《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第9話
「ううっ……汚されたよぅ……」
目の前で瑞揶がしくしく泣いている。
朝からずっとこんなじで、仕方なしに朝食は私が作ることになった。
それは良いけど、いつまで泣いてるんだか……。
「そんなに嫌だった?」
「嫌じゃないけどぉ……でも……ううっ……」
「……一応僕たち、は18歳だよね〜って、言ってきたのは瑞揶じゃない。寧ろ神年齢は私も30歳超えてるし、細かい事は気にすんじゃないわよ」
「……朝食がしょっぱい」
むしゃりと瑞揶がトーストを頬張る。
泣きながら食べないでほしい。
……まぁ無理もないか。
まだ春休みの途中な訳だけど、4月にって花見でも行こうと計畫していた時に、瑞揶とお酒を飲むか飲まないか話し合ってた時に年齢の話になったのだ。
そんで、瑞揶がこぼした言葉により、私が夜、襲いかかったわけで……
「……せめて同意を求めてしかったよぅ」
「男のくせに何言ってんの……。良いじゃない、瑞揶だって途中からはノリノリで腰――」
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「にゃぁああああもうやめてぇぇええ!!」
テーブルに伏せて泣きまくる瑞揶。
野獣ってほどじゃなかったけど、瑞揶に荒っぽいイメージないから仕方ない。
理保ってて優しいのは寧ろ嬉しかったわ。
「っていうかよく沙羅は平然としてられるよね。恥ずかしさとかないの!?」
「ないわねー。そりゃ私は覚悟決めてやったことだし……ね?」
「僕は覚悟とかなかったのにぃいい!!!」
「まぁまぁ、これから夜の楽しみが増えると思えばいいでしょ?」
「……もう毎晩寢かさないから」
「ええ、喜んで」
春休みもまだ1週間ぐらいある事だし、楽しくなりそうだわ。
その日から數日、お互い腰が痛くて生活に困ったとかなんとか。
し過ぎもあまり良くないわね。
◇
2年生になり、上級生となった。
だからといってどうというわけでもない……というわけでもなかった。
「おおー。よろしくね、瑞揶」
「あ……うん。よろしく……」
「なんで私が1人なのよ!?」
「クラスわけだから仕方ねぇだろ」
「瑛彥くん! わ、私たち一緒だよ!? やったぁああ〜!!」
クラス分けで瑞揶と離れ離れになり、というか部活のメンバーの誰とも同じクラスにならなかった。
くっ……これは學校の謀!?
「まぁまぁ沙羅。俺も部活のメンバーと被ってねぇし、こうなることもあるって」
「なによ聖兎、めのつもり? 私のこの気持ちがアンタ風にわかってたまるかぁあ!!!」
「あっはっはっは、沙羅めっちゃキレてるし。ほれ瑞揶、めといで」
「さ、沙羅! 落ち著いて!」
環奈に投されて瑞揶が後ろから抱きついてくる。
それでしは落ち著くも、嫌なものは嫌だ。
……あぁ、なんていうこと。
一緒に居る時間が減るなんて、あり得ないわ。
「でも2人は一緒に居過ぎだし、ちょうどいいんでない?」
と、環奈が笑いながら言ってくる。
なによこのやろー。
「ほら、瑞揶はもうそろ學校終わんじゃん? そしたら沙羅とは學校に居る時間會えないわけだし、ちょっとは慣れときなよ。どうせ授業合間の休みや晝休み、部活でだって會えるんだしさ。ね?」
「……ッ。確かに、將來を考えれば、そうかもしれないわ」
「ながーくし合うにはいろいろ我慢も必要なんよ。これ、ウチが良く思うことね」
「…………」
人が先月卒業した環奈に言われると、何も言えなくなる。
……そうよね、【サウドラシア】では王だったせいで何年も瑞揶に會えなかった。
それに比べれば1年ぐらいクラスが違ったって、いいわよ。
「でも瑛彥と理優が同じクラスなのは納得いかないわ」
「そこのカップルは破しようか」
『なんで!?』
聲が揃うあたり、息の合うカップルらしい。
ちなみに、その翌年も別のクラスになって発狂したのはまた別の話。
そんなわけで、足早に1年去って高三になり、人間と魔人、天使はクラスが別になる。
人間で就職したり大學行く人と魔人達はまた別なのだ。
そういうクラス分けもまた社會問題らしいけど、知ったこっちゃない。
