《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第三話

瑞揶くんの心の中から観測するだけじゃ、どうやら現狀を知るには足りないようだ。

私は瑞揶くんの視點からの観測とともに、ナエトくんの視點からも観測するようにした。

今後中心的に活するのはこの2人だろう。

「……瑞揶くん」

彼が心配で名前を呟く。

彼には6%と言った。

それは、彼が強くなったから。

いつもの貴方なら解決できないような問題も、円満にできると思った。

しかし、どうやら事態は悪天候に向かい続けているらしい。

もはや彼が抱え切れる問題じゃないだろう。

「とはいえ、きゅーくんのやった事だしなぁ。私が干渉していい問題じゃないよね……」

なりなら彼の作った世界といえど、関わるのは悪くないだろう。

しかし、彼が方針を決めて行っている事に私がちょっかいを出す権利はどこにもない。

彼は自由、誰かに止める権利はもとよりないだろう。

「……困ったなぁ」

私はおそらく――いや、瑞揶くんはおそらく、もう一度死ぬだろう。

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不死、それを付隨したのは知識の中途半端な神に近いだけの存在で、神々の長達である律司神からすれば簡単に不死で無くせるだろう。

きゅーくんが直接、瑞揶くんに手出しをするなら、あるいは――。

「…………」

私もくかもしれない。

霧代ちゃんと瑞揶くんの誓いはなんとしても葉えてあげたい。

2人が幸せになれなかったなら、それ以上の悲劇は無いのだから――。

僕は狂ってしまったのだろうか。

あれからどうやって山を下ったのかをまるで覚えていない。

ここはどこだ、河岸楽か。

僕は街に帰ってきたのか。

そうか――。

…………。

「…………」

発する言葉が見當たらない。

ビルの間から差し込む傾いた夕が目に痛かった。

多くの足跡たちが立ち止まる僕を見てまた歩き出す。

大通りの歩道に僕は立っていた。

ここから學校までは歩いて10分ぐらいか、なんて脳で試算して、僕は歩き出した。

もうきっと放課後だろう。

みんな、いないかもしれない。

しかし――會わなくてはいけない。

「……サイファル」

全ての元兇は彼ではないか。

僕は彼に、會わなければ――。

…………。

……。

「ふにゃーん」

「……アンタは相変わらずね」

家に帰って沙羅の部屋に行くと、彼はベッドに座ったまま呆れて出迎えてくれた。

僕はバタバタと駆け足で沙羅の近くに寄り、ベッドに腰掛ける。

「怪我、大丈夫?」

「治さないくせに何言ってんのよ」

「えー? ……ごめんなさい」

「……いや、別にいいけど」

なぜか赤くなってそっぽを向く沙羅。

……ふにゃー?

……よくわからないからいいや。

「……ねぇ、瀬羅は?」

「リビングにいるんじゃないの? 午後から見てないわよ」

「えーっ? リビングに居るなら気付くよ……」

「そうよね。なら、どっか出掛けたんじゃない?」

「かなー……」

どこかに行ってしまった瀬羅の事が気掛かりだ。

どこ行ったかなぁ……。

「……ねぇ、瑞揶?」

「ん……?」

「……2人きりね」

そう言って、彼は僕の手を優しく握った。

怪我のだというのに、どうして今、そんな意識してしまうようなことを……。

「……瑞揶、どうする? ここに怪我してけないの子がいるわよ? 男なら、ほらっ……」

「え、ええっと……」

いつもとんがった彼の聲がしおらしくて変な気になってしまう。

後ろからそっと沙羅が抱きしめてきた。

……あったかい。

……うぅ、ここは流されちゃダメだっ。

うぅ〜……。

「……冗談よ。ふふふっ、瑞揶は可いわね」

「……にゃ?」

不敵に笑い、頰にキスをしてくる。

じょ、冗談……?

……安心していいのか、悪いのか。

にんまりと笑う彼は頰を桃に染めていて、満足そうだ。

……うぅ、そんな顔も可いですよぅ。

「ねこさん、沙羅はこんなに立派に育ちました! もう悔いもありません!」

「……何言ってんのよ?」

「沙羅がこんな良い子に育って良かったなぁ、って。よしよし、こっちおいでっ」

「……なんなのよ」

むすーっとしながら沙羅が布団を起こして僕の隣にちょこんと座る。

……隣に居るだけなのに、ドキドキする。

って、こういうものだったなぁ……。

「……沙羅、もう傷付けたりさせないから」

「そうよ、男なんだからちゃんと私を守りなさい」

「あはは……カッコいいところ、見せないとね」

「……期待しとくわ」

そっと、どちらからともなく寄り添う。

コツンと頭同士がぶつかるも、2人で微笑むのみ。

こうして座っていられたら、幸せだなって。

永遠に2人でいられたらって思ってしまう。

平和にほのぼのと、ができたなら……。

しかし、それは葉わないようだ。

――ドォオオオオオオン!!!

「わわっ!?」

「な、なにっ!?」

大きな音がした。

耳の痛くなるような音、それは一瞬家の窓を白くらせ、消滅する。

なんだろう、何が起きたのだろう。

そう考える暇もなく、外から怒聲が聞こえた。

「――サィファルゥゥウ!!!」

沙羅を呼ぶ聲の持ち主を一瞬で識別する。

の事をサィファルと呼ぶのは1人しかいない。

ただ、そんな友人は荒れ狂っているようで、すぐに窓から彼の姿を見ようとは思わなかった。

「出てこいサィファル! 僕と戦え!」

「……なんか言ってるわね」

「……どうしようかー」

僕が頭をひねると、沙羅も腕を組んで考え出した。

ナエトくんが沙羅に怒ってるのはいつものことだけど、わざわざ家に來ているあたり、今度は勝手が違うようだ。

「警察に通報すればいいんじゃない?」

「……友達相手に通報っていうのはどうだろう?」

攜帯を取り出す沙羅に僕は苦笑した。

ナエトくんが暴れようと家は結界が張ってあるから壊されないし、このまま居留守にしてもいいんだけどね。

そのうち近所の人が通報……するかなぁ?

それもちょっと、うーん……。

「……僕が出てくるね」

「え、行くの?」

「どっちにしたって明日學校で會うし、わざわざ來てくれたんだから出ないと」

「……そ。まぁ気を付けなさい」

「あはは……」

注意されつつ僕は沙羅の部屋を後にした。

1階に降りてバタバタしながら玄関に向かう。

そしてギィ〜っと扉を開けた。

「はいはい、どーしたのナエトく――」

「死ね」

ナエトくんの呟きが聞こえた剎那、に鈍痛がじた。

前を見ると、ナエトくんの手からびる刀が僕のを貫いていて――

「あっ……」

口から出たのは意味をなさない聲だけで、刀が引き抜かれると同時に僕は倒れ伏した。

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