《高校ラブコメから始める社長育計畫。》01.intro

「やあ諸君。君たちは選ばれし者だ!  俺の手となり足となり、その命盡きるまで、ともに戦おうではないか!」

「……で、今回は何?」

「おい! 玉ドンしてくれねーのかよ!」

「は……? キモいんですけど」

「ゆーま……」

「にぃ、玉ドンってなに?」

「お前は知らなくてよろし」

今日は日曜日――

悪友である箕面の家で企畫會議。

「それでは改めまして、第三回、百瀬ゆうまを社長にしようの會、企畫會議をはじめます」

「いえーい」

「ぱちぱちーなの」

箕面がノリノリで拍手をし、りぃもそれに合わせる。

「りぃ、お前の兄貴はあれか? 変態さんか?」

「否定はできないの……」

「おいそこ!!」

ナオミはりぃをぬいぐるみのように抱き寄せながら眉間にしわを寄せている。

そしてエリカは呆れた顔で、やれやれといったポーズをとっていた。

一か月前――

「肩書きを得る、です」

院長は眼鏡をらせながら、そう言った。

俺の名前は百瀬ゆうま、高校二年生。

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將來、金持ちになりたいの。

だって世の中ね、顔かお金かなのよ。

顔は普通、いや目つき悪いから中の下ぐらいかもしれん。

そんな俺が酒池林な人生を歩むには、金儲けするしかないのだ。

そして今、バイト先の接骨院で六個目の龍玉をもらっている。

龍玉といっても、誰かを生き返らせるために集めるものでもなければ、緑の人も出てこない。

俺の願いである、『社長』になるための裏技のことだ。

それも、うわべの信頼を得るための七つの方法という、なんとも邪道な裏技をここの院長から教えてもらっているのだ。

一つ目は、褒め言葉を言うことへの抵抗をなくし、褒めキングを目指すこと。

二つ目は、相づち、これも難しく考えずに、そうですよねとひたすら頷くこと。

三つ目は、印象、すなわち外見に気を配ったり、マナーを守ること。

四つ目は、夢を忘れないように夢アルバムとしていつでも見れるようにすること。

五つ目は、人に使われてみること。自分が社長になった時に、使われる者の立場もわかっていたほうがいいから、ということで俺はこのバイトを始めた。

そしてついに六つ目である。

「あと二個か……」

俺が面倒をみてやってる陸上部短距離子リレーチーム、こないだの県大會はなんとか優勝できた。

といっても俺が走ったわけではないので、また脇役なんだが。

夏香の喜んでる姿を見れたのはよかった。

悲しいのは嫌だけど、やはり嬉し涙は綺麗だ。

トレーナーをやって良かったと心から思う。

ただあの日からなぜか夏香は、俺を見るなり尾を立てて警戒しだすようになったのが謎なんだが。

俺、なんか悪いことしたか?

思い當たることがありすぎてよくわからん――

「六個目の裏技は、『肩書き』を得ることです」

「肩書きって、いわば代表取締役社長とかっすよね?」

「そうですね、僕も院長という肩書きだったり」

「それなら俺も陸上部のトレーナーってのがありますよ」

「そうですよね。それも一つの肩書きです。前の裏技でも出てきた、『印象をよくすること』に含まれるかもしれませんが、やはり人間は肩書きで接し方が変わったりしますから」

「確かに……院長が俺をトレーナーとして陸上部に斡旋してくれたから、なくとも何にも無いよりは言うことを聞いてくれた気がする」

「てっとりばやく信頼を得る方法ですからね。まぁ、何度も言いますが信頼を軽く得た後は、ちゃんと誠実に付き合っていかなければいけませんが」

「そうですよね……」

「ではまた今までのコネクションを使いながら、なにか肩書きを得られたら報告お願いしますね」

的にどうするかとかは教えてくれないんすか……」

しいしいと思ってたら、きっと向こうからやってきますよ――」

なんて院長は言うけれども。

肩書きか。

どうすればいいだろう。

また明日エリカにでも相談してみるか。

そんなことを考えながらバイトを終え、帰宅する。

「にぃ、おかえり」

「ああ、ただいま」

商店街を抜けた先の住宅街、その一角に建つ小さな我が家。

玄関を開けると、パジャマ姿の妹、百瀬りぃが俺に抱きついてきた。

よしよしと頭をでてやる。

えへへ、と俺のに顔をり付ける妹をおしく思うが、家族だ。

完全なる縁なので、妹ルートは無い。

「ごはんにするの? お風呂にするの?」

「ああ、先に風呂――」

ピンポーン。

靴をいでブレザーを妹に渡したところで、玄関のチャイムが鳴った。

「なんだよ、こんな時間に。――母さんは?」

「まだ帰ってきてないの」

「そうか、俺が出るから、お前は奧へ行ってろ」

はあいと言いながら、たったったとリビングへ向かうりぃ。

それを見屆けたあと、玄関のドアをがちゃりと開ける。

その瞬間、った夏の夜風と共に、どきつい香水の匂いが家に流れ込んできた。

――ガシッ。

黒い爪《ネイル》をした白い手が、我が家のドアを無理やりこじ開けてくる。

「夜分遅くすまん! 私だ! ナオミだ!」

「きゃあっ」

太くドスのきいた聲でズカズカと玄関へってくる

って、俺のほうがみたいな聲出しちまったじゃねーか。

「りぃはいるか!?」

「な、なんすか……」

その迫力のある聲がリビングまで聞こえたのか、部屋からチラっと顔を覘かせるりぃ。

「あんたはりぃの兄貴くんだったっけか」

「そうっすけど……」

「では頼む! 百瀬りぃを――」

「りぃを?」

「百瀬りぃを、私にくれ! 必ず幸せにするから!」

「……………………は?」

突然、魔界の使者が家にやってきて、そんなことを言い出した、とある夏休みのお話――

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