《妹は兄をする》5―妹の罠―『家に帰ると……』
「梨乃、それはだな……」
優斗は勘違いしている妹に、事実を打ち明けようとすると、梨乃は震いしながら話した。
「私ゴキブリ苦手なの…!」
「大きなゴキブリなんて見たくない…!」
「優斗お兄ちゃんが、ゴキブリを退治してくれたかわからないからこれを置いたんだけど、やっぱり不安なの…!」
梨乃はそう話すと、ホントに嫌そうな聲で
涙目を浮かべていた。
そんな小さな蟲に怯える妹が、優斗に
とっては可く思えた。
プッと小さくと笑うと、妹を安心させるためになだめた。
「それなら安心しろ。兄ちゃんが、ちゃんとゴキブリを退治してやるから。お前は気にしなくてもいい」
「で、でも……」
「大丈夫、俺に任せとけ!」
「う…うん。わかった――」
梨乃は不安そうな表を浮かべながらも、小さく頷いた。
優斗は不安がる妹の頭をでると、不意に呟いた。
「やはり悪い蟲は、始末しなくては…――」
「え…?」
「いや、何でもない。それより梨乃。このゴキブリほいほい片付けないと、母さんに叱られるぞ?」
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「廊下中に置いてちゃ、足の踏み場もない。兄ちゃんが一緒に手伝ってやるから、早くコレをかだそう」
「うん、わかった。でも大丈夫かな……?」
「ああ、大丈夫だ!」
「お前の大嫌いな蟲は、俺が全部退治してやる!」
「ゆ、優斗お兄ちゃん……?」
梨乃は頼もしい兄の言葉に、ちょっと
不思議そうな顔をした。
「…その前にこのスリッパについたやつを剝がしてくれないか?」
優斗はそう話すと、床に座り込んで足を向けた。
梨乃はそれに気がつくと床にしゃがんで、兄のスリッパの裏にくっついたゴキブリ
ハウスを剝がそうとした。
「わりぃ梨乃。さすがに粘著力が凄くて自分じゃ、剝がせない」
「うん、お兄ちゃん任せて!」
梨乃は素直に返事をすると、スリッパにくっついたをメリメリと音をたてながらゆっくりと剝がした。
「――梨乃、これ何個床に仕掛けたんだ?」
「まさか2階にまで…なんて、冗談は言わないよな?」
何気なく尋ねると、梨乃は首を橫に振って答えた。
「置いてないよ、ここだけだよ?」
梨乃がそう答えると優斗は取り合えず、
一安心した。
「…そうか。取り合えず、安心だな」
優斗はその話を聞くと、し安心した
表を浮かべた。
怒るどころか、妹の可いイタズラに呆れつつも、そんなところが可いく思えた。そう思うと、自然に顔が緩んだ。
スリッパの裏についたものをメリメリと
剝がすと、梨乃は聲をかけた。
「お兄ちゃん剝がれたよ♪」
「おう…!」
優斗は顔を上げると、無邪気にそれを
報告してくる妹にプッと笑いながら返事をした。
「これでようやく歩ける。梨乃、もうこんなイタズラするなよな?」
「うん…!」
優斗は最後にひとこと注意をすると、そう言って妹の鼻を軽く指先で摘んだ。
梨乃は優斗に優しく注意されると、素直に反省した態度を見せた。
々あった一日だが、妹の可いイタズラに癒されると、優斗は自分の鞄を拾うと、2階に上がって自分の部屋へって行った――。
――――翌日、學校の駐場で、小野寺が一人ニヤニヤしていた。
彼は駐場に自転車を止めると、
中等部がある校舎へと忍び足で向かった。
「――ふふふ。今日こそ神埼の可い妹を、この目で拝んでやる…!」
「ついでにS級と噂される妹ちゃんをこのカメラで激寫してやる…!」
「あわよくば、妹ちゃんのパンチラ寫真が撮れれば、俺的にも最高なんだが……」
そう言って小野寺は、マイカメラを片手に持ちながら、顔がにやけていた。
「…ふっ、悪く思うなよ優斗。俺に妹ちゃんを紹介しないお前が悪い」
「さてと、裏門はどこだ?」
小野寺は周りをキョロキョロしながら、校舎の裏門へと侵を図った。
すべては優斗の可い妹を一目拝もうと言う、彼の腐れだった。
小野寺はニヤニヤしながら、門を見上げて笑った。
