《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》47話「オークの群れ並びにオークジェネラル存在証明調査」

「「「「「……」」」」」

俺の推察を聞いた瞬間、再びその場に沈黙が訪れる。オークキングがいるなどといういきなり突拍子もないことを口走ったのだから、そういうことになるのは仕方がないにしても、なにかリアクションの一つもしいところだ。

「そ、そんな馬鹿な話があるか!」

「信じられないのも無理はない。現狀俺も確信があるわけじゃないからな……。そんなことは置いておいてだ」

「「「「「置いておくな!!」」」」」

“ここにいる連中は劇団か何かをやっているのか?”という疑問が浮かぶほど息がぴったりであった。

とにかく、オークキングの一件が噓か真実かはこれから調べていけばいい話なのでこれくらいにして、當面の話をするためギルドマスターにある頼みごとをすることにした。

「ギルドマスター、頼みがあるんだが」

「なんだ?」

「とりあえず、三十匹のオークの群れとオークジェネラルを置いてきたままになっているから、明日にでも取りに行きたい。だが、俺の持っている魔法鞄では一度で持ち帰ることができない。そこで容量のデカい魔法鞄があれば貸してほしいんだが」

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「わかった、手配しておこう。それと坊主、確認のために何人か冒険者を同行させたいんだが構わないか?」

「オークキングのことか?」

「違う! 坊主が本當にオークジェネラルを含めたオークの群れを倒したかの確認だ!」

「なんだ、信じてなかったのか?」

まあ、Dランクになったばかりとはいえ、人すらしていない子供の俺がそんなことを言ったところで信じる方がどうかしているか?

とりあえず、冒険者が同行することについては問題ないが、妙な奴を付けられては堪ったものではないので、そのことを伝えようとすると意外な人が名乗りを上げた。

「なら、俺んとこのパーティーが同行してやるよ」

「そうか、Aランクのギルムザックが同行してくれれば心強い。頼んだぞ」

「ワイルド狩りの坊主もそれでいいか?」

「問題ないが……付いてこられなかったら置いていくが、それでも構わないか?」

「おやおや、俺たちも舐められたもんだな。まあ、それでいいぜ」

といった合に話が纏まり、その日はそれでお開きとなった。ちなみに実験に使ったオークさんは、本人たっての希でボールドに任せることにした。

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翌日の早朝、冒険者ギルドに向かうとギルムザックとその仲間たちが先に待っていた。

彼と初めての挨拶をわした折、遠巻きにその姿を見たのだが実際口を利くのは今日が初となる。

メンバーは男一人の二人で、三人ともである。

男は、茶の髪に緑の瞳をした優男でいかにもモテそうな雰囲気を持っている。筋の付き合も、マッチョ過ぎす細すぎずといったところで斥候向きのスタイルだということが窺える。

