《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第3話

優しい吐息が頰にかかる。

朝の予じ、閉じた瞼がそっと開いた。

薄くの差し込んだ室で、目の前からスゥスゥという寢息が聞こえてきた。

金髪のが橫向きに眠っていて、その顔が僕に向いている。

小さく開いた口、かすかに上下する

寢ている彼も可くて抱きしめたいに駆られるが、起こすわけにもいかないため、僕は起き上がる。

「……おはよ、沙羅」

起きてもいない彼に挨拶をし、布団を出た。

改めてパジャマ姿を見ると、可いなぁ……。

そんな印象を覚えつつも、僕は靜かに自室を出るのだった。

久しぶりに見る沙羅の姿がたくさんある。

今の僕は目で見て々な事をじられるから、もっといろんな沙羅を見たいな――。

そんな想いを抱きながら、今日も朝食を作りにリビングへ向かう。

大好きな家族のために。

「制服は久しぶりね」

「……うん」

朝食を終えて、僕らは制服に著替えてリビングに集まった。

季節は秋とはいえ、10月にもなると寒さがある。

Advertisement

それなのに沙羅はスカートが短くて、その太ももが大膽にもわになっていた。

ちょっと走ったらおが見えるんじゃないかと思えるぐらいに短い。

ソックスは膝下までの紺のもので、やっぱり太ももが強調されているような……でも本人は気にしてないよね。

「……さっきから何ジロジロ見てんのよ?」

「え、いや……別に……」

「? まぁいいわ。早く行きましょ?」

「うん……」

手を差し出され、僕は手を取る。

らかく手を握り、そのまま2人で玄関に向かった。

遅れて瀬羅も駆けて來て、玄関まで付いてきた。

「じゃあ行ってきます」

「瀬羅、お腹空いたら好きに買いしてきていいからね〜っ。行ってきます」

「わかったーっ。2人とも、行ってらっしゃいっ」

笑顔で送り出してくれて、僕と沙羅は外に出た。

今日もよく晴れた空があって、青い空が広がっていた。

ポツポツと雲があるけど、日差しがる事はないだろう。

「良い天気だね〜っ」

「そうねー。雨とか降られると面倒だし、晴れが続いてしいわ」

Advertisement

「僕は雨も好きだけどなぁ……」

「そうだったわね〜」

のほほんと話しながら登校し、僕らは學校に著く。

上履きに履き替え、4階まで足を運んだ。

いつもなら疲れるのに、歩くのに慣れたおかげで4階まで來るのも楽にじた。

【サウドラシア】では野宿とかした……記憶があるよ、うん。

1-1に突すると、やっぱり懐かしさに覆われた。

代わり映えのない教室、それは當たり前のことなのに、不思議なが全を駆け巡る。

「1番乗りだね〜っ」

「いつものことでしょ?」

時刻はまだ8時を回っていない。

部活で朝練というのを除けば、僕らの登校はクラスで1番乗り。

沙羅も頰が緩んでいて、嬉しそうだ。

カバンを置いて僕は席に座り、沙羅はカバンを置いてから僕の席にやってくる。

そして、僕の膝の上に座ってきた。

「ふぅー……」

落ち著いて息を吐き出す沙羅。

長い金髪の髪が挾まって、沙羅の重が僕の背に憑もたれかかる。

この重も懐かしい。

「やっぱり瑞揶の膝の上は落ち著くわ。が熱くなって、ドキドキする……」

「あはは……。どうもありがとう……」

「んっ……」

甘えるように、僕のに頭をすりすりとり付けてくる。

いつも凜々しくて雄々しくて、そんな彼が普通のに見える今の姿は、とても可いものだった。

ゆっくりと抱きしめると、沙羅が僕の手に手のひらを重ねる。

そうして僕らは暫くかずに、悸の音だけを聞いて、ゆったりと過ごしていた。

何人かクラスにってきたようだ。

に響く足音がその報せを屆けていた。

ただ、僕らに近付く足音が1つ。

「……瑞揶?」

「…………」

真後ろにカバンを下ろす音と、投げかけてきた聲。

驚きを含んだ聲も、懐かしい。

沙羅を抱きしめたまま後ろを振り向けば、そこにはツンツンと金髪のびた年、聖兎くんの姿があった。

「久しぶり……でもないか。とりあえず、おはよ、聖兎くんっ」

「あぁ、おはよう……。もう帰ってきたのか?」

「うん。こっちでは1日しか経ってないけど、全部終わらせてきたから……」

「…………」

聖兎くんは俯いて、そのまま佇んでいた。

「……瑞揶は凄いな。自由律司神を、なんとかしたのか?」

「アキューは……友達になったよ。それからいろんなことがあったけど、みんなで頑張って……それで、帰ってきた」

「……。……そうか」

聖兎くんはそう言って顔を上げ、僕の上に座る沙羅に目を向けた。

「……沙羅。し、瑞揶を借りてもいいか?」

「……? あぁ、ダメよ。朝は譲らないわ」

「頼むよ……なっ?」

「というか私に言われてもね。瑞揶に聞きなさいよ」

「……なら、瑞揶。しいいか?」

「ごめんね聖兎くん。僕も沙羅と離れたくないから、お晝にね?」

「……わかったよ」

ゲンナリとした様子で聖兎くんは席に座った。

久しぶりに沙羅と來た學校だし、ごめんなさい……。

「おーっす、瑞っち」

「瑞揶ぁー! お禮の品、もらいに來たよーん!」

遅れて瑛彥と環奈がやってくる。

環奈、お禮の品ってなに?

