《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第五話
起き上がると、やけに元がベタベタしているのをじた。
まだ刺されてそんなに時間が経っていないらしい。
「いったた……って、わぁっ!? 家が!!」
起き上がると、崩落しきった家が目に付いた。
家の半分以上が吹っ飛び、2階にある沙羅の部屋が玄関のここから見える。
茜の空から照らされる夕が家の中と瓦礫の山を照らし、外からはご近所さんが騒ついているのが聞こえた。
「あっ、あの! 大丈夫ですからっ! 警察も救急車も大丈夫ですから〜っ!!!」
力の限りぶと、1人の男が僕の方に寄ってくる。
その人は青い制服を著ていて、バイザーの付いた帽子を目深に被っている。
所謂いわゆる、おまわりさんだった。
「君、大丈夫か? にが……!」
「僕の超能力で死ぬこともないから心配ないですっ! 家も直すから、家の中見ないで〜っ!!!」
おまわりさんを外に押し出して振り返り、家が元どおりになってしいと願う。
すると、瓦礫ばかりで廃屋と化した家は瞬きをすると元どおりになっていた。
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「ほらっ、大丈夫ですからっ! 野次馬さんもにゃーです!」
「確かに元に戻った。とはいえ、詳しい事を聞かせてもらわなければだなぁ……」
「えー……」
野次馬さんはざわつきながらも去って行く人が多いけど、おまわりさんは僕を逃がしてくれそうには無かった。
あっ、こういう時は……
「僕は【休日の終止符】です。その一環でちよっとこのようなことに……」
「【休日の終止符】? ……ああ、そうか、あの坊主か。という事は……」
「響川警部の息子ですにゃー。僕に何か意見するですかにゃ?」
そう言って家の表札を指差す。
おまわりさんは表札を見て顔を引きつらせた。
上司の息子に何かする気はないだろう。
「いやぁ、すまん。俺の勘違いだったようだ」
「そうですにゃ。おまわりさんは、パトロールしてくださいっ」
「ああ、わかったよ」
苦笑しながらおまわりさんは白い自転車にまたがり、夕焼けの向こうに去って行く。
……本當なら話すべきだけど、ただの喧嘩でこうなったとはちょっと言いにくい。
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それに……
「沙羅……」
空を見上げる。
結界に隔離されているとはいえ、僕には2人の姿が見えた。
ナエトくんと沙羅が戦っている。
ナエトくんがどれほど強いのかは知らない。
けど、沙羅がまた怪我をしないかだけが心配だ。
「…………」
止めに行こうか――と、悩む。
沙羅は同じ轍を踏むような格はしてないし、今度は油斷しないだろう。
負けることはないとは思うし、ナエトくんが戦いたいと言うなら戦わせればいいかと思うけど……。
「……よぅ、瑞揶」
「ん――?」
不意に聲をかけられる。
振り返れば夕のを浴びた、聖兎くんが制服姿で立っていた。
……家が崩壊するのを見ていたのだろうか。
「災難だな。ナエトがあんな風になってさ」
「あはは。……見てたんだ」
「近所だしな。ナエトの怒號が聞こえてきたし、心配になったぞ」
「そ、そこから知ってるんだ……」
ご近所迷でごめんなさい……。
なんだか気恥ずかしくて頬を掻く。
「ま、それはいいんだ。きたる時が來たってじだしな」
「……きたる、とき?」
「そうさ」
聖兎くんは僕を見據えながら右手を橫に差し出す。
手の中央からの粒子が集まり、一振りの剣が顕現した。
白銀の刃がに當てられて炎のように煌めく。
「……なんのつもり、かな?」
一応問い掛けた。
答えられなくとも切っ先が僕の方へ向けられてるから要件はわかるのに。
「……俺はお前を倒さなくちゃいけない。いや、どうか死んでくれ、瑞揶」
「……なんでそうなるかな。どうして聖兎くんに襲われなくちゃいけないのか、全然検討がつかないんだけど……」
「俺も沙羅が好きだから」
なんの迷いもない彼の言葉に、僕は口を開けて驚いた。
沙羅からは言い寄られていると聞いていたけど、好きじゃないって言っていた。
なのに……いや、そうだね。
本人の口からじゃないと、本當の言葉にわからないもんね……。
「……そっか」
「ああ。だから俺と戦え。戦わないにしても、俺はお前を斬るけどな」
「…………」
彼の目は本気だった。
僕に対して憎しみや怒りはじないが、まっすぐな瞳を向けられると本気なのがわかる。
彼を賭けた果たし狀。ってところだろう。
ける義理もないが、どうしてもというのなら――
「わかった、戦ってあげるよ」
