「――転移！！！」

ぱっと思い浮かんだ回避方法を考え、ぶとともに上空に転移する。

ビル群の上空に移り変わった景は、次の瞬間に轟音と風が押し寄せた。

ビルたちは僕の方に方向転換を効かせることなく地面に衝突し、いくつかはそのまま倒壊してしまう。

避けられた、そうは思わない。

なんせこれは、【確立結果】だ――。

――ズズゥン

ビルがく。

僕を潰すまで何度でも飛んでくるのだろう。

巨の群れが再び飛び上がり、疾風の如く僕へと迫る。

「【確立結果】！！！」

防げ、全力の思いで超能力を発する。

真下に向けて手を投げ出し、ビルが直撃する手前で見えない壁に衝突した。

明な空気の壁、ギィィイインという高周波な空気振が音として伝わる。

衝突して空に向かって瓦礫が落下し、マグネットに砂が吸いつくようだ。

今は止まっていても、このままだとダメだ。

【確立結果】という、結果を決めつける力。

同じ能力のぶつかり合いで僕がアキューに勝てる目立てはまったくもってない。

だから――

「絶対の2、【未來限局みらいげんきょく】――！！」

未來を確実に決定付ける力、絶対の1である【確立結果】と同系統の力。

【確立結果】は現在から短時間の範囲に限る力、【未來限局】はそれ以降の未來を確実に定める能力。

2つの能力を持ってして、漸くビルの群れは崩落を始めた。

――ズバッ

「――ッ！！？」

安堵する間も無く背中に鈍痛をじる。

背後から何かが飛び出す気持ち悪いとともに、僕のは瓦礫とともに下に落下を始めた。

落ちる最中、上を見れば自由律司神が立っていて、刀にはベッタリとが付いていた。

「【確立結果】で斬った。傷が治るとは思うなよ」

捨て臺詞のように彼は呟き、冷え切った目で落ちゆく僕を見る。

決著が早すぎる。

何よりもまずこう思った。

意識が薄れる、がなくなりすぎたらしい。

……でも。

……それでも、負けられない。

「【未來限局】、【確立結果】――」

傷が治れ、塞がれ、その思いで力を使う。

塞がりは微々たるものだった。

共に落ちてるからは吹き出ないにしても、こんなことじゃ――。

「――絶対の4、【悠由覧ゆうゆうらんらん】」

最後にして究極の力を使う。

自由の象徴である究極の能力、それこそ悠由覧。

あらゆる自分の行に対する抵抗を無くす能力。

すべての束縛を解き放つ、絶対の力。

絶対に治らない斬撃をけたとしても、それを――確実に治す。

「――はぁっ！」

空中で勢を整え、ピタリときを止める。

傷は塞がり、もうが飛び出すこともない。

上に居るアキューは何を思うでもなく、ぼくを見據えたままだった。

「……ふむ」

ぽつりと彼が言葉をこぼす。

口調は変わらぬまま、言葉を続けた。

「能力自は同じものだからな、【確立結果】同士だとやはり防がれるか。これだと“心臓を止める”と命じたところで無駄だな」

「……そんなもの効かないよ。僕が死ぬ、消えるといったものはもう無効化した」

「ふむ。それは僕もそうなのだが……ほら、これではほぼ決著が付かぬであろう？　それとも【悠由覧】でお互いに傷つき合う戦いをするか？　あれならお互い本當に、永遠に治らない傷を負う。……まぁ、勝った方が後でを乗り換えればいいだけの話だがね」