今日も瑞揶と登校して一緒に帰って、それから家では家事したりイイコトしたり、いろいろある。
しかし、瑞揶の誕生日を過ぎた6月頃のこと、私達は婚姻屆を提出した。
もともと親戚だったのを瑞揶の能力で他の戸籍を作ってから、とりあえずの結婚。
別にプロポーズの言葉とかは今更なくて、結婚しよっかー、そうねー、と決まった。
婚姻屆を出しただけじゃやっぱり実なくて、式も挙げる予定。
しかし、一応他人の目を気にしたいから高校卒業後ということに。
まぁ、もともと同棲してたし、今から夫婦ってのも変なじだった。
夜に瑞揶の激しさが増したのは、夫婦になったからだと思うけど。
「……長びたねーっ」
「そっちこそ。175、か。私もあと15センチびればなぁ……」
「そしたら同じ長だけど、アホの分沙羅が高くなるね……」
今までは瑞揶の顔よりも下にあったのに、ちょっとだけ私の頭頂部が瑞揶の顎に當たるぐらいになったり。
アホが両目に當たって「にゃー!?」って鳴いたりする事もしばしば。
「3年生になっちゃったけど、瑞揶は進路どうするの? 進學?」
「ううん、家に居ようかな〜って。お金もあるし、無理に働かなくてもいいしね」
「……そ。ヴァイオリン、弾かなくていいの?」
「家でちょこちょこ弾こうかなって。時間ができれば練習もできるし、自分らしい音楽を弾くよ」
「……アンタがそれでいいなら、私は何も言わないわ。ただ、私にも聴かせなさいよ?」
「うん……」
そんな約束をわし、3年生の生活は過ぎて行く――。
◇
冬が來た。
が乾燥するこの季節、息を吐けば白い息が出る。
そんな冷たい季節とは裏腹に、響川家では嬉しい知らせを持って帰ってきたが1人……。
「……にゃーっ」
「彼氏作って帰ってくるって言ってたけど、まさか妊娠してくるとは……」
僕も沙羅も驚きながら聲を出す。
こたつ越しには2人の人がいて、1人はお腹が膨れて大きくなった瀬羅。
もう1人は男の人で、白髪の人。
目つきは鋭く、口は重く閉ざされている。
王子様らしいけど、著飾った様子はなく、大きめの浴を著ていた。
はだけて見える元は筋がたくましく、男らしい……。
「ふふっ、報告遅れてごめんね? コウヤといろいろ話してたら、すっかり忘れてて……」
「……セラの妹、それと義弟……。僕からも謝るよ。急に來た僕なんかが義理の兄で、悪いね。初対面でなければよかったんだが……」
「僕はいいよ〜っ? 瀬羅も幸せそうだし。コウヤさん、よろしくね?」
「私は認めないわ! なによその暗い話し方!? 聲のトーンひくっ! しかも何よ妊娠って、えぇ!?」
「……お腹の子に響くから、ぶのはやめてもらいたいんだけど」
コウヤさんはため息を吐いていた。
沙羅を見て、殘念そうに。
瀬羅とは似てないからね、それも仕方ない。
「ちょっと姉さん。こんなののどこがいいのよ!?」
「こんなのじゃないよーっ。コウヤさんは凄く優しいんだよ? 確かに聲のトーンは低いし、暗い顔だけど……頼れるところもたくさんあるし、私から好きになったから……」
「ぬ、ぬぬぬぬぬっ……!!」
沙羅がギリギリと歯ぎしりをし、コウヤさんは腕を組んでため息を吐く。
瀬羅から好きになったなら、口出ししようにもできないし……。
僕は良いけど……あ、でもちょっと目つき怖いかも。
「まぁまぁ沙羅。コウヤさんともこれから仲良くなれるよ」
「アンタは誰にでもそう言うでしょうが! ……はぁ〜っ、私たちに試練を與えられる前に既事実作るとか、なんなのよ……」
「ちゃんとし合ってできた子だよ〜っ! 國同士も公認なんだからぁ〜っ!」
「セラの言う通り、國同士も認めてる……。あまり言いたくはないが、セラの腹違いの妹にそこまで言われるのはな……」
「よし、表に出なさい」
「やーめーてーっ!」
僕が引き止めると、なんとか沙羅も食い下がってくれた。
他國の王子をボコボコにしないで……。
報告だけということで、2人は転移付箋で帰って行った。
今度は結婚式の招待狀が屆くかもしれない。
その時には僕たちも、招待狀を送るかも――。
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