《連奏歌〜惜のレクイエム〜》第15話
瑛彥と理優が子供を産んだという福音を聞きつけ、沙綾はお義父さんに預けて沙羅と共に赤ちゃんの事を教えに向かった。
「ひゃー……赤ちゃんですにゃー」
「いや、當たり前だろ」
2人の家は一軒家で間取りは狹いけど部屋が幾つもあって楽しい所だった。
夫婦の部屋には高校部活メンバーが揃っていて、簡単な同窓會気分だった。
赤ちゃんを抱いた理優が沙羅からいろんな話を聞いており、殘った僕らは雑談したり、近況を聞いたり。
「瑛彥はどこで働いてるのー?」
「某電気會社だよ。俺がいると、どこが悪いか一発でわかるから重寶されてるぜ」
「人間はもう社會人なんね? 瑞揶なんてニートなのに」
「主夫と呼んでください……」
環奈は相変わらずな失禮っぷりで、今日もカラカラ笑っていたり。
そんな彼を見て聖兎くんが質問を投げる。
「俺にとっちゃ、環奈がまだ子供作ってないのが意外だな。瑞揶達よりも早くできると思ってたが……」
「あー……ウチはほら、親ってガラじゃないし? 自由奔放にしてるのがいいんだよね」
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「…………」
きっと環奈が親になったら、ユウキくんみたいな子ができるんだろうな。
そんな失禮な事を思っていると、はいっと聖兎くんからグラスを渡される。
「よし瑞揶、グイッといけ」
ニカッと笑い歯をらせる聖兎くん。
中はなんだろう、嗅いだことのない匂いだ。
「あーあー、瑞揶。ジントニなんてアンタにはハード過ぎるって」
「え? じ、ジン……?」
「いいから飲めよ瑞揶」
瑛彥に勧められ、頷いてから水のように飲んでみる。
なにやら環奈が笑い出したけど、そんなことを機にする間も無く意識がおぼろげになる。
「ぽこん、ぽこん……」
「うわ、頭から泡が出てる……」
「一瞬で真っ赤だな。おーい、意識あるかー?」
「あはははははっ、ひーっ!」
みんなの顔がふにゃふにゃに見える。
……ふにゅーん?
「なんか暑いよぉ……。むーっ……」
「待て、ぐのは待て」
「人ん家でやめてくれ」
「いいよ瑞揶! じゃんじゃんいじゃえ!」
男2人が止めてきたけど、環奈が勧めるから遠慮なくぐことに。
上だけとりあえずいで、下もごうとした時に頭を叩かれる。
……いーたーいーっ。
「ちょっと、うちの亭主に酒飲ませたバカは誰よ?」
「よかったな聖兎、數年ぶりに沙羅から正義の鉄槌を食らえるぞ」
「喰らう擔當は主に男じゃんね? ウチはけたことないけど、痛いん?」
「痛いどころじゃないから助けろ!!」
聖兎くんが沙羅に倉を摑まれてる。
えーっ、たたいちゃダメだよー。
「沙羅ぁあ! 聖兎くん毆っちゃダメ!」
「え? み、瑞揶?」
「僕のお願いが聞けないの? 沙羅、僕の事嫌い?」
「いやいや、そんな事は……」
「……うぇぇえん」
涙が全然我慢できなくて、ボロボロと涙が溢れる。
沙羅が聖兎くんを投げ飛ばして僕に抱きついてくれて、沙羅のの中で泣きました。
「沙羅好きぃ……嫌いにならないでよぅ……」
「私も好きだから、大丈夫よ。よしよし、もう寢ましょうね」
「うぅ……」
「……酔うと児退行するんだね」
環奈がなんか言ってたけど、ゆっくり寢させてもらいました。
沙羅のの中、あったかいよぅ……。
◇
沙綾も小學3年生になりました。
「にゃーです!」
「にゃーです!」
「…………」
Yの字になるよう手をばして沙綾と言うも、沙羅はソファーに座って変なものを見るような目で見てくる。
春のねこさんぱわーを集めてるのですっ。
「沙綾もいいねこさんだね〜っ」
「お父さんも可いねこさんだね〜っ」
「……なんなの、この親子」
きっとねこさん親子です。
親子でほっぺたをぷにぷに突っついていると、沙羅がため息を吐く。
最近は座禪にも耐え、その度に「ねこさんは辛抱ねこさんなのです……」と涙を流す沙綾。
