學してから2週間が過ぎた。

僕達もそれぞれ高校で新しく出會った友人も出來て、話したり、一緒に遊んだりする機會はしだけ減る。

といっても、本當にしだけ。

大僕と沙羅、瑛彥に環奈が集まってお晝休みとかは過ごしている。

近況だけど、まず、環奈はバイト先が決まったようだ。

近所にあるコンビニで働いているらしく、僕はまだ行ってないけど、瑛彥が行ったら環奈に通報されて一悶著あったようだ。

それと沙羅の部活だけど、まだ決まっていない。

沙羅は焦點を絞ってテニス部、吹奏楽部、帰宅部の3つまで絞ったらしい。

帰宅部に至っては部活ではないけど、「家事をやって家でゴロゴロするのもありね」とのことらしい。

何をするかは沙羅次第だけど、沙羅がってくれないと僕も部しずらいのだ。

因みに瑛彥は今、無所屬だ。

學校が終わったら僕達に付いてくるか速攻帰宅の2択である。

そして今日――

「……テニス部はやめるわ」

放課後、沙羅がテニス部への部を選択肢から外した事を屋上で告げる。

フェンスに寄り掛かる僕と瑛彥は顔を合わせ、どうしたのかとはてなを浮かべた。

因みに、環奈はバイトですっ。

「どうしたよ、沙羅っち？　テニスしてるの似合うと思うぜ？　青春だしよ」

「……上級生に際を持ち掛けられたわ。もう行きにくいし、子の先輩にも目付けられそうだし、やめるわ」

「……それは愁傷様だな」

「あはは、沙羅はモテるね〜……」

げんなりとする沙羅だけど、これで際を持ち掛けられるのは高校にってから6回目だ。

高飛車な格だけど、凜とした立ち振る舞いであり スポーツも勉強も右に出るものは居ない事から高嶺の花として見る男子が多いようだ。

その事で僕も他の男子生徒から沙羅について聞かれることもあるぐらいに。

可いし、明るいし、堂々としてるし……僕も姐さんと呼ぼうかなぁ。

なんて、そんな事をしたらぶっ飛ばされるだろうけど。

「あのねぇ、笑い事じゃないのよ？　私の青春ドラマを邪魔しようとするミジンコのようなクソガキ共をどうにかして！　アンタ達も奴らの邪魔しなさいよ！」

「ものスゲェ言い様だな……」

「沙羅、あんまり汚い言葉使っちゃダメだよっ？というか、モテたいんじゃなかったの？」

「うっさいわよっ！　程度のしれた輩にモテても嬉しくないわっ！！　あーもー！　私にはこれからイケメンで家庭的不幸にみまわれた、しかしどこか優しい主人公が現れるはずなのに……！」

