《高校ラブコメから始める社長育計畫。》02.こそこそ

梅雨が過ぎ、濡れた木々が輝くような七月――

俺は腐れ縁の箕面ひなたと登校している。

足の怪我もすっかり良くなり、いつもの時間にてくてく登校。

しましまパンツの子、元気かしら。

なんて考えながら校門をくぐった先の靴箱で事件は起きた。

箕面が自分の靴箱を覗いて機能停止している。

「どった? 押しピン混? 悲しいやつ? あ、関東では押しピンって通じないらしいな。畫鋲がびょうって言わないと――」

くだらない豆知識を披している俺にも全く反応しない箕面。

「……これ」

箕面は自分の靴箱から、靴ではない何かを取り出した。

「げっ! ラブレターじゃねーか! ずりーぞお前だけ! 貸してみろ」

「や、でも……」

箕面の手からそれを奪い、ひっくり返して裏を見る俺。

「うーわ。可い字でまたこれ! 織田優理おだゆり……四組だってよ!」

「織田さん? なんだろ」

名前に反応する箕面。

「なに? 知り合いなわけ? 可いのか? 付き合うのか?」

「あのね、ボク、ですけど」

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「そうなのか? つかお前、ボクっ子やめれねーなら髪でもばせよ。紛まぎらわしい」

「ゆうまは髪長い子が好きだもんね」

「そうだな、どっちかっつーと」

そういや、エリカもロングヘアーだ。

俺、長髪が好きなのかもしんねえ。

「ふーん……」

「んなことより、開封はよ」

俺に急せかされ、箕面はハートマークのシールをめくり封筒から手紙を取り出す。

『箕面さんへ』

箕面の後ろから容を覗く。

『箕面さんは小さいなのに育でもいつも活躍してて、走るのもすっごく速くて……カッコいいです。ずっと見てました』

おいおい、ずっと見てましたとかストーカーじゃねーの?

話し掛けたらいいのに。

バカだなぁ。

まるで俺みたいじゃねーか……

『どうしても勝ちたい大會があるんです。箕面さんの力を貸してしいのです。お願いします。放課後、陸上部の部室で待ってます。ずっと待ってます……』

勝ちたいんだったら待ってないで練習しろよと言いたいところだが。

まあ、人それぞれ事があるんだろうな。

ややこしいことには関わりたくない。

俺しーらね。

の、はずだったのだが。

放課後、俺たちは子陸上部の部室へ向かった――

箕面が『一人だと何でも引きけちゃうから』と、俺に付き添いを頼んで來たのだ。

俺だけが頼りだと。

ふっ、俺も虎と呼ばれる日が近いよう。

ま、フラッシュモブのときも々といてもらったから、俺も今度は手伝ってやろうかと。

ギブアンドテイクだぜ。

グラウンドの北側に並ぶ二階建ての部室棟。

俺たちは二階にある子陸上部のドアを叩く。

しかし返事はない。

「まだ來てないのかなー?」

箕面は『失禮します』と言いながらドアノブを回す。

部室の中はエアーサロンパスの匂いが充満し、陸上のスパイクやテーピングなどが段ボールに詰められて置いてある棚。

そしてベンチには、二人の子が抱き合うように寢そべっている。

「……」

抱き合うように?