通知表の結果も上々で、今では家事のお手伝いもしたりしなかったり。
「ねぇねぇ、楽しい〜っ」
「え……にゃー?」
「にゃーにゃー、トランペットとホルン吹いてみたいよー。お父さん買ってよーっ」
「にゃ、にゃー……これは伝なのでしょうか。僕も吹きたいし、買いにいこーねー♪」
「娘に甘いんだから……」
沙羅から叱責混じりの嘆息をされるも、沙羅だって娘に甘かったり。
この前だって……
「お母さん、抱っこして〜♪」
「ん? しょうがないわね。ほら」
「わーい♪ えへへへ〜♪」
……なんて事が家の中であったり。
沙綾も9歳だしそろそろ抱っこは恥ずかしがるものだけど、今のままだと小學校出るまでは抱っこをねだられそうだ。
そんな沙綾も、家に友達を連れてきたり遊びに行ったりすることも多くなり、僕が家で1人になる時間も多かったりする。
PTAで僕が學校に行くことも多いけどね。
……意外にも主夫さんが1/3も居て良かったのが印象的だったり。
「お父さんってさ……」
「うん?」
「老けないよね?」
「…………」
この質問にはガッカリすればいいのか、喜べばいいのかわからなかった。
流れるように月日が過ぎ去り、沙綾が12歳になる。
「お父さんお父さん! 私、魔法になりたい!」
「え?」
「ふんふ〜ん♪」
3年経っても、沙綾のゆるほわはずっと変わらなかったりする。
僕に育てられたから當然だけど、たまに言が怪しいのが怖いです……。
長は130cmになって抱きつきやすいんだけど、そろそろ沙羅の目線が怖くなってきたから抱き合うのはやめるかもしれない。
見た目はほぼ沙羅と一緒なんだけど、髪の手れをしていて素敵なストレートヘア(+アホ)である。
「髪、束ねてみる?」
「え……。うーん、1回ぐらいなら……」
「やったぁ〜っ」
綺麗な金髪をいじらせてもらう。
手ぐしをするとスーッと通って、改めて良い髪だなと思う。
ここは沙羅もやったことのないツインテールにしてもらうことに。
「両方結ぶよーっ♪」
「にゃーっ♪」
四苦八苦しながら沙綾の髪を結んで、こっちを向いてもらう。
か、可い……!
「沙綾、僕と結婚しよう!」
「求されちゃった!? お、お母さーん!」
「聞こえたわよ。瑞揶、お話しましょうか」
「にゃー!!?」
沙羅に僕の部屋まで連れて行かれ、他人に移り目しないようにといろいろされました。
疲れながらリビングに戻ると、沙綾はツインテールのままショートケーキを食べていた。
今朝僕が作ったやつだーよー。
「味しい〜っ! あ、お父さんおかえり〜」
「た、ただいま……」
「こーら沙綾。1人で食べないでよ。太るわよ?」
「にゃ、にゃー……太っちゃう? 太っちゃう?」
僕と沙羅に縋り付いてくる沙綾。
目には涙が溜まり、そんな目で見られると抱きしめたくなるというか……。
「太らないからにゃーにゃー言わないで。つーか私も食べるから。いいわよね、お父さん?」
「じゃー僕も食べるよーっ」
そういうわけで、冷蔵庫からケーキを出して3人で食べる。
生クリーム味しい〜っ。
「…………」
そして前を見ると、沙羅は優雅に一口ずつ、沙綾はパクパクとがっつくように食べている。
座ると背丈もあまり変わらないのになぁ……。
親子でもこう違うと、面白いというか微笑ましいというか、頬が緩んでしまう。
「……なにニヤけてんのよ」
「お父さん笑ってる〜っ」
「笑うと福があるから、笑ってもいいでしょ?」
「福があるから笑うと思うんだけど……」
沙羅のツッコミにはにゃーにゃー言って誤魔化し、ケーキを食べ終えました。
お皿洗いも僕がやって、沙羅と沙綾は録畫のドラマを見ていたり。
僕と沙綾は仲がいいけど、お母さんと沙綾もしっかり仲がいいのは、僕がちゃんと知っています。
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