《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第十八話

「ただいま〜っ」

「……おー、さっきぶりの我が家ね」

僕たち2人は玄関に転移して帰ってきた。

廊下を抜けていつものリビングに向かう。

暗いリビングには窓からの日差しだけが燈りとなり、全を照らしていた。

まだ瀬羅は帰ってないらしい。

「……1時半かぁ〜」

「まだ早いわね」

みんなの下校時刻よりもまだ隨分と早かった。

どうしようか〜、どうしましょ〜と沙羅と言い合いながらソファーに座る。

途端にお互い無口になってしまい、手を繋いだ。

何か話そうにも言葉が出ない。

沙羅の隣に居られる喜び、沙羅の手を握ってる嬉しさ、どれもおしくてがいっぱいで……。

がいっぱいなのに、なんで心臓はドクンドクンとうるさいのか、訳が分からなくなる。

が熱い。

この溫が沙羅にも伝わってると思うと、余計恥ずかしくなって聲が出ない……。

「……ねぇ、瑞揶。姉さんは?」

「えっ?」

唐突に沈黙を破られ、ドキリとする。

が、質問容を聞いてなるほどともじた。

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瀬羅がどこに行ったか知らないもんね……。

「朝の件で通報されてて、警察署に……僕たちに付いてくるかどうするかも、考えてるのかも」

「……そ。私たちに付いてくるとは思わないけどね。姉さんは姉さんの道を行くと思うし」

「……うん」

「別れるのがし早まっただけよ。それに……絶対に二度と會えない、ってわけじゃないしね」

「……そうだね」

もしかしたらこの世界に帰ってくるだろう。

そうしたら、また3人で……いや、それは葉わなくても、お話だけでも……。

「……なに悲しい顔してんのよっ」

「んっ……」

不意に抱きつかれ、頰にキスされる。

ギュッと彼に包み込まれると、不安とか悩みを忘れてドキドキしてしまう。

……うん、悲しい顔してちゃダメだよね。

僕たちはこれから、未知の世界に行く。

どんな世界ともしれない――けど、人間の居る世界に行くとは思う。

意思疎通の計れる仲間は、しいから。

これからの僕たちの不安があって、いろいろと大変だけど、別れの時に笑顔で別れないと、悔いが殘りそうだ。

「沙羅、いつも勵ましてくれてありがと……。これからもよろしくねっ」

「ふふ……これからも、ずっとねっ」

「……うんっ」

沙羅の腕を摑み、頰にあてる。

目を閉じて彼溫をじ、溫かい気持ちがにひしめいた。

これから……これから……。

用なものね〜」

後ろから心したように沙羅が呟き、キッチンの様子を眺めていた。

まだ時間があるし、料理を作ろうと思ったけど時間もない。

悩んだ末に、超能力で作ることにした。

手は2本しかない、けど念力なら包丁を何本でもかせる。

今は包丁がひとりでに野菜の皮を剝いたりお玉が鍋の中をかき混ぜてたり、まな板も3枚は中に浮いてトントンと材料を刻んでいる。

こうして道を躍らせるのは初めてだけど、扱い方がわかってれば割とできるものだ。

「というか、瑞揶が超能力でポンっと料理出せばいいじゃない」

「えー? お料理楽しいよ? それに、もう使わなくなるから野菜も使っちゃわないとねーっ」

「……あっそー」

どうでもよさそうに返す沙羅。

……ふむぅ、暇かなぁ?