の方はいかにも魔法使いですといったローブをに纏っていて、後衛だというのがすぐにわかる。薄紫の髪に黃い瞳をした妙齢ので、ローブの上からでもわかるほどにが大きい。

最後の一人のは、十代後半くらいの年齢で桃の髪に淡い緑の瞳をしており、ビキニアーマーを裝備していることから前衛の戦士らしい。

「すまない、待たせてしまったようだ」

「問題ない。それより紹介しよう。こいつらが俺のパーティーメンバーで男の方がアズール。の方が、魔法使いがメイリーン。ビキニアーマーを著けた方がアキーニだ」

すぐにギルムザックの口から彼のパーティーメンバーの紹介をされたので、こちらも簡単な自己紹介をすることにする。

「初めまして、Dランク冒険者のローランドだ。よろしく頼――」

「坊やが、最近有名になったあの【ワイルド狩り】? 隨分と子供っぽいのね」

「アキーニ、失禮だぞ?」

「ふん、失禮はどっちかしら? この坊やはギルムザック、あんたに言ったのよね? “付いてこられなかったら置いていく”って。アタイたちも舐められたもんだね」

なるほど、昨日俺が言ったことをギルムザックが仲間に伝えたみたいで、それに怒ったアキーニが俺に突っかかってきているというわけか。

俺としては、別にギルムザックたちの実力がないと言っているわけではなく、事実として俺に付いてこられないなら置いていくという意味だったのだがな。

「別にあんたらを舐めてるわけじゃない。ただ言葉の通り、俺に付いてこられないなら置いていくと言ったまでだ」

「それを舐めてるって言うんだよっ!!」

「まあまあ、アキーニもローランド君もそれくらいにしたらどうだ」

「……そうよ。全員揃ったことだし、ギルドマスターから魔法鞄をけ取って早く出発しましょ」

「そうだな。そうしよう」

優男のアズールとおっぱい魔法使いのメイリーンの言葉でアキーニと俺を宥めすかし、ギルドマスターから魔法鞄をけ取るため、一度執務室へと立ち寄る。

「これがギルドが所有している魔法鞄だ。時空屬が完璧に付與されてるかられたものが劣化することはない。ちなみに容量は十トンまで収納可能だ」

ギルドマスターが用意してくれた魔法鞄は、聞くところによるとレンダークの冒険者ギルドが保有する魔法鞄の中で最高のものらしく、そのお値段なんとびっくり大金貨五枚らしい。日本円で五億円也。

「こんな高価なを貸してもらっていいのか? 盜るぞ?」

「問題ない。というか、盜るな。ちゃんと返せ」

「ちなみに、このレベルの魔法鞄を作れるやつはいるのか?」

「ああいるぞ。ただし、依頼するには王都に行かなきゃならんがな」

それから、ちょっとした確認事項をしてギルドマスターと別れた。ギルドマスターとの面會中、ギルムザックの仲間たちはあまり口を開かず、リーダーのギルムザックとだけ會話していた。

