《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第14話

沙綾が5歳になった。

もう言葉も上手く話せるようになり、家の中を走り回ることもあって楽しそうにしている。

見た目は沙羅とそっくりだけど、口調や笑った顔が僕に似ていて、人で優しい子に育ってしいなと期待を込めていたり。

アホも健在だったりする……。

瀬羅の子であるユイにもあるらしく、これは伝としか言いようがない。

ともかく近況はそのくらいで毎日平和だった。

しかし、今日になって“問題の書類”が國から屆く。

「……お父さん、この能力ってどう思う?」

ソファーで座る沙羅がペラッと僕に髪を見せてくる。

そこには活字でこう書かれていた。

〈響川沙綾様が天界より與えられた能力は“と會話する能力”です。〉

それ以外に能力に関する注意がいくつも書かれているけど読む事なく、問題の紙は沙羅によってテーブルの上に投げられる。

沙綾は天使だった。

筋に寄らず産まれるから、それについては同意できるし、僕達より早く死ぬこともないから嬉しい限りだ。

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しかし、しかし――。

「私は正直、この能力は論外よ。なんなのこれ? 使い道ないじゃない!?」

沙羅が猛反対するのだった。

天使にも超能力? と思ったけど18歳ぐらいまでは人間と同じ扱いらしい。

22歳からは天使の専門校で天使特有の能力を學んだりするとかで、それまでは超能力を使うんだって。

……僕はこの能力でもいいんだけどね、うーん?

「こうなったらお父さん、なんか能力追加しなさいよ。沙綾はあんなに可いんだから、変な奴が寄ってきたらたまったもんじゃないわ!」

「えー……? 沙綾には僕がいろいろな能力掛けてるから、襲われる前に撃退できるけど……」

「能力が不憫じゃない。なんか付けなさいよ。を鋼鉄にするとか」

「そんな能力は嫌だけど……」

結構な無茶振りだった。

多分、お母さんと話してても拉致があかないので床に座ってお人形遊びをする沙綾に聞く。

「ねぇねぇ沙綾? 沙綾は能力貰えるなら、何がしい?」

「えー? えへへ、じゃあお父さんと結婚する能力がしいぃ!!」

「え? う、うーん……僕にはお母さんが居るし……」

「顔がニヤけてるわよ」

「うっ……」

沙羅に指摘され、口元を抑える。

娘に言われたら嬉しいんだけど、沙羅の嫉妬の対象でもあるから怖い。

僕の思いとは裏腹に、沙綾は僕の方へ駆けてきて膝下に抱きついてくる。

「えへへぇ、お父さんだーいすきぃー!」

「わ、わっ。ありがとう沙綾、僕も大好きだよ〜っ」

「……なんか除け者にされてない、私?」

「僕は沙羅も大好きだよ〜っ」

「沙綾もお母さんだーいすき!!」

「…………」

2人で沙羅に抱きつくと、沙羅は文句のもの字も言えずに黙ってしまうのだった。

顔赤くなって可い、このままキスしちゃえっ。

「えいっ」

「んっ……」

半ば無理やりを奪うも、沙羅は驚きも見せずにけ止める。

數秒間キスをして、おでことおでこをすりすり。

「あー! お父さんとお母さんがキスしてる! い〜な〜っ」

「だって沙羅は僕の1番好きな人だもーんっ♪」

「沙綾も將來、好きな人ができたらいっぱいしてもらいなさい。私もお父さんにいっぱいしてもらってるから」

「えー? にゃーにゃーだよー!」

僕から盜んだ技、ねこさん抗議を発する沙綾。

指先でガリガリと僕のズボンを引っ掻いてくる。

その仕草が可くてキスしたくなるけど、娘のファーストキスは奪いたくないからおでこにキスする。

僕に続いて沙羅もおでこにしてあげると、沙綾はにこにこ笑ってお母さんに抱きついた。

「やったーっ! ありがとう〜っ」

「…………」

「…………」

何か悩んでた気がするけど、今はほっこりと出來ることを喜び合う。

後から思ったのは、能力なんて無くても幸せになれるって、そんな當たり前のことだった。

今の社會ではぁああっ。

刺激が多すぎてぇえええ。

退屈に耐えられない若者が多いんですぅうう!!!