「お前らは相変わらずだなぁ……」

瑛彥が僕たちを見るなりニヤニヤと笑う。

いつもし合ってますよー、ぎゅーっ。

「おはよー、瑛彥、環奈。お禮の品なんて初聞きだから持ってないけど、何かしいものある?」

「えーっ!? 沙羅、話が違うじゃん!」

「言い忘れてたわ。まぁいいでしょ?」

「うん、いいけどね。それとこれ、通帳返すから」

「あ、ありがとうね」

ぽいっと機の上に僕の通帳が投げられる。

手に取って殘高を確認すると……半分ぐらい降ろされていた。

…………。

……まぁ、これで生活が困るわけじゃないし、半分ならいいかな。

「無くなってる分はウチと瑛彥と理優で山分けしたから。……いいよね?」

「変な法律に引っかかってなければね……」

「そっちはウチの彼氏が調べてなんとかしてくれたし、大丈夫!」

「じゃあいいね……」

生徒會長さんは真面目な人だから心配ないだろう。

環奈も貧乏生活卻かぁ……。

「瑛彥、理優は?」

沙羅が何を思ったのか、瑛彥に尋ねた。

瑛彥は小首を傾げて答える。

「自分のクラスに行ったぜ? なんか用があったか?」

「いや、一緒に來ると思っただけよ」

「あー、ウチもそう思ってた。瑛彥達もアツアツじゃんね?」

「……アツアツ、なのか?」

瑛彥はよくわからんと言うように首を振りながら目を閉じた。

僕の周りだって、カップルばっかりだなぁと思い、やがて朝のホームルームが始まった。

「にゃーは風速10mで吹き飛ぶから、駅のホームで通過電車が來たとき大変なんだよ?」

「貓はそんなんじゃ飛ばねーだろ……」

「にゃーとねこさんは違うからね〜っ」

「……ダメだ、わからん」

お晝休みになって1階まで降り、僕と聖兎くんは2人で廊下をうろうろしていた。

自販機が1階と4階にあって、1階に近い生徒達が昇降口近くでごった返しになっている。

僕たちはそこを避けて、人のない道を歩いていた。

「それで、僕に話って何?」

「……あぁ」

聖兎くんが立ち止まり、僕も立ち止まる。

次の瞬間、彼は深く頭を下げた。

「いろいろとすまなかった……。たくさん迷かけて……それに、刺しちまったし……。こんな謝罪じゃ済まないのはわかってるけど、これから償っていくから……」

それは明確な謝罪の言葉で、僕は揺した。

確かに昔――といっても、この世界では數室前の出來事だけど、聖兎くんは僕を殺した。

もちろん不死だから生き返ったけど、その後は面倒な目にあったからなぁ……。

だけど、今更謝られても困るというか、全く気にしてないからどうしたものか……。

「とりあえず、頭上げてよ」

「……ああ」

聖兎くんは顔を上げた。

その瞳は潤んでいるようにも見える。

……どれだけ気にしているのか、よくわかった。

僕もこうやって誰かに償いたいと思うことが多かったから、こういう時は、何か罰を與えたい。

もちろん、厳しいものではなく、それこそ簡単なもの。

……そうだなぁ。

……よし。

「聖兎くん。君の気持ちはわかったよ。確かにいろいろな目のあったけど、今後、沙羅にアプローチとかしないなら、許してあげる」

「……それならもちろん、お前の彼だし……でも、え?」

目を丸くして途切れ途切れ言葉を重ねる聖兎くん。

それでも返事にはなっていて、僕はニコリと笑う。

「なら許すよっ。これでこの話はおしまいっ。ほら、教室に戻ろ〜っ?」

「えっ、いや……。でも……」

「ごーじょーはダメだよーっ。付いてこないなら置いてっちゃうもんね〜っ」

「っ……。まったく、お前は……」

僕は1人で歩き出すと、その後ろから駆け足で來る足音が続いた。

聖兎くんは僕の友達。

過去に々あっても、その事実は変わらない。

これからも……ね……。

晝休みも半ば、僕らはみんなの居る屋上へと向かって行った――。

    人が読んでいる<連奏戀歌〜愛惜のレクイエム〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください