《高校ラブコメから始める社長育計畫。》22.今すぐ床ペロⅠ
翌日、火曜日――
昨日は才川に連れられ、ダンススクールを見學した俺。
々と刺激はけた。
その興からなのか、才川にも的な夢があったことへの嫉妬なのかわからないが、怪我しているにも関わらず早足になる通學路。
とにかく今は、社長への裏口學を進めていこう。
そうこうしているうちに、いつか俺にもやりたいことが見つかるかもしれない。
三つ目の龍玉は印象を良くすること。
服裝や見た目か。
どうしたもんか。
吹奏楽部の演奏會、見にいくとしても學生服が無難だろうな。
しかし見た目はなあ、整形するわけにはいかねえし。
「おはよ」
そこへ出くわした上原から聲を掛けられた。
「お、おはよっす……」
デンジャラスハニーが挨拶してくれたことで、もやもやも吹っ飛ぶ俺。
つくづく単純だな……
しかし、上原は可いなぁ。
俺もいっそ化粧するか。
化粧は最大の武。
俺も綺麗になりたい!
はあぁ、何言ってんだ俺……
こいつはいいよな。
人ってだけで依怙贔屓えこひいきされる世の中だ。
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世の中ね、顔なのよ。
さらに上原は顔だけじゃない。
白くて細長い手足。
スタイル良し。
あとは腰まである天使なロングヘアか。
サラサラなんだろうな。
「なによ、ジロジロ見ないでくれる?」
「上原はさ、いつも綺麗な髪だな」
褒めキング。
「そ、そお? 結構先傷いたんでるんだけどね」
上原は満更まんざらでもない様子で、髪のをくるくる弄いじる。
「俺は地がこんな茶だしよ、印象悪いんだよ。どうしたらチャラく思われねーかな?」
「へえ、あんた地だったの? ま、どうでもいいけど。髪型もモサイし、いっそ坊主にしたら? ぷくく」
ぷくくは止めろよ。
裏・院長を思い出す。
「そうだよな。それも考えたんだけどな、俺目つき悪いだろ? 中學んとき坊主にしたら、なんか余計に怖がられてよ」
「あはは! さすが百瀬、ネタだわ!」
バシバシと俺の背中を叩きながら笑う上原。
「いやマジで。上原さんよ、どうしたら良い印象になれると思う?」
「へー。ヤンキーのくせに意外と真剣に悩んでんじゃん」
「まあな。上原さ、ビューティーアドバイザーっての目指してんだろ? なんかアドバイスくれよ」
「……そうねえ」
そう呟きながら、上原は俺の前髪をり出した。
や、だから近いって!
「髪型だけでもだいぶ印象かわるんじゃない?」
さすがは上原、真面目な答え。
伊達だてに知恵袋に出てきそうな名前の夢を持ってないな。
ふとまた例の迷言を思い出す。
小學生は足が速かったらモテる。
中學生はギター出來ればモテる。
高校生は髪型がよければモテる。
大學生は大學が有名だとモテる。
社會人は金を持ってたらモテる。
ふむ、俺がモテないのはどう考えても髪型が悪い!
「じゃあ切ってくれよ」
「いやよ」
「そうですよね!」
即答ありがとうございます。
「あんた、いつもどこでカットしてるの?」
「ん? 近所の床屋だが」
「とりあえず容院で相談してみたら? どんな風になりたいとか」
「そうだよな。どっか良いとこあるか?」
また知恵袋に尋ねてみる俺。
「うーん……あたし行きつけの容院、明日予約してるんだけど、足大丈夫だったら、あんたも來る?」
「いいのか?」
「ついでよ! つ・い・で!!!」
「行きます! 行きます!」
短気な奴だな。
そんなハイテンションだと燃費悪いぞ。
たわわなの脂肪がエネルギーに使われたらどうすんだ。
「よし! じゃああんたのぶんも予約れてもらっとくから、明日十時に駅前ね! 遅れたら死刑!」
上原って意外と面倒見いいんだな。
そういや捻挫の手當てもしてくれたんだっけか。
ん?
でもこれって……
休みの日に二人で!?
デートじゃね!?
時は來て決戦の水曜日、祝日――
朝、九時五十分、駅前到著。
院長の上辺マナープリントに書いてあった。
面接とかでも、早すぎたら相手の予定を考えてない人間、遅刻はもちろんアウト、例え早く著いても十分前ぐらいにるのが出來る人間と印象づけるコツなんだと。
「って、上原もういるじゃん!!」
「遅い。死ね。今すぐ床ペロしなさい」
「そうですよね……」
うぅ、早くの龍玉くれよセンセー。
「まあ冗談は顔だけにして。足怪我してるから仕方ないわよね。早く切符買ってきなさいよ」
発券機を指さす上原。
「え? 電車でいくのか!?」
「なに驚いてんのよ。気にってる容師さんがいるんだから、どこへでも行くわよ」
たかが散髪で地元から離れるなんて思ってなかったぜ。
今日の路上ライブ、斷っといて良かった。
「そ、そうだよな」
俺は上原の指示通り切符を手にし、二人でホームへ向かう。
新快速で三十分ぐらい、三駅向こうまで行くらしい。
結構な遠足だ。
上原は俺の隣を歩いて……いるわけもなく、俺がを追っかける形だ。
ホームについて間もなく電車がやってきたので、乗り込む俺たち。
休日でみんな出掛けるのか、座れる座席もなく、俺たちはドアの前で向かい合うように立つ――
「てか、あんたなんで制服なの?」
「や、無難かなと」
上原を見ると肩が見えているシャツ、イマドキのオフショルダーとか言うものらしい。
「お前、私服も可いな」
フフッ。
最近の俺は泣かせだぜ。
スッと言ったほうが楽なことに気付いたからな。
「ちょっ!」
上原が焦った様子で俺の橫に來て耳打ちする。
「バカなの!? 場所を考えなさいよ! みんな見てるじゃん……」
真っ赤な顔でつぶやく上原。
確かに周りの奴らの視線が熱い。
俺達ぐらいの高校生っぽい奴らがニヤけて見ている。
「そら、お前が可いからじゃねーのかグハッ!!」
上原の肘鉄ひじてつがわき腹に刺さる。
ヒューヒューとどこからか聞こえてくる。
「どこのバカップルよ! このチャラ男! みっともないわね!」
上原にヒソヒソ聲で怒られた。
ヒソヒソになってない聲量だが。
場所を考えろだと?
しらんね。
TPOは無視だもんよ。
と、思いつつ、怒ってる上原の顔を見ると、さすがにマズったかなと反省する。
「そうだよな、お前が親切でってくれたのに、スマン」
「ほんと気を付けなさいよね! それから――」
まだ怒られるらしい……
こうして電車に揺られながら俺は、目的地の駅へ著くまで説教を食らっていた。
「可いから許すうぶしぇ!!」
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