「というわけでさーやねこさん! にゃーと座禪をしましょう!」

「はっ!? お父さんがねこさんに!?」

「にゃーです!」

ということで、いつぞやなった2頭で貓耳と尾をつけた姿に変する。

沙羅はまだ學校で、沙綾と2人きりなのですっ。

「いいですか〜っ? お母さんが帰ってくるまで2人で座禪をしますにゃ! ねこさんは辛抱強く生きるのですっ!」

「わかりましたにゃ……ねこさん頑張る!」

「よーし! じゃあ座禪にゃー!」

2人で座布団の上に座り、禪を組む。

急に靜まり返ったリビング、2人で黙って座り続けた。

カチコチと時計さんの音が響き、時間だけが過ぎていく……しかし。

「お父さん、これつまんないぃい!!」

彩綾ねこさんはすぐにをあげました。

禪を組む僕の肩を揺すって顎がカクカクする。

「ふにゅーっ、辛抱ねこさんなんだよー?」

「もう嫌だーっ。テレビ點けてよ〜っ」

「むむむっ、では今日はこのぐらいにしますにゃ」

僕はテーブルをよじ登り(今の長30cm)、リモコンを見つけてにゃーっと押した。

結局、僕は沙綾にぬいぐるみのように抱きしめられ、一緒にテレビ見てた。

「……夕飯の支度は?」

帰ってきた沙羅に視線で攻められたけど、好きなもの作ってあげたら許してくれました。

「ねこさんも許してよーっ」

「その姿は許容できないから」

にゃーの姿は未だに許してくれず、長い説得が必要らしい。

1年経って、沙綾もいよいよ小學生……。

「ランドセル……うーん、どこも高いなぁ」

「金だけならあるのに何を気にしてんのよ?」

リビングでチラシを眺めてたら沙羅に呆れられることもあったり。

タイムセールには行くし、僕は貧乏なんだけど、沙羅は何も考えずに買うもんね〜……。

「沙綾は計畫ある子に育ってくれるといいなぁ」

「それ暗に私が計畫ないってこと?」

「ち、違うよ!? ああっ、落ち込まないで〜っ!」

沙羅をめること數分、沙綾もリビングにやってくる。

「見て見て! バタバタ〜っ」

「……わぁ〜っ、可い〜っ」

「天使だものね〜」

沙綾が天使の羽を出し、パタパタと広げる。

出しれ自由だものね、可いですっ。

「そういえば、沙羅も魔人の羽出せるの?」

「出せるわよ? 普段は邪魔だから出してないけど、ほら」

なんて事のないように沙羅も羽を出す。

腰元からびるコウモリの翼のような羽が……。

沙綾の純白な羽に対し、こっちは黒い怖さがある。

「親子でもいろいろ違うんにゃー……」

「何も出せないからって能力で貓耳と尾出すのはやめなさい」

べしんと沙羅に叩かれる。

沙綾が「また叩いてるー!」と怒ると、沙羅はしゅんとしてた。

お母さんも娘に弱いですにゃ……。

「でも沙羅の羽もカッコいいね〜……。その……悪魔っぽい姿も可いよ?」

「…………」

また頭を叩かれる。

え、え〜っ!?

「な、なんで……」

「娘の前でやめてよ、抱きつきたくなるじゃない」

「え、あ……ごめん……?」

顔が真っ赤な沙羅に小聲で言われ、そういうものなんだと認識する。

沙綾が「叩いちゃダメー!」と怒ってたけど、沙羅と僕の心に至っては、親の心子知らず、らしい。

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