《ビンボー領地を継ぎたくないので、全て弟に丸投げして好き勝手に生きていく》57話「修行再開とオークとの戦闘法について」

「うーん、今取れる選択肢は一個しかないんだよなー」

ルベルト子爵の屋敷から宿へと戻ってきた俺は、ベッドに腰を下ろして今後のことについて考えていた。

ギルドマスターのもたらした報によって、オークキングとその配下である五千のオークの軍勢の存在が明るみになってしまった今奴らを迎え撃つというのは決定事項なのだが……。

「オークとオークジェネラルはなんとかできても、さすがにキングは勝てないだろうなー」

足をぷらぷらとさせながら、オークキングの対処法についていろいろと思考を巡らす。ここまで俺が悩んでいるのは、オークキングというたった一匹のオークについてだ。

改めて今の俺のステータスを確認すると以下のようになる。

【名前】:ロラン

【年齢】:十二歳

別】:男

【種族】:人間

【職業】:元領主の息子・冒険者(Cランク)

力:3500

魔力:3600

筋力:A

耐久力:A-

素早さ:A

用さ:A

神力:A

抵抗力:A

幸運:A

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【スキル】

鑑定Lv8、強化Lv7、気配察知Lv7、気配遮斷Lv6、魔力制Lv8、魔力作Lv8、

火魔法Lv6、水魔法Lv7、風魔法Lv6、土魔法Lv6、炎魔法Lv1(NEW)、氷魔法Lv2、

雷魔法Lv1(NEW)、大地魔法Lv1(NEW)、剣Lv6、格闘Lv6

この二日間で集中的に鍛錬を行った結果、各パラメータがすべてAクラスにった。その他にも各スキルのレベルも上昇し、基本魔法がレベル6になったことで水魔法以外の上位魔法も習得している。

しかしながら、これでもまだオークキングと対等に渡り合うには心許ないと俺の勘がそう言っている。だが、このままオークどもがやってくる數日の間に、オークキングを圧倒できるほどの力を手にれることは不可能だ。

仮にオークが襲來するまでの時間があと二か月あれば、真正面から戦っても負けないほどの力を手にれられるかもしれないが、現実問題それほど時間に余裕はない。

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「なら、今の俺ができるのはやっぱ搦め手を使うしかないな」

今の俺がオークキングと渡り合うためには、以前オークジェネラルを仕留めた罠に掛けてきが取れないところを一気に倒すという方法しかない。

しかし、今回はオークキングの他にも取り巻きのオークジェネラルに加えて、五千のオークの軍勢が控えている。さすがにそれらすべてを一度に拘束できるだけの方法は思いつかない。

時空屬の魔法があれば時間を止めることができるが、それでもかなりの魔力を消費してしまうだろうし、きを止めるだけで一杯だろう。

となってくれば、一度にきを止める數を減らしつつ尚且つ相手がこちらの奇襲に対応できない方法を模索しなければならない。……そんな方法あるのか?

「……待てよ? あれとあれをあれすれば、なんとかなるかもしれん」

何かいい方法はないかと考えていると、あることを思いついた。とりあえず、今はやれることはすべてやっておくべきだと考え、思いついた容を試すことにした。

~~~~~~~~~~

ルベルト子爵の屋敷を訪ねてからさらに三日が経過する。その間にギルムザックが訪ねてきたので、次の訓練メニューを指示しておいた。

あれからいろいろと試行錯誤した末、新しく魔法を習得した。その魔法とは【霧魔法】である。

改めておさらいだが、この世界には複數の屬魔法が存在しその基本となるのが火・水・風・土である。そして、その上位となるのが、炎・氷・雷・大地だ。ここまでは以前話した通りだ。

そして、上位の屬にはと闇があるのだが、これはまだ習得には至っていない。では、今回習得した魔法はなにかというと、複合魔法である。

複合魔法とは、その名の通り複數の屬を極めることで習得が可能とされる魔法であり、今回の霧魔法もこれに該當する。

的には、この三日で基本の四元素とされる魔法すべてをレベル8にまで引き上げることに功した結果、新しく習得することができたのである。

霧魔法は名前通り霧を主にしている魔法で、主に相手の行の妨害やサポート系に屬する魔法だ。今回はオークたちの視界を奪う目的で使用するつもりだ。

そして、霧魔法の他にも【嵐魔法】・【木魔法】・【砂魔法】を新しく習得し、魔法のバリエーションが一気に増えた。

しかしながら、未だに習得していないと闇も加え、完全に魔法を覚えたわけではないので、ひとまず魔法習得に関してはこれで一區切り付けた。

「さて、これで必要な能力は手にったから次は的な対処法について策を練るか」

複合魔法によってオークの群れをどうにかする方法は手にったが、細かい作戦は思いついていない。そこでしばかり考えてみた。

現狀オークキングたちは、レンダークの街からあと二、三日といったところまで迫っているとの報告が上がってきている。時間的に避難するなら今が時間的リミットだろう。

実際戦うを持たない子供、年老いた老人などはすでに二日前から避難を開始しており、殘っているのは戦う力を持つ街の兵士と冒険者が主といったところだ。

オークどもを相手取る手段を得たところで、訓練中ずっと考えていたことを実行するべく、俺は人知れず宿を出た。

「やっぱ、こういったモンスターを相手にする時は、討伐じゃなくて駆除というのが正しい表現だな」

今回のオークの襲來に関しても真っ向から戦うという選択肢は取らない。否、寧ろ取れないと言った方が正しい表現だ。真正面からぶつかってもその力に押しつぶされ躙される未來が待っているだけなのだ。

では、どうするのかといえば、答えは単純明快。罠に嵌めて間接的に倒してしまえばいい。これに盡きる。

前回オークジェネラルを倒した時は、水魔法と土魔法を使って地面をなんちゃって底なし泥沼に変え、きが取れなくなったところを氷魔法で凍死されるといった作戦だった。今回はまた別の手段を使って駆除していく。

「まあ、このまま街を見捨てて逃げるって手もあるけど。ここで逃げたらなんか俺が殺したみたいだしなー」

そう、今の俺にはここで逃げてしまうという選択肢が與えられている。前回オークジェネラルを倒したことでオークキングがく結果となってしまったが、遅かれ早かれオークキングたちが街を襲うことに変わりはなかっただろう。

しかし、事はどうであれ、結果として俺がオークキングをけしかけることになってしまったことには変わりないし、奴らが街を襲う數か月の間に隣領や國に援軍を頼むこともできたはずだ。

前世の記憶の中に通事故を起こして、人を殺めてしまった上級な國民と言われている人が裁判にかれられ、その人は無罪を主張した。

だが、例え本人に殺意はなかったとしても、事故を起こして人が死んだという事実は変わらない。それ故に件の人が起こした事故が、すべて帳消しになることなどあり得ないのだ。

今回の場合もそれと同じで、例えオークキングが襲ってくることが遠い未來に確定的な事実であったとしても、それを早める原因を作ったのは俺だし、他の人間が「お前の責任じゃない」と言ったところで「はいそうですか」と開き直るほど俺は薄な人間ではないのだ。

――そうだ、そうだ。こいつをあの上級な國民と一緒にすんな!!――

「んっ!? んんっ!?」

オークキングが進軍中の現場に向かっている途中、そんな言葉が聞こえたような気がした。

きょろきょろと周囲を見渡してみても誰もいなかったため、俺はただの空耳だと結論付けた。

しばらく疾走すると、気配察知に反応があった。オークの群れだ。

どうやら目的地に到著したようなので、さっそく隠作戦を実行する。言い方はあれだが、単純な話見つからないようにただ様子を窺うだけである。

見たところオークの群れの先頭集団は隊列を組みつつ、ゆっくりと街に進行しているようだ。五千という數のオークが一同にくため、その進行速度はかなり遅い。

十數程度であれば問題ないのだろうが、これほどの數のオークが進行するにはいろいろと時間が掛かってしまう。

(よし、森にるな。ならば、ここでちょっと仕掛けてみるか)

様子を窺っていると、先頭集団のオークが森にるのを目にする。今回俺が思いついた作戦を実行するにはちょうどいい場所だと判斷したので、さっそく行を開始することにした。

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