴキブリぃ～～！！』

｢い゛っ！？｣

スリッパからゴキブリほいほいを

剝がそうとした瞬間、梨乃がびながら

リビングから出てきた｡

優斗はその聲に驚きつつ、思わず視線を妹に向けた｡梨乃は目をつぶったまま、ハエ叩きの棒を振りおろすとそれが優斗の顔に見事に命中したのだった｡

バシッと叩くと、梨乃は恐る恐る

目を開けた｡

目を開けると、そこには優斗が呆然と

立ち盡くしていた｡

ハエ叩きで叩くと、梨乃は恐る恐る目を開けた。するとそこには優斗が立っていた｡

『お、お兄ちゃん…！？』

びっくりする妹を前に、優斗は顔面を

押さえて痛みを堪えていた｡

｢り、梨乃…！！｣

｢これは一、どういうつもりだっ…!？｣

優斗はつい、聲をあげて怒鳴った。すると、梨乃はその聲にをびくつかせた｡

一瞬、か弱い小をいじめてる気分になると、優斗は一呼吸してから落ち著いた口調で叱りつけた｡

｢ハハッ…い、今のは痛いじゃないか？｣

「兄ちゃんの顔をハエ叩きで叩くなんて、いけないだろ？｣

「それはハエを叩くものであって、決して人を叩くものじゃないぞ？｣

優斗はそう言って爽やかな口調で妹を叱ると、自分の前髪をかきあげた｡

｢ご、ごめんなさい…！｣

｢お兄ちゃん、もしかして怒った…？｣

梨乃は反省した表で兄に謝ると、し泣きそうになっていた｡

優斗はし呆れると、軽くため息をついてから、一言聲をかけた｡

｢――そんなわけないだろ？｣

そう言って答えると、妹の頭を一でしてから、くしゃっと優しく笑った｡

梨乃は優斗の怒ってない表を確認すると、しホッとした顔になった｡

｢優斗お兄ちゃん、大丈夫…？｣

｢ああ、これくらい何ともないぜ。何せ俺は、昔からが丈夫だからな！｣

そう言って冗談をえて答えると、梨乃はクスッと笑った。

その笑う姿がどこか可げに見えると、優斗も思わずつられて笑った｡

｢――で、これは一どうしたんだ？｣

｢……｣

優斗は苦笑いをすると、それとなく尋ねた｡

梨乃は兄の質問に、おどおどしながら答えた｡

｢その…――｣

｢ん？｣

｢優斗お兄ちゃんがこの前……｣

｢この前？｣

｢こ、この前。玄関にね……？｣

｢この前っていつだ？｣

梨乃が何かを話始めると、優斗は不意に聞き返した。

すると、梨乃は小さな聲で

ボソッと話した｡

｢あのね。優斗お兄ちゃんがこの前、玄関に大きなゴキブリがいるって言ったのを思い出して、それで急に怖くなったから置いたの……｣

梨乃はそう話すと、そばにあったゴキブリハウスを指差した｡

優斗は妹からその話を打ち明けられると、この前のことを思い出した｡

この前とは、小野寺が家に來たときの

ことだった｡

その時、優斗は２階にいる妹に、玄関に大きなゴキブリがいるから來るなと言ったのを思い出した｡

どうやら梨乃は、その言葉を真に

けていたらしい。

優斗はそう思うと、苦笑いしながら

半笑いを浮かべた｡