「…………」

それなら僕にとっては好都合かもしれない。

痛いのには慣れている、我慢試合なら十分に勝機があるもの。

というよりも、【確立結果】や【未來限局】、それに絶対の3である【過去変換】も意味をなさないんだから、

「他に勝負方法がないと思うけど……？」

「あはははは！　それもそうだ、ねぇっ！！！」

笑みを浮かべ、同時に僕の元へ落ちてくる。

振り上げられた刀は僕に向かって振り下ろされ、僕は橫に飛んで回避する。

「出ろっ！！」

距離をとると同時に僕の左右に20本あまりの槍を顕現させる。

「ほう……」

アキューは心するように笑うばかりで足を止めていた。

ここから先は常時【悠由覧】を使う。

お互いに技を癒すことはできない。

だから、確実に當たるもので仕留める――。

「放て！！！！」

槍が駆ける。

銀の閃達はアキューに激突するはずだった。

しかし、彼も狂気の笑みを浮かべて同數の槍を生み出した。

「相殺ぃ！！！」

槍同士がぶつかり合い、弾き合う。

衝突し合えば當てることはできない。

だったら不意打ち、それかよりも速く攻撃を！

「速化――」

あらゆる抵抗を無視し、速のきを可能なに変化させる。

一撃で終わらせる、そうでなければ勝てない。

「フッ――！」

風を切って前に出る。

1歩のつもりでいたは次の瞬間にアキューの前にあった。

言葉はなく、一思いに刀を突き出す。

の速度、避けることは葉わない――。

(――捕らえた！)

刀が彼のに突き刺さる。

だが、まるで手応えはない。

これは……殘像！？

「やぁっ！」

「クッ！！」

背後からの不意打ちを咄嗟にしゃがんで躱す。

振り向けば、また刀が下される間際だった。

僕のきは速のはず、それと同等の速さということは――

ギィン！！

刀がぶつかり合い、火花が散る。

向こうもの速さを使っている……か。

「殘念だが、不意打ちや速さで仕留めようなんて戦いは何萬と経験している。君ごときでは、話にならないよっ！」

「それでも！　僕は勝つんだ！！」

刀を弾き合い、距離を取ってまた一閃が舞う。

お互いにとなりて刀をえ合い、距離を取り、また斬り合う。

一撃だけでいい、當てればそれで優勢になる。

なのに――當たらない。

僕も太刀筋を見切って避けるが、まさに一長一短、時折ギンッと鉄のぶつかり合う音がするだけだ。

その音の間に何回もの斬撃をえ合い、息衝く暇もない。

「ソラァッ！！」

「！！」

不意にアキューは距離を離し、剣を捨てて手から線を放ってきた。

速い――き自がの速さだから當然だが、その線はの速さを超えている。

それもそう、は3×10の8乗でしかない。

もっと速くけば――數字では測れない速さで！

「うおおぉォオオオオオオ！！！！」

ぶ、腹の底から。

手をばす、力の限り。

想像の限界を超えた速さで、線を打ち返した――。

きが速すぎて何が起きてるのかわからない。

2人の戦いを見て得た想といえばこうで、２つのが駆け回ってるだけだ。

ときたま、の數が増える。

魔法的な攻撃をしているのだろうけど、まるでわからなかった。

それにしても……

「アンタはなんで、私の隣にいるわけ？」

「…………」

白い髪を持ち、白い布を纏い、白いをしたが隣にいるが、私の言葉をけ取る気がないようだった。

虛無――そう呼ばれていたけれど、なんなのかしら。

律司神はどれも安直な名前だから、ひょっとしたら虛無の律司神かもしれないけれど……。

そんなことはいま気にするべきじゃない。

瑞揶、さっさと勝ちなさい……。

2人で暮らすんでしょう……。

「……ねぇ……君」

不意に聲を掛けられる。

低溫でか細い聲の主は、隣ののもの。

「なによ？」

「……貴方は、あの男が……何故、好きなの？」

「……はぁ？」

敵の分際で何を聞いてくるかと思えば、瑞揶を好きな理由？

「そんなもん言えないわよ」

「…………？」

「なんで好きなのか、言葉に表せないんだもの」

「……そうなんだ」

私の言葉を聞いて、彼は寂しそうに呟いた。

それからどこへでもない方に視線を向け、また彼の口から言霊が溢れる。

「……いいな……」

儚げな彼の橫顔は私の目に、どこか印象深く映った。

「……いいな」