自ドアでれた城は、どこかのホテルのように広いエントランスが目に付いた。

僕を見つけたスーツにを包んだ男が1人、ニコニコと笑顔を浮かべて僕に近寄ってくる。

案役の人だなぁと思いながら、僕も笑顔で返した。

「こんにちはジェントルマン。よろしければ用件をお承りしますが……？」

「サイファルを取り戻しに來ました。あと、魔王様かな？　その人にお話があります」

「…………？　君はここに迷い込んだのかな？」

「そんなことはないですよ？　ちゃんと此処に來た、侵者・・・です」

「……左様で」

すると案役の人はカウンターの方に何か目配せをした。

カウンターに居るは頷いて何かしているようだったが、僕は気にしなかった。

僕は【確立結果】であらゆる無効化すら効かないようにした。

何が來ても僕は怖くない――。

「どいてくださいね」

「…………ッ」

案役の人の橫をすり抜け、僕は奧へとって行く。

剎那――廊下の向こう、天井の端から3つの監視カメラがこちらを向いた。

「……ん？」

3つの監視カメラの橫に白いパイプのようなものが両脇に現れる。

合計6つのパイプからは――紫の線が放たれた。

「……綺麗だね」

笑って想を呟くと同時に線は空中で停止し、監視カメラへと跳ね返る。

黒煙と轟音を纏いて発するも、僕は迷わず前を進んだ。

割れる電燈、暗くなる視界は攜帯のライトでしのぐ。

咄嗟に現れる刀を持った魔人たちは速やかに眠らせた。

「階段……めんどくさいなぁ」

地下に降りたいけど、階段まで降りるのが億劫だった。

僕は化するよう念じ、地下へと降りる。

地下まではまだ警備員さんたちが來てないのか、人は居なかった。

しかし、ここは薄暗くて1階の高級ホテルのような裝とは段違いだ。

否、それもそのはず。

この場所には、鉄格子しか無いのだから。

「沙羅〜っ、どこ〜？」

カツンカツンと冷たそうな鉄の床を歩き、沙羅を探す。

鉄格子の中にはおじさんや若者、髪がお化けのように長いなど、たくさんの人がいた。

此処は魔城だし、とても危険な人がれられてるんだろうなぁと思いながらてくてくと歩いていた。

「遅いわよ……」

と、し怒ったような聲を聞いて足を止める。

聞きなれたしい聲に導かれ、僕は1つの鉄格子の前に立った。

「……早く開けなさいよ。ここクサいし、さっさと出たいわ」

文句を言いながらガシガシと鉄格子を揺らす沙羅。

その後ろに落ちてるお菓子の箱は見なかったことにしよう。

「よいしょっと」

鉄格子を摑み、そのまま押し広げていく。

普通に考えれば、非力な僕だとビクともしない。

だけど、超能力を使えばこんなものはこんにゃくみたいなものだ。

鉄格子を捻じ曲げてスペースを作り、沙羅を引っ張り上げる。

「……もっと劇的な救出劇を期待してたわ」

「じゃあ今から魔王様やっつける？」

「それもいいけど、面倒ね。……まぁ、一応――」

不意に、沙羅のが僕の口をふさいだ。

救出後のキス――といっても劇的じゃないけど、甘いものだった。

一度を離し、また僕からキスを。

互に何回か繰り返してコツンとおでこを當てあい、笑う。

家ではよくやる、僕たちのキス。

「……沙羅」

鼻先がつくほど近い距離にいる彼の名を呟く。

手を取り合い、結んだ指を強く握って再會を喜んだ。

「……してる。離れてた數時間の間でさえ、沙羅がしかったよ……」

「ふふふっ、嬉しいこと言ってくれるわね。もっと好きになっちゃうわ……」

「家に著いたら、いっぱいぎゅーってするからね」

「……ええ」

笑い合い、優しく抱きしめ合う。

沙羅のに食い込む指先、彼のがおしい。

だが、その抱擁も長くは続かなかった。

