《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第十八話
「響川ぁー、羽村はどうしたー?」
「保健室に行ってますよ〜」
4時間目の授業中、昭彥が居ないことに気付いた先生に問いただされるも、適當な噓を言って誤魔化す。
本當はこんな事で噓をつきたくもないものなんだけど、仕方がない。
そして一方、瑛彥は何してるかというと――
◇
第一に、仲良くなるためには相手をよく知るべきである。
by瑛彥。
……というわけで、俺は電気をる超能力により、靜電気になりきって7組の教室にあるテレビ畫面に侵している。
テレビ畫面って靜電気からすれば埃がいっぱいで気持ち悪りぃが、そこはしゃあなしだ。
んでもってあの子だが、工藤理優りゆというらしい。
瑞っちの言うように人見知りのようで、地味でし暗い格に思えるし、授業も慌てふためきながらけている。
しかし、
(あの子、可いぞぉぉおーーーー!!!)
「先生〜、なんかテレビがガタついてませんか?」
「ん? 誰か超能力で弄ったのかしら? 後で理の先生に診てもらいますね〜」
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おっと、興のあまりにいてしまったか?
まぁ授業終わるにしてもまだ時間は十分にある、監視を続けるとしよう。
いや、いっそ床に帯電して子のスカートを覗きに覗いてやろうか、ぐへへへへ――
「――はぁぁああ!!」
バキンッ!!
(――ぬぉぉおお!!?)
教師のが拳でテレビ畫面を砕する。
な、なんだと!?
「先生!? どうしたんですか!?」
「いや、ちょっとテレビから邪気をじて……」
(いやいやいや! 邪気ってなんだよ! どんなしてんだこの人!?)
これ以上ここに留まるのは命の危険をじるため、俺は側のものに帯電しながら教室を出るのだった。
結局、有力な報は得られていない。
得られたのは目がクリクリしていて小みたいに可いということ。
さてさて、勧に熱をれますかねぇ。
「瑞揶は今日、先に帰ったわ。仕方ないから私が一緒に、その理優って子を勧してあげるわよ」
放課後の屋上ではいつも通り沙羅が待機しており、俺と2人なのが嫌なのか、とても暗い顔をしていた。
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やれやれ、俺の魅力に気付かないとは、沙羅もまだまだ子供だぜ。
という冗談はさておき、
「瑞っちから話は聞いてるな? 早く行こうぜ、今日も殘ってる保証はないだろ」
「安心しなさい。既に手は打ってあるわ」
「マジかッ!?」
「ええ。1-1に呼んであるわ」
「よし! 行くぜ!」
「え、速っ……」
俺は屋上から出て校舎に戻り、階段を駆け下りる。
2階分降りてさっさと1-1のクラスにると、中央に子が2人座っていた。
「……こことかどう? 時給900円でシフトも自分で選べる。昇給あるし、週2からだし、安定してると思うよ?」
「……そう、ですね。でも、キッチンはちょっと自信がない、かな〜、と……」
もう既にアルバイトを始めている環奈っちが求人冊子を見ながら工藤理優――否、理優っちにバイト先を勧める。
なるほど、これなら上手く足止めしているな。
「おーっす」
手を振りながら室にると、2人は冊子から顔を上げて俺の顔を見た。
「おーっす、瑛彥。ウチがしくなって來ちゃった?」
「え、あ、昨日の……」
環奈っちは軽口を叩くほど気安く返事を返してくれるが、理優っちは怯えたように環奈っちにくっ付いた。
「生憎、今日はお前よりそっちの子に興味がある訳だ。可いだろ?」
「あーねっ。この子可いよね? フフフッ、羨ましかろう」
「えっ、ちょっ、環奈ちゃん……」
神奈っちはニヤニヤ笑いながら小のような理優っちを抱きしめる。
うおおおおおおおおおお羨ましぃぃいいいい!!
「変われ!」
「嫌よ。あ、変わってもいいけど警察呼ぶよ?」
「くっ……男不平等だ!」
「瑞揶にでも抱きついてればいいじゃない。瑞揶も可いでしょ?」
「男同士で抱きつくのは熱い友が生まれた時だけと相場で決まってんだよ!……まぁ、こうしてお前らが抱き合ってるのを見てるのも、これはこれでいいのか」
「結局アンタは変態なんだね」
「男たるもの、変態でなくては」
上手く話をまとめ、話題の転換を行う。
「ところで、昨日はよくも仲良くできないなんて言ってくれたな!」
「えっ!? あっ、ああ……」
「そんなこと言われたからには意地でも仲良くなってやるから覚悟しろこの野郎!」
「の子に向かって野郎って言うんじゃないよ」
冷靜な判斷の叱責を環奈っちからける。
こ奴、中々やりおるわ……!
「……とにかく、俺と仲良くしてくれ。そして部活にってくれ」
「あ、あの……その、ですね……」
「ったらいいんじゃない?」
おどおどする理優っちの言葉を遮り、環奈っちは俺にとって都合のいいことを言ってくれる。
ほう?