「……そうかい。ここは場所が悪い。場所は用意してあるから俺と同じ場所に來い」
「……うん」
聖兎くんは指を弾くと、一瞬にして姿を消した。
僕も追いつくために、聖兎くんが行った場所に行く事を願った。
次の瞬間には、僕はどこかの宮廷の中にいた。
白い支柱がレッドカーペットに沿って規則正しく並び、その先には王座であろうか、赤と金の椅子。
屋には一面ステンドガラスがられ、からの違うを室に降り注がせている。
どこか異風の、ファンタジーな場所。
しかしそれだけだ、驚く事はない。
「ここは俺の前世の城の中なんだ」
「…………」
カツン、カツンと足音を立て、聖兎くんが支柱の影から姿を見せる。
その姿は學生服などではなく、白銀の鎧を全に纏った騎士だった。
「一般的じゃなく、神に仕える天使になるには2つしかない。1つは律司神に生み出されること。もう1つは、どこかの世界の優秀な魂を神になれる可能として仕えさせる。そのうち、俺は後者の方だった」
「……前世持ち」
「ウッ・ガァィー。俺のいた世界の第二言語で、その通り、って意味さ。クク、余談だが、どうしてお前の前世の言葉とこの世界の言葉が同じか考えたことがあるか?」
「……ない、けど?」
「不思議だろ?俺の世界の第一言語もこの世界の言語と同じなんだ。まぁ理由は簡単、世界を管理する神々は基本的に1つの言語しか使わない。それが俺たちにも降りかかってるわけ。わけのわからん言語を俺たちが作って世界中で使われたら神だって世界の観測が億劫おっくうになる。それを容認する他の神々は多いけど、この世界では1つの言語しか使われてないんだよ」
「……へぇ」
納得する話だった。
それと同時に、こんなことを知っている聖兎くんが神の使いだという事も理解できる。
「まぁその事はいい。とにかく俺は前世があった。しかも騎士、世界を救った騎士だ。お前がすげー力を持っていたとしても、俺は簡単には負けないぞ」
「……そっか」
なにやら自信があるようで彼は笑う。
それでも僕は――
――話が長いなぁ。
そうじることしかできなかった。
今まで、僕は何度も戦地に赴いてきた。
英雄、そんな風に呼ばれた人とも衝突したことがある。
だからわかるんだ。
僕が負けることはない。
「もういいよ。おいで、聖兎くん」
「……やっぱ舐められてるなぁ。神のを持ってるからって、図に乗るなよっ!!」
聖兎くんがカーペットを蹴った。
1歩、その1歩は速く長い。
人間では不可能な速さだ――しかし、魔人ほどの速さでもない。
「“strong”――」
腕を強化する。
思ったのは一撃で鉄板を砕く強さ。
あまり強くすると殺してしまうから、これでいい。
聖兎くんが迫る。
剣を両手で持って振り上げ、今にも斬らんと迫る。
僕は一呼吸でタイミングを合わせて、両手を肩の高さに上げた。
「フッ!!」
聖兎くんが剣を振り下ろす。
見える、捉えられる。
だから――
バキンッ!!!
「なにっ!?」
僕の右拳が白銀の剣にめり込む。
折るつもりだったけど、相手の使ってるのもなかなかの名剣らしい。
「丸腰だからって油斷したのかな? 僕はこの位置から君の存在だって消せるんだよ?」
「ツッ――セイッ!!」
「おっと……」
喋っていると蹴りが飛んできた。
腹部目指して飛んできたそれを手でけ止める。
きは早いけど魔人ほどじゃなければなんてことはない。
僕は戦地に行っている。
その中で何度も魔人の人と戦って、勝てないから目とを魔人に合わせてけるようにしていた。
それは今も適用してある――。
「終わり?」
「終わんねぇよ!」
聖兎くんはバックステップで距離を取り、両手を僕に向けた。
手のひらから白いが現れ、神々しいは線となって僕に襲いかかる。
「“protect”」
呟くと同時に、僕の目の前には半明な赤いの盾が現れる。
彼の白い線はこの盾に防がれ、音もなく消え去った。
「防がれるか……なら!」
「…………」
彼の攻撃は続く。
両手を振り上げ、白いを収束させて一本の大剣を生み出していた。
眩いが嫌で目を半分瞑る。
「【無効化ヴィ・クロッサ】――」
謎の言語をまた彼は呟いた。
剎那、僕の出した盾は粒子となって消滅する。
「ツッ!?」
「俺は殘念なことに、戦闘はあまり上手くねぇ。並より上ぐらいだ。だがな、あらゆるものを無効にできる力が備わってる」
「それは――」
「お前は避けられない。避けようものならそれを無効にしてやる。喰らえよ!俺のの太刀を!!!」
聖兎くんがぶ。
大剣はもはや6mを超える長さになっていて――
「――【白王剣ゼィレスト・アージャ】!!!!」
そして大剣が振り下ろされ、視界が一面が白に塗り替えられた――。
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