「梨乃ちゃ~ん!素敵カッコいい小野寺君が、今からキミに會いに行くよ~、待っててね~~!」
小野寺はそう言いながらも、何故か
口からヨダレを垂らしていた。
「優斗になんて邪魔されてたまるか!!」
「俺は今日こそ絶対、この目で梨乃ちゃんを拝むんだ!!」
「梨乃ちゃんをこの目で…!梨乃ちゃんをこの目で…!」
「梨乃ちゃんをこの目でぜったいっっ!!」
『うぉりゃあああああ~~っ!!』
『とぉおおおおおおーーっっ!!』
小野寺は門に勢いよく飛び付くと、
無我夢中で上によじ登り始めた。
門に足をかけてよじ登る姿はこそ泥。いや、ただの不審者に近い。
そして、門の上に登って地面に著地しようとした瞬間。その手前で誰かに後ろから、制服を引っ張られた。
『うぉっっ!!』
小野寺は後ろから學生服のYシャツをグイッと摑まれると、そのまま後ろへと落ちた。
彼は門を越えるどころか、梨乃にも會えず。小野寺の野は、そこで阻止された。
地面に倒れると小野寺は自分の頭を片手で押さえて、キッと睨み付けた。
『いてぇなバカ野郎っっ!!』
『どこのどいつだ!?』
『俺の可憐な野を阻止する奴は!?』
そう言って睨み付けた先には優斗がいた。そしてその隣には、爽やかな顔で挨拶を
してきた蓮一が立っていた。
『げっ…!!』
優斗は上から冷めた眼差しで彼を
見下ろしていた。
その無言の威圧は、半端なかった。
小野寺は2人を目にすると、その場で顔をひきつらせて凍りついた。
「な~に、やってるのかなぁ~?」
「えー、小野寺~?」
優斗はそう言いながらも、顔に管が
浮いていた。
「ここはどうみても中等部の門だよな?」
「朝から校舎間違えたのかぁ~?」
「いやいや、そんなはずないよな~?」
「お、お兄様……」
小野寺は優斗にとんでもない所を
目撃されると、顔が青ざめた。
「この首にぶら下げてるカメラは何だ?」
「え?なに撮ろうとしてたんだ?」
「いや、その……」
優斗は小野寺の首にぶら下げてるカメラに目をつけると、厳しい口調で尋問した。
その傍で蓮一が優斗に話しかけた。
「ホラな。やっぱり小野寺だっただろ?」
「あのダサい自転車に乗るのは彼しかいないしね――」
「れ、蓮一助けてくれっ…!!」
優斗に尋問されると、彼は思わず蓮一に助けを求めた。
しかし、蓮一は顔につけていた眼鏡を人差し指であげると、しれっとした口調で話した。 
「どうみてもバードウォッチングじゃ、なさそう。て言うか、盜撮?」
『おい!お前ぇーっ!!』
しれっと話す蓮一に小野寺は、すかさず
ツッコミをれた。
「ほー、盜撮か。確かにカメラ持ってる時點で怪しいしな。コイツなら十分にありえる」
「まさかそのカメラで、子中學生を盜撮しに行こうとしたのか?」
「いや、違うな。お前の魂膽はお見通しだ。それでうちの妹を盜撮する気だったんだろ?」
「どうだ。図星だろ?」
優斗はそう話すと、瞳の奧が
キラっとった。
「ば、馬鹿なこと言うなよ2人とも…!?」
「俺が盜撮だなんてそんな…!」
小野寺はとっさに弁解をしようとしたが、2人は怪しんでいた。
「一つ言っとく。このカメラで他の子を撮るのはお前の自由だが、うちの妹を撮ろうとするなら、俺がタダじゃおかないからな――」
「そんときは、こんなカメラこうしてやる…!」
優斗はそう話すと、彼のカメラを片手で握り潰した。
レンズにヒビがると、小野寺は聲を
上げてカメラを取り返した。
「な、何するんだよ優斗…!!」
「このカメラ高かったんだぞ!?」
「ふん、そんなこと知るか。ゲスの極みな奴に、うちの可い妹を撮らせてたまるか。もっともお前は害蟲駆除の対象だけどな」
「なっ…!?」
「行くぞ蓮一」
優斗は小野寺にそう言って吐き捨てると、隣にいた蓮一に聲をかけて立ち去った。
小野寺は優斗の言葉に度肝を抜かれると、その場で呆然と立ち盡くしたのだった。
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