「え、で、でも……私、人見知りだし……それに……」
「バイトすんなら人見知りは良くないでしょ? 面接で落とされたいの?」
「……うっ」
環奈っちが痛いところを突いていく。
確かに、相手の目を見て話せない店員って採用される可能は低いだろう。
「部活……といっても、沙羅の言うやつはただの遊びだと思うけど、人は集まる。悪い奴が居ないのはウチが保証するから、ってみれば?」
「……うう、でも、私なんかがったら――」
「大歓迎よ」
再び理優っちの聲が遮られるが、遮ったのは環奈っちじゃなく、ゆっくりと室してきた沙羅っちだった。
「弱い自分を強くするのも青春よ。部長である私が部を許可し、退部はいつでも自由にする事を保証するわ」
「……沙羅っち、なんでも青春なんだな」
「黙んなさい」
勧する理由がそんな事でいいのか。
可いから勧してる俺が言えた義理でもないんだがな。
「出り自由よ?抜けるにしても別に、その時はその時。とりあえず仲良くしてみないかしら?」
「え、でも……」
「アルバイトするんでしょう? 他人と話すのに慣れること。あわよくば、友達になること。それになんの戸いがあるのよ?」
「…………」
理優っちは黙し、目を半分閉じた。
なにかしら、別に理由がありそうだ。
「……私、仲良くなれません」
「なんでよ?」
「……私の超能力、“人を呪う力”なんです……」
「…………」
辛そうな表で言われた言葉は中々に重苦しいものだった。
超能力、それはい良いものも悪いものもある。
きっと、悪い超能力に當たってしまったんだろう。
俺たち人間は、超能力を選べないから。
呪う力というと、不幸が連続して訪れたりするんだろう。
最悪の場合は死んだり――。
それを危懼して、友達になれないというのか。
「その程度だったら、私は全然問題ないんだけど」
沙羅っちは聲の調子を全く変えず、焦りもない様子で呟いた。
「えっ……」
理優っちはその言葉に驚き、沙羅っちの顔を覗き込む。
今の能力を話してもけれるというような沙羅っちが珍しかったのだろう。
「俺も全然構わねぇよ」
「ウチも、寧ろその程度で友達になれないなんて言われても困るんだよね」
「え、えっ?で、でも……みんな、死んじゃう可能だって――」
「……私は魔人だし、上空1000mから落ちてきた鉄骨すら片手でけ止められるわ」
「ウチも魔人。ダンプに跳ねられようがピンピンしてるぐらい頑丈だよ」
「俺の超能力は雷をったり自分を雷にしたりだ。なんか理ダメージけそうになったら電気になってけ流すぞ?」
それぞれが死ぬ可能を否定する。
魔人はさすがとしか言えないが、俺も超能力が良いからほぼ死なないしな。
「ね? 不幸って言っても、その程度でしょ? 」
軽い口調で沙羅っちが訊き返す。
「……いいん、ですか? 私、能力が上手く制できてなくて……いつ発するかもわからないんですよ?」
「財布とか攜帯無くすようなことが無ければ問題ないわ」
「ウチはシフトを一週間フルで組まれなきゃ問題ない」
「俺は何でもいいけど、とりあえず可い子と仲良くしたいぜ」
「人が真面目な話ししてんのにふざけた事言うなぁあー!!」
「いてぇー!?」
沙羅っちの回し蹴りが俺の背中にクリーンヒット。
おおっ……背骨が折れるかと思った。
「とにかくっ! 貴方は部決定よ! わかった!?」
「はっ……はいっ」
「んっ、良い返事。じゃ、私はちょっと瑞揶に電話してくるから、また後でね」
やるべきことはやったと言わんばかりに沙羅っちは凜然とした歩きで退室する。
沙羅っちはリーダーシップを取るのが上手いし、言葉が心強いだな。
頼もしい反面、だからと甘く見たらいけないな。
ま、異能だらけのこの世界で、甘く見るなんて冗談でも言えんがな。
「とにかく、解決だな。よろしく頼むぜ、理優っち」
「えっ、えっ……はいっ……あ、ありがとうございます……」
顔を伏せて謝の句を述べられる。
最終的に部にれたのは沙羅っちだし、俺は何も言わなかった。
「……ちょっと、どうしたの?」
環奈っちが抱き著いている理優っちの何かを気に掛けた。
「ん? どうした?」
「……ご、ごめん、なさい。友達が出來たの、隨分、久しぶりだから……」
『…………』
嗚咽混じりのその言葉だけで、俺は理優っちが泣いていたと理解した。
能力が能力だから、友人を作ってこなかったんだろう。
なるほどね……。
(――脳の電気信號に異常が見けられます。誰か電気系の超能力者が――)
(このままでは植狀態に――)
…………。
……俺にも僅かだが、そんな事があった。
人間の脳は電気でいているから、電気をる俺は避けられてた。
似た部分があるが、期間が長い分、理優っちは辛かったんだろう。
俺たち自か悪いんじゃなく、能力が悪かった。
それだけで孤立させられてしまうのは、嫌だもんな。
「……理優ちゃん可いね〜。ウチの妹にならない?」
「待て環奈っち! それは俺のセリフだ!」
「……い、妹にはなれませんけど……な、仲良くしてください……」
結局、環奈っちの言葉でなぁなぁになってしまったが、この先仲良くやっていけそうだ。
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