《高校ラブコメから始める社長育計畫。》13.第三回、百瀬ゆうまを社長にしようの會
「やあ諸君。君たちは選ばれし者だ!  俺の手となり足となり、その命盡きるまで、ともに戦おうではないか!」
「……で、今回は何?」
「おい! 玉ドンしてくれねーのかよ!」
「は……? キモいんですけど」
「ゆーま……」
「にぃ、玉ドンってなに?」
「お前は知らなくてよろし」
今日は日曜日――
悪友である箕面の家で企畫會議。
「それでは改めまして、第三回、百瀬ゆうまを社長にしようの會、企畫會議をはじめます」
「いえーい」
「ぱちぱちーなの」
箕面がノリノリで拍手をし、りぃもそれに合わせる。
「りぃ、お前の兄貴はあれか? 変態さんか?」
「否定はできないの……」
「おいそこ!!」
ナオミはりぃをぬいぐるみのように抱き寄せながら眉間《みけん》にしわを寄せている。
そしてエリカは呆れた顔で、やれやれといったポーズをとっていた。
「りぃ……こないだはすまんかったな。これからも私と音楽、やってくれるか?」
「もちろんなの!」
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ナオミ姐さんの謝罪に迷うことなく返事する天使。
その微笑みは氷河をも溶かす。
まさに天使……まさに聖……
「で、今回は何なのって聞いてるんだけど……!」
りぃに見とれて魂が北極ぐらいまで行ってた俺をエリカが引き戻す。
「オホン。エリカさんや。ここにおわすお方こそ、ナオミ様にあらせられるぞ!  頭が高い、控えおろう!」
「知ってるわよ。こないだライブでご挨拶したじゃない」
「ああ。會うのは二度目だな。キミは確か兄貴くんの好――もごもご!!」
ナオミ姐さんの口を両手で塞ぐ俺。
確かにこんなくだり、あったような気がする。
つか俺がエリカを好きなこと、どっかられてんだよ。
まあそれは今置いといて。
「今回はこのナオミ姐さんのお悩み解決コーナーだ!」
「あら、それならぜひあたしも協力させて頂くわ」
「ははっ、ゆーまを社長にどうとかいう名目、関係なくなってる気が――もごもご!!」
箕面の口を両手で塞ぐ俺。
ったく、こいつら余計なことしか発言できんのかい。
手が何本あっても足りないな。
「すまんな、私のせいで大事になっちまって」
「そうっす。姐さんが全部悪いんです」
「ぐっ……否定できんが」
「あんたねー、私の恩人を悪く言わないでくれる? 殺すわよ。てか死ね」
「噓デス。姐サンハ悪クナイデス!」
そして俺はエリカたちにり行きを説明する。
予選會場のトイレでグラサンにけなされたこと。
それでヒロさんがナオミ姐さんのことを思ってを引いたこと。
姐さんはヒロさんのいないスタジオ練習が寂しくて寂しくて泣いてたこと。
「泣いてねーよ!!」
「いいえ、心の中では泣いてましたよね。ふっ、この俺にはわかるんです」
「あんたキモいからちょっと黙ってて。でもそれってヒロさんが一方的すぎたせいじゃないんですか? ナオミさんの気持ちを勝手に決めつけて」
エリカがナオミ姐さんを擁護する。
つか今キモいって言われたの、ちょっと傷ついてんですけど。
姐さんは味方がいてくれた嬉しさで顔をぱあっと明るくしている。
「だろ!? そうなんだよ! 全部ヒロが悪いんだよ!」
「その後ヒロさんの心をズタボロに切り裂いた人は誰でしたっけ。二度と顔見せんじゃねーと言い放ったのは」
「……はい、私がやりました……」
正座をして片手を挙げる姐さん。
ちょっとかわいい。
「まあでも俺、正直ヒロさんの気持ちわかるんだよな。俺だってりぃが褒められて嬉しそうにしてるの見たら、やっぱりもっと有名になってみんなに見てもらいたいって思うもん。それでもし俺が邪魔になると分かったら――」
「分かったら?」
「りぃの前から消えるよ……」
そう言った瞬間、俺の首には妹が巻き付いていた。
「そんなのだめっ!」
「おお……妹よ! ……好きだ!!」
「りぃもだいすきなの!」
「なにこの寸劇……」
「ははっ、いつものことだよ!」
呆れるエリカを見て箕面が笑っている。
そこへナオミ姐さんが呟く。
「私もこれぐらい素直に言えたらいいんだが……」
「ですよねー、ゆーまたちが羨ましいよー。言葉にするのって恥ずかしいー」
「じゃあ歌にすればいいんじゃないかしら? アーティストなんだし」
エリカのその発言に一同の視線が集まる。
「え、ちょっと……あたし変なこと言った……?」
「それだ!」
「いいねー!」
「すてき、なの!」
なるほど、面と向かって仲良くできないヒロさんとナオミ姐さん。
特にナオミ姐さんは年のような人だから一生かかってもヒロさんに好きだとは言えなさそう。
そんな二人のために歌があるじゃないか。
ヒロさんが言ってた。
ナオミ姐さんはラブソングを歌わないと。
じゃあ今こそ、それを歌うときではないか。
絶対に効力ありそう。
「ちょちょちょ、ちょっと待てよ! それじゃあなんか私がヒロのことを好きみたいじゃないか!!」
「え?」
「違うの?」
「姐さん……気づいてないんすか? 自分の気持ち」
「はっ!? 私がヒロを!? そ、そうなのか!? いや、それは無いだろ! ヒロのことは馴染としか! なんて私にはわからんぞ!」
傍から見れば二人は両想いなんだけどな。
ヒロさんがいなくなってあれだけ乙のような顔をする姐さんを初めて見たし。
もしかしたら啄木たちも、分かっててけしかけたのかもしれない。
だってナオミ姐さんの歌うラブソング、聴いてみたいって思うから。
この聲で、こので、どんなラブソングを歌うのだろう。
そう考えると待ちきれなくなる。
楽しみで仕方ない。
素人の俺がそう思うってことは、お客さんも絶対思うことだろうから。
「いいんじゃないですか。そのよくわからない気持ちを書けば。甘くなくていいじゃないですか。ポジティブな詩じゃなくでもいいじゃないですか。ありのままが聴きたいです」
「ナオたんの歌、りぃも聴きたいの」
「あたしも」
「ボクもー!」
「ありがとう……ちょっと考えさせてくれ」
ナオミ姐さんはそう言った。
あれだけラブソングを否定してた姐さん。
しでも気持ちがいたのなら、それだけでも集まってよかったのかな。
決勝までにうまくいけばいいなと思うが。
こればっかりは難しい案件だ。
ベビーシッタープロデューサーも頭を抱えるよ、とほほ。
「しかし、兄貴くんは良い友達を持ってるな! 信頼も熱いようだし!」
「そうなんです。我が社の優秀な部下たちです。いずれは世界中の人間が俺にひれ伏すでしょう」
「誰が部下よ!」
「ボクはそれでいいよー!」
「はは! じゃあまずは學校の支配からだな! 番長にでもなればどうだ?」
「……ん?」
今なんつった?
學校の支配?
「それだ!!」
いいこと閃いた!
院長から出されている宿題。
肩書きを得ろってやつ。
それがあったじゃないか!
「あんた、番長とか止めてよね……」
「ちゃうちゃう!」
高校で最大の肩書き。
そう――
「生徒會長があった!!」
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