「おっ、ここにイケメンがいるぞー？　どうだよ、沙羅っち？」

「アンタなんかを彼氏にするぐらいなら、學校全を舌で掃除した方がマシよ！」

「……以外と俺って嫌われてるよな」

ガッカリした様子も見せず、冷靜に判斷する瑛彥。

でも、沙羅のヒロイニズムは酔っぱらいレベルじゃないよね……。

「というか瑞揶！　アンタは関連の話ダメなんじゃないの！？　なんで普通にしてるのよ！？」

「え？　確かに、僕本人に告白とかされたら気持ち悪くなるけど、他の人のコイバナは大好きだよ？」

「舐めとんのかぁああああ！！！！」

「いたたたたっ……」

沙羅に襟首摑まれて背中をバシバシ叩かれる。

力加減はしてるんだろうけど、やっぱり痛いよ……。

「……はぁ。こうなったら部活を作りましょ」

『……え？』

沙羅の突然の提案に、僕も瑛彥も間抜けな聲を出す。

部活を作る？

どうして突然そんな話になるんだろ……。

「放課後をこうして使うのは勿無いわ。部活を作り、私のけれられる人間を部活に勧していく。どうよ！　部員1號2號！？」

「……もう俺たち、既に部員確定かよ」

「あはは。でも、一緒の部活だったら楽しいよね」

僕としては賛だった。

仲の良いメンツで集まれて、一緒に放課後を過ごす。

それっていつもと変わらない気もするけど、部活なら何か目的を持ってやるし、メンバーも増えるなら楽しそうだ。

「……まぁ、楽しそうだから俺も構わねぇけど、どんな部活をやるんだ？」

「ふん、私達の共通點は音楽よ」

「沙羅っち、フルートもまともに吹けなかったじゃねーかよ……？」

「黙りなさい。あれはこれから上手くなるのよ！」

「強引だな……」

瑛彥が茶々をれたりしているけど、確かに沙羅のフルートはまともな旋律じゃなかった。

それはもう、騒音とか雑音のレベルで、霧代の事が考えられないくらいで、それで病まずに済んだのはまた別なんだけど。

「とにかく、音楽関係で人を集めるわよ！顧問は擔任にアタックしまくって問答無用で通すわ！」

「……逞たくましいよなぁ」

「僕の5倍くらいは男らしいよね……」

「何言ってんのよ。暇なら校行って勧でもして來なさい！」

『……はーい』

こうして僕達下僕1號2號兼、部員1號2號は校を散策し始めるのだった。

◇

勧に駆り出された僕と瑛彥は黙々と校を散策していた。

時々出會う先生にあいさつをし、出會った生徒にはとりあえず勧を持ち掛けてるけど、果は中々出ない。

「あー、ダメだなぁ……勧という名目でナンパしてぇのにの子いねーし」

「放課後だし、普通の生徒はとっくに帰ってるよね。男問わず、殘ってる學生さんはないよ」

「だよな〜……」

今日のところは諦めた方が良いんじゃないかと思いながら、1－7のクラスを覗くと、中には1人の生徒が殘っていた。

一番の後ろの席に座って電気も付けず、慎重な様子でペンを握り、何かを書いている。

僕と瑛彥は顔を見合わせて頷き合い、教室の中にった。

「あーあー、ちょっといいか？」

「…………」

「……聞いてないね」

「つーか聞こえてねーな……」

近くまで寄って聲を掛けるも、顔を上げることはない。

姿をよく見るとスカートを履いていて、の子のようだ。

凄く集中して書いているけど、その紙を覗くとアルバイト許可証の申請用紙だった。

「……なんでこんなもん必死になって書いてるんだ？」

「いや、僕に訊かれても――」

「できたぁあ！！！」

『うわっ！？』

突然が顔を上げ、用紙を掲げる。

用紙には埋めるべき項目が埋められていて、どうやら書き終えたらしい。

名前の欄には工藤理優くどうりゆという文字が書かれていて、それが彼の名前なんだろう。

「……って、あれ？」

なんの気配を察知したのか、彼は振り返って僕達の顔を互に見比べた。

クリクリとした瞳を持ち、顔でショートヘアの黒髪を揺らすはやがて震えだし、僕の顔を見ながら震えた聲で尋ねる。

「あっ、ああっ、あの……な、何の用……でしょうか？」

しどろもどろでおぼつかなくて、今すぐにでも泣きそうな聲。

しその様子に驚愕しながらも、できるだけ優しめに、笑って答える。

「勧だよ〜。音楽系の部活を作るから、校に殘ってる生徒にらないか聞いて回ってるんだ〜」

「えっ、えええっ、ああ、あう、そ、そうですすすか……」

「……今のはどういう発音なんだ」

戸うに瑛彥がツッコミをれる。

確かに、すを3連続で言うのは凄いよね。

「別に、怖がらせるつもりはないんだよ？嫌だったらもう出て行くから、ね？」

「えっ、そのっ……いっ、嫌では……ない、ですが……」

「……うん、ゆっくりでいいから、るか聞かせて？」

「……ごっ、ごめんなさいっ。私、その……貴方達とは仲良くなれないですっ！！！！！」

「…………」

勧をしただけなのに、鬼気迫る形相で仲良くなれないと言われた。

……えー、なんでだろ？

「……スゲェ大膽な斷り方だな」

瑛彥が呆れ半分にそう言うけど、正論過ぎて僕も心してしまう。

「……そっかそっか、急に話し掛けてごめんね？あ、これ怖がらせたお詫びに……」

ブレザーのポケットからイチゴミルク味の飴を1つ取り出す。

それを機の上に置いて、僕は踵を返した。

「じゃ、またどこかで。行くよ、瑛彥」

「へいへーい……」

僕が先行して廊下に出て、その後からは瑛彥も続いた。

勧したのに失敗したし、やっぱり上手くいかないなぁ……。

「あーあっ、今の奴酷過ぎるだろ。いきなり仲良くできない！　だぜ？」

「人見知りなんでしょ？　誰しも瑛彥みたいに堂々としてないから」

「……それでもなー。仲良くできないとか言われて引き下がれねぇなぁ」

「……え？」

引き下がれない、っていうことは――？

「俺、あの子と仲良くなるわ」

と、いうことらしい。

「……嫌がらせはしないでよ？」

「わーってる。ま、今は勧だ。明日から行くぞ」

「……って、僕も強制なんだね」

セットで僕もあの工藤という子と仲良くするよう頑張るらしい。

……これだけ怖がられたのに、果たして仲良くできるんだろうか？