「ちょ、なっちゃん止めて……」

「よいではないか、よいではないか」

下の子が一方的に襲われているじに見えるが、これは……

うむ。

百合展開だ。

退室しよう。

「お邪魔しましたー!」

箕面は顔を真っ赤にしながらそう言ってドアを閉めた。

しかし『よいではないか』て……

部室からは『ちょ、待って! 違うのおおおお』とぶ聲が聞こえるが、なかったことにしよう。

「箕面、むしろお前は陸上部に協力しないほうが、よいのではないか……」

「そうだね……」

そう言って立ち去ろうとしたとき、部室から出てきた子がぶ。

「待って! 箕面さん!」

襲われていたほうの子だ。

「おおお織田さん、ボボボボクは何も見てないよ!」

揺している箕面に向かって、その子は話しだした――

「待って、箕面さん! 一緒にやってくれませんか?」

「ボボボボクはの子同士とかそうゆうのはちょっと! すすす好きな人もいるし!」

へー、こいつ好きな奴いたんだ。

教えてくれてもいいのに。

みずくせえな。

まあ、俺もエリカのこと言ってねーからお互い様か。

「箕面よ、たぶん一緒に陸上をやってくれって意味だと思うんだが」

「そうなの!?」

箕面には刺激がキツすぎたようでございます。

「うん、今から練習なんでちょっとだけでも付き合ってくれませんかー?」

「さっきの相方はいいのか? 部室から出て來ねーようだが」

そう言うと織田優理は、部室の中に向かって聲を掛ける。

「なっちゃん! いくよー?」

「あー、今日はあたしゃ帰るにゃり」

中から、ぶっきらぼうに返事が返ってくる。

「箕面さんも來てくれてるのに?」

「ふにー、ほんとに速いのかね。代役つとまんのかのう。ま、また報告よろ」

そう聞こえた後、部室のドアがガチャリと閉まった。

「……ずいぶん適當なじの奴なんだな」

「ごめんね。良い子なんだけど……」

そして俺たちは運場に移した――

陸上部といえば、校舎からもよく走ってる姿を見たことがある。

かなり人數も多かったと記憶している。

「せんぱーい! 箕面さん連れてきました! 百人力です!」

「あらあら、この子が。まあまあ、わざわざありがとうございますね。うふふ、すぐ他の子たちも集合させますわ」

おさげ!

眼鏡!

あらあらうふふ先輩キター!

「私たち三年生にとって最後の総になるのですが、リレーメンバーが一人欠かけてしまって」

うふふ先輩がメンバーを集めて説明をしてくれるが、俺はその人數のなさに驚く。

三人のみ。

「え? こんだけ? 陸上部ってめちゃくちゃ部員多いイメージなんすけど」

「それは長距離ですわ。短距離メンバーはこれだけですの」

長距離と短距離って、分かれてるんだな。

「まあでも、さっきのれたら四人そろってるんじゃ? リレーって四人っしょ?」

「夏香さんのことね。それが問題なの。それにこの一年の子も、幅跳はばとびの選手ですのよ」

そう紹介された一年生のツインテガールが、前に出てきて箕面を指差した。

「てか、先輩! この人ほんとに、私より速いんですか? よそものをいれる必要あるんですか?」

そこですかさず俺は言う。

「箕面、服に著替えろ。見せてやれゴ○、お前の強化系能力を!!」

「せめてキャラにしてよー!」

箕面のツッコミはスルーして、とりあえず服に著替えて來させる。

「さぁ、誰からでもかかってきな!」

「ちょっとゆーま、走るのボクなんですけど……」

行け!

俺の舎弟!

「では、私がお相手しますわ」

うふふ先輩が名乗りをあげた。

「実は私は……」

鬼……ではなく。

こう見えてこの人、実は陸上部の副部長らしい。

いいぜ、相手にとって不足なし。

思う存分に負かしてやるぜ。

「ゆーま、自分が走るわけじゃないのになんか勝手な想像してるでしょ」

On Your Marks――

Set……

BANG!!

うふふ先輩と勝負することになった箕面。

スタートを知らせる銃聲が鳴り響き、二人とも走り出した。

結果は――

予想通り、箕面の圧勝。

「ふぅ」

「ハアハア……」

「おとといきやがれ!!」

「何度も言うけど、ゆーまは何もしてないからね!」

さすがは運バカ箕面、息もほとんど切れてない。

「確かに、悔しいけど即戦力になりそうですね……」

こうしてツインテ後輩ちゃんも箕面の実力を認めてくれたのだった。

ガサガサっ――

「ん?」

俺はふと校舎の方を見ると、草むらに何かがいるのに気付いた。

緑の草むらに赤っぽい髪のらしきものが揺れている。

誰かが隠れているようだ。

「なぁ副部長さん、あのアホって」

「あらあら」

それに気づいた織田優理も大聲で呼ぶ。

「おーい、なっちゃーん!!」

「ギクーッ!」

そう聞こえた後、アホはダーッと走り去り闇へと消えていった――

episode『こそこそ』end...

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