「沙羅……」

「わかってるわ」

前後の通路から無數の気配をじる。

囲まれている――といっても、僕がいれば関係ない。

「どうやって出る？」

「城をブッ壊すのはどうかしら？」

「それ、ニュースになっちゃうよ……」

呆れながらに告げると沙羅はむぅーっと膨れた。

既にニュースになりそうな問題を起こしてるけど、沙羅が関わっているから表沙汰にはならないはず。

大問題にはできない――。

このは自由律司神のもの。

こので大事を起こしていれば僕は殺されるかもしれない。

最後の最後で、それはダメだ。

だから、なるべく穏便にね……。

「転移で一気に行くよ、沙羅」

「はーいっ」

沙羅は僕の腕に抱きついた。

嬉しさから微笑みあって、僕らはそのまま転移を果たした――。

「――へぇ、やっぱりお城なんだ」

転移後の場所は、所謂いわゆる玉座の間というところだろう。

天蓋からす赤いが金の玉座を輝かせる。

そこに座るは黒い著を著た大男。

髪は逆立ち、手の太さから筋質であることがよくわかる。

はめられた腕や肩章、寶石のついた王冠は魔の王である証だろう。

彼の両脇には同じような格好で、上に長くびた帽子を被る男が6人目に映った。

その中の1人には、ナエトくんもいる。

僕たちが転移してきたのは玉座から続く赤い絨毯の上、後ろには數人の兵士が居て、カーペットの周りには數えるのも面倒なほどの兵が整然と並んでいた。

四面楚歌な狀況と言っていいだろう。

しかし、恐怖は微塵もじない――。

「こんにちは」

いつもの、明るい聲調で挨拶を投げかける。

呆れて口を大きく開いた魔王さんとその後ろにいる王子たちはけずにいて、兵士だけが僕たちに得を構える。

「……貴方、は？」

魔王さんが僕を見て、恐れながらも口をかした。

貴方と言ったのは、過去にきゅーくんと會ったことがあるからなのだろう。

僕の姿は、自由律司神と瓜二つなのだから。

「……僕は、自由律司神のクローンです。すみませんが、しお時間を頂けますか？」

「クローン……よい。皆、下がれ」

魔王さんは応対してくれるようで、武を構えた兵たちを下がらせる。

助かった、かな……。

「お父様！　こんな奴らの言うことに聞く耳を持つ必要はありません！　あそこにいるのはサイファルですよ！！？」

と思ったら、急にナエトくんが聲を上げた。

苛立った彼の聲に、魔王さんがため息を吐く。

「黙れナムラ。死にたいのか？」

「……はっ、それはどういう意味で？」

「貴様はまだ、自由律司神の強さを知らない。彼は魔界を指先1つで消滅できるのだぞ？」

「瑞揶が……彼がそんなことできるわけない！」

「……なんでもいいけど、早くしてくれないかな？」

2人が口論を始めるのも嫌で、僕は口を挾んだ。

腕に引っ付いた沙羅の頭をでながら、辺りを見渡す。

……40人ぐらい？　いや、もっと兵士さんはいるかな。

「僕はこの場にいる全員を殺しても構わないんですよ？　沙羅を拐したお前達を殺すのに、僕は躊躇しない。話があるんだから、早くしてよ――」

冷靜な目線で魔王さんに告げる。

正直に言えば、思いっきり噓だ。

この場で全員殺せば大問題なのは間違いないもの。

だけど、魔王さんからすれば僕の事なんてわからない。

僕の気迫や危害をじ取れないなら、信じるしかないはずだ。

「……ナムラ。貴様はもう喋るな。これは王の命令だ」

數秒置いて、魔王さんがナエトくんに指示を下す。

ナエトくんは歯噛みをし、悔しそうにしながらも言葉を発しなかった。

さて、會談だ――。

言うことはないけど、やる事はある。

ナエトくん、僕はここで――

生き返らせるからね――。