《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第十五話
學校に著くと、既に晝休みだった。
屋上に集まったメンツは約半分が減っていて、寂しい雰囲気が包み込んでいる。
「……まぁ世の中こんなもんじゃんね?」
環奈が購買のパンを食べながら呟く。
僕が作って來なかったから瑛彥と環奈は購買に行ったらしい。
「……こんなもんとか、寂しいこと言うなよな」
同じくパンを頬張りながら瑛彥が言葉を拾って返した。
どことなく張り詰めた空気が漂い、あわあわと揺しながら理優がみんなを諌める。
「け、喧嘩はよくないよっ。み、みんな落ち著いて!」
「ウチは落ち著いてるし……。いろいろと失うのは慣れてるから良いけどさ、戻ってくるよね……みんな」
環奈は僕の方を向いて話してきた。
今がどうなっているのか、みんながどうなっているのか、僕に尋ねてるのだろう。
……それも含めて話さないと、かな。
「…………」
言わないと……。
どうなってるか、どうするか言わないと……。
(……瑞揶くん、ホントに変わったね?)
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(……そうかな?)
(うん。だけど、その分安心だよ。じゃあね、瑞揶くん。また會えることを祈ってるよ――)
「…………」
ちゃんとの會話が脳裏によぎる。
そうだ、僕は変わった。
言おう――。
「……みんなに聞いてしいんだけど、いい?」
「…………」
「…………」
「……いいぜ。なんだ?」
3人のうち瑛彥だけが反応を示してくれた。
環奈はそっと僕を見據え、理優は目線を落としてじっとしている。
…………。
「……僕は、自由律司神のクローンなんだ。だから自由律司神にマークされてて、僕達が幸せになるため、ナエトくんやレリを元どおりにするために、僕と沙羅はこの世界を出て行こうと思う」
『…………』
3人は反応を示さなかった。
環奈はただ僕を見據え、瑛彥は口を開いて驚き、理優は俯いたまま。
誰も言葉を発さず、代わりに僕は口をかす。
「沙羅が來てないのは、魔界に囚われてるからなんだ。レリと聖兎くんは死んじゃった……けど、この先に生き返らせるよ」
「……大変なんだね」
なんでもないように環奈が呟く。
その言葉に瑛彥がムッと顔をしかめるも、何もすることはなかった。
「みんなの平和のためには、僕たちはここにいちゃ行けない。だから別世界に移住するんだ」
「……瑞っち、俺たちと別れるのか?」
「……そうなるよ」
彼の言葉を肯定すると、瑛彥は目を伏せた。
こんな唐突に別れを告げられるなんて思ってもみなかっただろう。
僕と沙羅が居なくなると、部活のメンバーはどうなるだろう。
レリとナエトくん、聖兎くんは殘ってくれるだろうか。
わからない……ただ、僕は……。
「……みんなを傷つけたくない。僕と居てみんなが不幸になるのは嫌だ。だから……」
「瑞揶くん……そんなことないよ」
安心させるような理優の言葉に、僕は目を丸くした。
そんなことないって……どうして。
「僕はみんなを不幸にしたくない。現に、ナエトくんもレリも聖兎くんも、みんな可哀想なことに……」
「それでも私は、自分の不幸を他人のせいにはしないよ。自分自、いろんな人を不幸にしてきたから……」
「……理優」
そうだ、理優は他人を呪う力の持ち主。
他人を不幸にしたくないという気持ちを一番よく分かってるはずだ。
「私、不幸になったとしても瑞揶くんと一緒に居たいよ?」
「…………」
微笑んで見せる理優の優しさは伝わる。
けど……違うんだ……。
できれば言いたくはない“これから”の予想を、歯噛みをして僕は口にした。
「……僕が言ってるのはね、この3人の誰かが死ぬかもしれないと言ってるんだよ。理優……」
「……私は死んでも――」
「瑛彥が死んだら?」
「…………」
理優は閉口した。
自分が死ぬのはいい、けど友達が死ぬ、人が死ぬのは許せるだろうか。
答えは否だろう。
僕は――沙羅が不幸になるというなら、その原因がなんであろうと破壊する。
それと同じだ、する人が不幸になるのは見過ごせないんだ。
「僕は出て行く。簡単な告別式をさ、できれば沙羅をえて、みんなでやりたい。今日の放課後……みんな、時間をくれるかな?」
「……バイト、なんて言ってられないか。もちろん行くよ」
「環奈……バイトしなくて済むぐらいお金あげるから、そんなこと言わないでよ」
「えっ……あっ、そっか。もう通貨いらんのよね」
おおーっと驚嘆する環奈はどこか嬉しそうだ。
……なんだかなぁ。
顔を引きつらせていると、瑛彥と理優も頷いた。
「俺も、もちろんいいぜ。瑞っちとは別れたくねぇが、瑞っちが決めた事だ。門出ぐらい見送るさ」
「私も、瑞揶くんにはたくさんお世話になったから……。できることがあれば言ってほしいし、お別れをするなら立ち會いたい……」
「……そっか。みんな、ありがとうね」
笑って返すと、みんなも微笑んだ。
きょうでお別れをする。
沙羅は捕まって1日中過ごさせるわけにはいかないから――。
「放課後、全員で僕の家に來て。作る時間がないから料理は買うしかないけど、いろいろ用意して待ってるから……」
言うべきことを伝え終えると、僕は靜かに立ち上がる。
「……どこ行くのさ?」
環奈がジト目で僕に問いかける。
僕はクスクスと笑い、答えた。
「ちょっとお姫様を救いにねっ……」
「……うわ。瑞揶、沙羅のことわざと捕まえさせたんでしょ。まーそーじゃなきゃ、彼氏失格だっつって引っ叩くけどね」
「痛いのは嫌だよぅ……」
苦笑を浮かべると、環奈はフッと笑った。
「行って來なよ、王子様」
「……行ってきます。みんな、またね」
3人に手を振り、にこやかに笑って瞬間移をした。
行き著く先は――
「にゃー……大きいなぁ」
目の前にあるのは城だった。
赤黒い空の下、目前にある城門は5mを越す高さがあり、トラックが2臺橫並びに通ってもれる大きさだった。
その奧にある城は10階建てか、高さは50mぐらいありそうだ。
「凄いですにゃー……」
「なんだ貴様!?」
「こんな所で何をしている?」
門兵さんだろうか、著の上から簡単な鎧を著た中年の男2人が僕の方にやって來た。
用件を手短に話そう……。
「沙羅を連れ戻しに來ました。あっ、地下に居るんだね? 今調べたよ」
「!?」
「怪しい奴だ! 捕らえ――」
「眠ってね」
『!!?』
にこりと笑って告げると、2人の門兵さんはドサリと倒れ伏す。
……さて。
「待っててね、沙羅」
今から行くからね――。
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