「沙羅ねこさん、暇なら卵割りましょう〜っ」

「……何作るのよ?」

「クッキー作ろ? 沙羅が食べちゃって、殘ってないしっ」

「ぎくっ……バレてるし」

頬を引きつらせてため息を吐かれる。

にゃーは全てを見通すのです……。

「はいっ、ボール。バターと、お砂糖と、卵♪」

ボールの中に材料をれて沙羅に渡す。

卵をじーっと見て、し困り顔をしていた。

「んー……卵白は?」

「マシュマロ作りたいから取っとく!」

「そ。……って、え? マシュマロ作れるの?」

「にゃーに不可能はないのです〜っ」

「……なんでもよくなってきたわ」

呆れ半分に沙羅が道を置いて手を洗い始める。

2人で臺所に立って、料理……。

……こういう生活が、新しい世界でもできるかな。

「……あーもう、これシャカシャカうるさいわね」

隣で沙羅がイライラしながらもボールの中をかき混ぜている。

一生懸命な姿も可いものだ。

……みんながくるまでに、僕も頑張って作らないと。

僕はさらに集中し、作業を2つ以上増やして念力を使うのだった。

空に赤みが差し、4時になる。

もうそろそろみんなが帰ると思っていた頃、意外な客人とともに瀬羅が帰宅した。

「よぅ、瑞揶」

ソファーにどっかりと座ったスーツ姿の男は、紛れもなく僕のお義父さんだった。

「お義父さん、仕事は……? 會いに來なくても良かったのに……」

「寂しい事を言うな。それに、お前がいなくなったらこの家の事も俺が始末するんだぞ?」

「売っちゃえばいいじゃん……」

ここは土地を買ったわけだから數千萬ぐらいで売れるだろう。

のものは持って行くし、売卻する分には困らないと思う。

「……最終的には売るだろうが、お前の住んでた家だからな。しは見て回りたいさ」

「……そっか」

僕が生活した家だもの、お義父さんが気になるのも道理だ。

……子供想いなのはわかるけど、そこまで想ってくれてるんだなぁ。

「それよりお前、なんでもう1人居候が増えてるんだよ。しかもの子だしさぁ……」

「え? 瀬羅は沙羅のお姉さんだよ〜っ」

「……不純異遊」

「してないですっ!」

「だといいけどさぁ……」

ニヤニヤ笑いながら僕を見てくるお義父さん。

沙羅と瀬羅は2人で話してるから弁護してくれる人もいない……。

「……でも沙羅が好きなんだって? まぁ一つ屋の下で暮らしてれば、そりゃ好きになるよなぁ」

「む、むぅ……」

「お前がしてくれてるなら良かったよ。てっきり男の方に気があるのかと思ってたぐらいで――」

「お義父さん、そんなこと言ったら口聞かないからね?」

「……まぁうん、その、なんだ。孫生まれたら戻って來いや」

「お義父さんには灸を據えた方がいいのかな?」

「冗談だから笑顔でそんなこと言わないでくれ……」

全く冗談に聞こえません。

にゃーはお怒りなのです、ぷんぷん。

「しかし、別世界に2人で駆け落ちってのは面白いな」

「……お義父さんは駆け落ちの定義を見てくるべきだよ」

呆れていると、沙羅と瀬羅がリビングにやってきた。

「なーにバカなこと話してんのよ……」

「旋彌さん、瑞揶くんをいじめちゃダメですよ〜っ」

「沙羅〜、お義父さんがいじめるよぅー!」

「なんですって!? ボコボコにしてくれるわ!」

「待て待て、いじめてないから。刀出すな、銃刀法違反で捕まえるぞ」

「私を捕まえる前にアンタの首が飛ぶけど?」

「おい瑞揶! この子怖い! 助けろー!!!」

なにやらお義父さんが悲鳴をあげ始めたけど、僕は何も気にせず瀬羅の話を聞いた。

「そっか……殘るんだね」

「もともと、私はブラシィエットに帰るつもりだったからね……。2人と一緒に行きたいけど、私にも居場所があるから……」

リビングの隅に移って、瀬羅のこれからの事を聞いた。

家を出てブラシィエットに行くということらしい。

ブラシィエットでは瀬羅の柄をずっと探していたようで、王家の後継者としても十分な素質があるとされているらしい。

生き返った母親との関係も良好だそうで、國を大きくしていこうと話しているらしい。

「……寂しいですにゃー」

「私も寂しいよー……」

「……瀬羅がにゃーになっちゃうよー」

「ふにゃーっ」

瀬羅が抱きついてきて、僕も抱きつき返す。

寂しいですにゃー、寂しいですにゃー!

僕たち結構似た者同士なのに〜っ。

「ちょっと! なに抱き合ってんのよ!」

「わ、技……キマッ……ウゴッ……」

すると、お義父さんを組み伏せてる沙羅が聲を上げる。

瀬羅と抱きつくのはいいでしょーっ。

「響川一家、勢揃いなのですっ!」

「そう言えばそうだね〜っ」

「寫真撮ろう! にゃーはみんなと撮りたいですっ!!」

「いいね〜っ。みんなで撮ろっか〜」

僕と瀬羅で勝手に決め、沙羅とお義父さんを無理やり起こし、お義父さんだけ立たせて家にいる3人は座って寄り添う。

攜帯のカメラを起し、念力で前に浮かせる。

「みんな! にゃーのポーズだよ!」

「いや、なんのポーズよそれ!」

「瑞揶は変わってないなぁ……」

「にゃー……瑞揶くん。こ、こう?」

沙羅に叩かれ、お義父さんが呆れ、瀬羅は両手を頭に乗せて耳のようにする。

し騒がしい中で、家族寫真を初めて撮った。

この世で最初で最後の家族寫真、僕たちらしさが出た、愉快な寫真が……。

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