それから先はいろいろなことがあった。

セイの親父さんにはぶん毆られ、研究所に連れ戻され、虛を紛らわせるためだけに研究をした。

だいぶ長く開けられなかった不死への扉を開き、何かの賞を取って帰國しても、僕は研究を続けた。

自分のクローンのを生産し、凍結させておいて記憶はバックアップを作り、今の自分が死んでも安心できるようにした。

しかし、これからの人生に何の意味があるのだろう。

挫折、立ち直り、失……これらの意味を考えて數日潰すこともあった。

それから半年が経っただろうか。

結論として、はするものじゃないと思った。

僕が1人で生きてさえいれば、セイが死ぬ必要だってなかった。

僕がこんなに嫌な気持ちを持つこともなかった。

だから、なんてするものじゃない。

いい経験になったと、僕はこれからも生きていくことにした。

自分が“自由”だからこんな立ち直りをしたのかと、嫌に思うことはある。

だが、僕は人生を自由に謳歌し、これからも生きていこうと思った。

それからどれほど知識を貪り、どんな研究をしてきただろう。

僕は神と呼べるほど、凄い人間になっていた。

出來ない事がない、神に近しい存在になったと言って良いだろう。

ちょっと試す気持ちで、僕は世界に居る2人の神――龍と戦ってみた。

【確立結果】――んだ結果を作り出すこの絶対の力を用いれば龍ごとき造作もなく、龍共はあっさり死んでしまった。

龍のを解剖してしだけ発見をして、それからは僕が代わりに世界の神になった。

だがその次の日、“管理”という存在がテレパシーを掛けてきた。

神になってみないか、と。

面白い、大変興味のそそられる話だった。

僕は大神という存在になり、長8mぐらいある化け、律司神の弟子となった。

化けと會話をする不思議を超え、々な技を學び、世界を作るということがどういうことか學んだ。

僕が生きていた世界【クオトラーガ】というのはパソコンの中の実行ファイルの1つに過ぎないのだ。

実のない電脳空間を実があるように作るということを知り、僕も世界を作れるようになった。

ただ、律司神――師匠は僕にこう言った。

「君は、自分の生み出した世界をすることも無いのでしょう。君の想いはというよりも、好奇心なのだから」

言われなくともよくわかっている言葉だった。

何十年、何百年経とうとも、僕はもうするということをする気はないし、好奇心にを任せて生きてきたのだから。

「きゅーくん、これから貴方は自由を研究しなさい。研究熱心な貴方なら、數千年で自由律司神になれるかもしれない」

その言葉を聞いて、僕は自由の研究を始めた。

自分の心と向き合うような作業、現在の自由律司神の文獻を読み漁り、記録していく。

気が遠くなるほど、莫大な時間をかけた。

自由という1つの言葉を取ってしても、奧が深すぎるのだから。

6千年ぐらいが経った頃だったか、自由律司神が降板し、僕が新たな自由律司神となった。

それは僕が生まれてから、約4億年が経った頃のこと。

よく生きた――人間でここまで生きる存在はないらしい。

だが、それからは律司神としてあらゆる世界の自由について、様々な律司神と信したり、自分の世界の研究に勵むようになった。

もう僕は神だ。

人間として生きてきた時間が僕の中で小さくなり、セイとの出來事も微小なものになって行った――。

だが10億年ほど経って、セイと思わしき人が世界をいで“僕と似た顔の人間を殺している”と報告をけるようになった。

どうやってか、“探知”の名を冠する律司神でも見つけられなかったらしい。

なぜ今になってセイが――？

僕のように、人を超えた生命になったのだろうか。

わからない、わからない。

ただ、面白い――。

◇

アキューの語りはここで終わっていた。

どれほどの時間を生き、どれほど大変な事があったのか、僕にはわからない。

だけど、彼の過去を見た今なら、彼が僕にやっかむ理由がわかった。

彼の記憶の塊、図書館から出る。

目を開けば、驚愕の表をしたアキューが目の前に映っていた。

「何故だ――？　何故僕がしていた脳の浸食が止まった？」

彼の驚く理由がわかった。

そういえば、頭が痛いのが治っていた。

それもそうだろう、僕は彼よりも……

意志が強いから――。

「アキュー、君は僕がをするのが嫌で手を出してるんだろう？」

「ほう、よくわかったな」

「わかるさ。君が天使でちょっかい出してきたのは、僕と沙羅が付き合い始めてからだもの」

淡々と會話を進めていく。

今見た記憶だと、彼は同じ顔を持つ僕がをしていることが許せないのだろう。

そんなのただの八つ當たりだ。

僕としても許せない。

でもね、僕はちゃんの後世だもの。

だから――

「君の間違いを正ただす。は素敵なものなんだ」

かつての僕も、霧代との別離でを嫌いになった。

でも、それでも

霧代と分かり合うことができて

沙羅が本気で僕を好きになってくれたから

今こうして、僕はここに立っている。

「教えてあげる。すると幸せになれるってことを。そして、君の心を塗り替える！」

夜明けに映る曙のように暖かな、白いが世界を満たす。

アキューという存在も含め、全てを包み込んだ。

◇

かつて師匠――律司神が僕にこう尋ねた。

「貴方の記憶は知ってるけど、もう一度人さんに會いたいとは思わないの？」

この問いに対して、僕は答えることができなかった。

會うべきなのかもしれない。

會わなければならないのかもしれない。

だけど、僕はセイを助けることができたのに、アイツが死んでる事に気付きもしなかった。

どうやってアイツが今、世界を回っているのかは知らない。

ただ、僕に憎いと言った。

殺したのは彼だけじゃない。

生まれてくるはずだった赤子は戻ってこないんだ。

だからだろうか、彼が僕を恨んでいるのは。

僕はあの世界でかなりの権力を持っていたと思う、一聲かければセイの死は止められたはず。

僕は2人の命を奪った。

ものすごく重い、2人の命を。

長き星霜を渡り歩き、歳月を得て、いろいろなものを殺してきたけれど、あの2人より重たい命はなかった。

それで死んだ人に恨まれて、僕は――瑞揶、君に姿を重ねた。

君も人と死に別れた人間だったから。

僕と同じ顔でをするのは許せない！

僕が苦しんだ事で、同じ顔を持つ貴様が笑うのは許せない！

だから僕は、君を止めたかった。

死に別れた人の気持ちは、僕達と君達では違った。

だから人と向き合う君が許せなかった。

今更僕は、自分の人だったセイに話すことなどない。

だけど、もし、話ができたなら……そうだな――

しっかり、彼と話し合いたいと思う――。