《高校ラブコメから始める社長育計畫。》30.恵み -END-

「ほんとに私、結婚して大丈夫?」

鏡に映るウェディングドレス姿の自分を見つめながら、私は橫にいるエリカに問いかけた。

「もう、何言ってんのよ! 結婚式當日に!」

エリカは兄の娘。

姪めいに當たる子。

私の名前は上原咲。

しく咲く花のように人を和ませ、生命力の溢れる子になってしいと両親が付けてくれた名前。

そんな私に、花束とともにプロポーズをしてくれた白石さん。

男はみんなロマンチストだよって聞いていたけど、実際に貰ったらとても嬉しいものだった。

そして今日、白石咲として結婚式を迎える。

私は養護教諭になる夢を葉えた。

きっかけはエリカだった。

エリカは三歳で母親を亡くした。

突然のことで、私も泣いた。

エリカのお母さんは、大勢の人に見送られて天國へ行った。

多くの人にされている人だった。

その時のエリカには理解できていなかった。

お母さんともう會えないこと。

どうして皆が泣いているのかも。

まだ中學生だった私はどう言葉をかけてあげたらいいのかわからなかった。

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だからお母さんの代わりになってあげようと思った。

私はエリカのいる兄の家に毎日通った。

二人でままごとをした。

二人で花火をした。

一緒にお料理を作った。

初詣に行ったり、一緒に寢たり。

大切な想い出がいっぱい。

ケガをしたときはよく手當てをしてあげたっけ。

些細なことだけれど、私が養護教諭を目指そうと決めた機である。

「新婦の姪、上原エリカです。本日はお忙しい中、叔母の結婚披宴にお集まり頂き有難うございます」

エリカは丁寧な挨拶をして、私のほうへ向きなおる。

人でカッコよくて憧れの咲ちゃん。 咲ちゃんは、母親のいないあたしにとって、ある時は姉のようであり、またある時は親のような存在でした。あたしのせいでずっと自分のことを後回しにさせてしまっていたのも知っています。だからこうして、素敵な旦那さんとご結婚されることを心から嬉しく思います。と、言いますか白石さん、あたしの嫁にしたかった咲ちゃんのハートを止めたんだから、幸せにしないと許さないんだからねってじです!」

くすくすと、會場は笑顔に包まれた。

「……あたしは小さい頃、天國にいるお母さんに會いたくて、ずっと泣いてばかりでした。お父さんも仕事であまり一緒にいられなかったから。そんなあたしの面倒をみてくれてたのが咲ちゃんです。わがままだった小學生時代も、いっぱい叱ってくれました。友達がいなくて塞ぎ込んでいた中學の頃も、泣いてばかりだったけど、咲ちゃんはいつも味方でいてくれました。病気しても看病してくれたり、迷ばかりかけてきたのに、いつでも味方だよって……。あたしの知らない苦労もいっぱいあったよね……。こんなあたしを……見捨てないでくれてありがとう。あたしのために泣いてくれて、ありがとう。あたしのために傍にいてくれて、ありがとう。たくさんの幸せを、笑顔を、を、本當にありがとうございました。咲ちゃん、大好きです……! 幸せになってください。本當におめでとうございます!」

エリカは深く、深くお辭儀をする。

は拍手で包まれた。

ずっと味方だよ。

見捨てるわけないよ。

私のほうこそ幸せをありがとうだよ。

私も大好きなんだから。

が熱くなり、視界が涙で曇る。

そこへ中學生ぐらいのの子がギターを抱えて、客席からエリカの傍へと近寄り伴奏を弾き始めた。

「では、咲ちゃんに謝を込めて歌います!」

エリカから歌のプレゼントか。

今日のために練習してきてくれたんだね。

ありがとう。

「聴いてください。……アメイジンググレイス」

の明かりが消え、闇に包まれた。

エリカだけが強いに浮かび上がる。

そしてエリカはし鼻聲で、また母親を見つめる子供のような安らかな顔で歌い始めた。

「Amazing grace how sweet the sound That saved a wretch like me…… I once was lost but now am found, Was blind but now I see.」

その歌聲は私の心の中に火を燈ともすようで。

涙が零れ落ちるようなおしさがに迫る。

エリカのが湯のように私を暖めた。

その時、白いの筋が闇の中を走り、客席後方を照らす。

そこにはいつのまにかドラムがセッティングされていた。

「ワンツー、ワンツースリーフォー」

ドラムのカウントと供にトランペットが鳴り響いた。

空気をぱあっと明るくするような音

そしてライトが全を浮かび上がらせ、ジャジーなサックスとピアノが演奏に乗っかってくる。

アメイジンググレイスのジャズアレンジかな。

総勢十二人の演奏。

あんなに広かった式場が祝福してくれる人たちでいっぱい。

豪華な演出に不思議な興を突き上げ、私は鳥が立った。

そこへ、グラスを持っていた式場のスタッフが急に踴り始めた。

ジャズダンスとHIPHOPが合わさったようなダンス。

一人、二人、三人と。

エリカの前へと出てくる。

よく見ると前田さんに金村さん、そして才川くん。

みんなうちの高校の生徒だわ。

従業員に扮していたのね。

改めて見ると、演奏者は月高校の制服をに纏っている。

見覚えがある顔。

あの子たちもうちの高校、吹奏楽部の生徒ね。

歌い終えたエリカはふと不安そうな顔を見せ、後ろを振り返った。

すると一番後ろで立っている男の子がエリカにグーサインをした。

エリカも笑顔で返す。

それはいつも私に向けてくれていた笑顔で……。

それは外では決して見せなかった笑顔で。

友達……できたんだね。

やっぱりエリカは笑顔が一番可いわね。

招待させて頂いたお客さんも楽しんでくださってる。

みんなが笑顔。

楽しげな笑顔。

こんなに大勢の人に祝福されて……こんなに幸せでいいのかな。

エリカがこんなに笑顔でいてくれるなんて、私の結婚は間違いじゃなかったのかな……。

このサプライズはする姪、エリカからのプレゼント。

一生忘れることのないのプレゼント。

鼻の奧がツーンと痛み、闇雲に涙が溢れてくる。

「エリカ……ありがとう……」

見てますか?

天國にいるエリカのお母さん。

私はエリカに、ちゃんとしてあげられたでしょうか。

あなたは今のエリカをどう見てますか。

繋いだ手に託していた想いは葉えられていますか。

あなたにまた會う時は私……を張っていいですか?

私ばっかりがエリカから思い出を貰ってしまってごめんなさい。

エリカが傷ついた時も何もできなくてごめんなさい。

あなたのようにもっと抱きしめて、大きく包んであげられたらって何度も思いました。

それでも、私がエリカを大切に想う気持ちに噓はありません。

エリカはあなたに似てとてもしく長していますよ。

夢を持って、前を向いてがんばってます。

私はそんなエリカが大好きです。

こんなにしい寶を殘してくださってありがとうございます。

あなたと話したいことがいっぱいあるのですが……あなたに會う日まで、今は大切にしまっていていいですか?

幸せな気持ちを……今日だけは獨り占めしていいですか……?

そうして、私の結婚式は幕を閉じた――

episode 『恵み』 end...

the first period 『百瀬ゆうま、コネを作る』 end...

――『Amazing grace』――

Amazing grace how sweet the sound

That saved a wretch like me.

I once was lost but now am found,

Was blind but now I see.

――拙訳――

アメイジング・グレイス

驚くべき恵み

何て優しい響きなの

私のような者も救ってくれた

迷子になっていた私を

見つけ出してくれて

今まで見えなかった幸せも

今ではもう見ることができる

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