どうやらあまりギルドマスターとは仲が良くないようだ。否、仲が良くないというよりもあまり仲良くする必要がないというのが正確なところだろう。

冒険者ギルドを出て、レンダークの街の門兵にギルドカードを提示し目的地に向け出発する。

街を出てすぐにギルムザックたちに聲を掛け、し急ぐ旨を伝えるとギルムザックがにやりと口の端を吊り上げながらこう返してきた。

「付いてこられなかったら置いてくんだよな」

「ああ、だからちゃんとついて――」

俺がギルムザックに返答しようとした次の瞬間、ギルムザックと他の三人の仲間の姿が消えた。

消えたというのはあくまでも比喩表現であり、正しくは走り去ったというべきだ。

俺の上からの態度が気にらなかったのだろう、ここで一度Aランク冒険者としての格の違いを見せつけようという腹積もりでこのような行に出たのだと結論付ける。

「やれやれ、俺しかオークの群れを倒した場所を知らないのに、俺を置いて行ってどうするよ……」

焚きつけた俺にも非がなかったわけではないので、自業自得といえばそうなのだが……この俺も見くびられたものだ。

「いいだろう、々子供染みてはいるが、お前らのお遊びに付き合ってやる」

その場にいないはずの四人に向かってそう宣言すると、強化を発させる。

他の四人も強化によって疾走しているはずなので、ひとまず彼らを追いかけるように地面を蹴って駆け出した。

さらに向上した強化により、もはや常人では到底不可能な速度で四人を追いかける。

大自然かな風景を置き去りにし、そのまま進んでいくと前方にかなりの速さで走行する四人を発見した。

さらに強化のギアを上げ彼らに追いつき、抜き様に一言だけ言い放つ。

「こっちだ。ちゃんとついてこいよ」

「なっ」

「えっ、うそ!?」

「追いついてきやがった」

「……というより、私たちよりも早いなんて」

すれ違った際に、ギルムザックたちが何か言っていたが、かなりのスピードで移しているためほとんど何を言っているのか聞こえなかった。

それから、俺がオークの群れを全滅させた現場まで二十分と掛からずに到著した。ギルムザックたちが到著したのは、俺が現場に到著してからさらに十分後のことであった。

「はあ、はあ、はあ、はあ」

「ん、遅かったな。じゃあ確認してくれ」

「ちょ、ちょっと、待って、くれ。し、休ませて、くれ」

どうやらかなり無理をしたようで、全員到著するなりその場にへたり込んでしまった。

それから彼らがまともにけるようになるまで三十分を要し、ようやく息が整ったようでギルムザックが聲を掛けてきたのだが……。

「坊主、お前さん一何者だ」

「ただのDランクの冒険者だ」

「それは絶対にない! まあ、言いたくねぇならそれでも構わねぇけどよ。よか――」

「先に言っておくがパーティーの勧ならお斷りだぞ。散々他の連中からの勧を斷ったからな。それよりも、オークジェネラルとオークの確認をしてくれ」

「……わかった。だが、これだけは言っておくぞローランドの坊主。俺は諦めないからな」

ギルムザックの一言に肩を竦めると、俺は土魔法で隠していたオークの群れの元へ歩み寄る。

俺が土魔法を解除しようとすると、メイリーンがこちらに詰め寄ってくるのが見えた。

「ちょ、ちょっと! この魔法は一なんなの!?」

「……土魔法で作ったドームだが?」

「こ、こんな緻な魔法をあなたみたいな子供ができるわけないわ!」

「信じたくないならそれでいいが、とにかく確認するから土魔法を解除するぞ」

魔法の知識の一つとして、他人の行使した魔法を解除するにはかなりの技が必要となる。魔力の質が異なるため、解除するのに手間が掛かるためだ。

わかりやすく例えるなら、マンションの部屋の鍵を持っている住人と鍵を持っていない人間を比較すると、住人は鍵を持っているので簡単にドアを開けることできるが、鍵を持たない人間はピッキングなどの不確かなものでしかドアを開けることがきないため、部屋の主である住人よりも扉を開ける難易度が高い。それと同じことである。

つまり何が言いたいのかといえば、今目の前の土魔法を解除できるということは、それだけの技を持ったレベルの高い魔法使いか、土魔法を使ったのが俺本人かのどちらかにしか當てはまらないということだ。

土のドームが音を立てて崩れていくと、中から現れたのは言わぬ氷の彫刻だ。

そのすべてがオークであり、どのオークも恐怖で顔が歪んでしまっているのが見て取れる。

「ば、馬鹿な。氷魔法だなんて!」

「ローランドの坊主、お前さん氷魔法を使えるのか?」

「そんなことより、確認してくれないか?」

ギルムザックの問い掛けをはぐらかす様に促すと、渋々といったじで確認し始めた。

俺の報を聞き出したいのを我慢し、確認しようとするギルムザックたちだったが、すぐに目の前の景に唖然とする。

三十というオークの群れが盡く氷漬けにされ、抵抗らしい抵抗の形跡がなかった。

彼らはAランクの冒険者パーティーで、この程度のオークの群れであれば問題なく対処できる。しかし、これほど圧倒的なまでにオークの群れを殲滅するというのは、彼らの目から見ても異常と映っているらしい。

増してや、そこにオークジェネラルという存在も加わったら、いくらAランクとはいえ苦戦は必至である。

だが、オークジェネラルがいたにもかかわらずこの慘狀ということは、俺がそれだけの実力を持っているということの証明でもあった。

「ギルムザック、これは……」

「ああ、圧倒的だ」

「まさかあんな子供が本當にこれをやったのか?」

「……」

目の前の景に今まで黙っていたアキーニが口火を切り、順にギルムザック・アズール・メイリーンと続いた。

尤も、メイリーンに関しては何も口にすることはなく、ただ嘆のため息を吐きながら恍惚の表を浮かべるだけであったが……。

「確認できたか? できたのならオークたちを魔法鞄に収納したいんだが」

「あ、ああ、もう確認は済んだ収納してもらっても構わな――」

「ローランド君! いえ、ローランド先生! 私を弟子にしてください!!」

「はあ?」

どうやら、また面倒なことになってきたようだ。

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